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北の伏魔殿 ケースII-番外編③

○部下職員のスケジュール管理は係長の役目~飯田市の事例から


 新型コロナ支援金で不適切事務をしたとして、飯田市が担当職員を懲戒処分したことがSNSで主に担当者側から批判の声が上がっている。部下職員のスケジュール管理は、上司が行うべきで、要求していた臨時職員がつかなかったことや管理職が「担当者がSOSを、なぜ言ってもらえなかったのか」といった発言に批判が集まり、上司も懲戒処分を受けるべきとの論調が多い。私も、業務が間に合うかどうかの進捗状況は、上司が確認すべき事だと思うので、その点では担当者側の主張を支持する。

 しかし、一方、職員が担当した支援金業務は、相談対応、申請書の受理、審査決定、会計処理で、対象件数は30件程度だったとのことだった。新型コロナ支援金業務は新規、突発的なので、通常の業務量がどのくらいだったのかが不明なので、一概には言えないかもしれないが、一般的に業務の流れとして相談対応、申請書の受理、審査決定、会計処理などは1人で処理するものだろう。そして処理件数の30件というのも特段処理できないというほど大量とも思わない。

○私が経験した業務の実態は


 私の課の通常業務である補助金の支給申請の流れもほぼ同じで、私の部下の女性は半期ごとの申請件数100件を1人で処理しており、期間内に集中するので、大変ではあったが、さほど残業しなくとも期限には間に合っていた。
 私が担当者時代、選挙の不在者投票事務を任されたことがある。もちろん臨時的業務であり、通常時でも残業の多い部署であったが、その事務処理件数は入院患者のうち、申請が400人を超えていて、衆参同時選挙で裁判官国民審査もあり相当輻輳したが、ちろん投票時には適正に処理はできている。

○係長職にとって部下のスケジュール管理は重要~問題行動のある職員の場合 


スケジュール管理については、担当者時代には自分で年間スケジュールを作成して係長に提出していたし、自分が部下を持ってからは、部下から提出させて四半期ごとにチェックしている。
 2ケ所目の出先機関の男性部下は、人事異動で総務課から来ており、本庁からの提出書類の決裁が異常に遅かった。最初は、慣れない仕事で遅いのかなと思っていたが、パソコンを打っているスピードは、職員の中ではピカイチでそこまで早く打てるほど、仕事を理解しているのであれば、書類作成も早くできるはずだと少し不審に思っていた。

 私は、彼のスケジュール管理をしており、本庁からの照会文書への回答期限に間に合いそうにないことが続いたので、個室に呼んで問いただしたところ、勤務時間中に仕事もせずに同人誌への小説執筆をしていたため、期限に間に合わなかったことが判明した。

 このため、本人には、顛末書の提出を命じ、勤務時間内に仕事以外の私用はしないことを誓わせた。するとその数ヶ月後、彼は私を個室に呼び出し「係長が小説を書くなと言ったので、同人誌からクビになった、係長のせいだ」と言う。私は「それなら勤務時間中に小説を執筆していたことを認めるんだな」と言うと「いや、していない」と返答する。すでに執筆を認めた顛末書の提出はうけており、否定してもなんら意味はないのだが、「私のせいだというなら、勤務時間中に執筆していたことを認めならなきゃならないし、やっていないと言うなら私のせいじゃないだろ」と言うとなんとも答えられない。彼も学閥の地元私大出身者であるが、この程度の論理的思考能力もない職員がどうして採用試験を通ったのか不思議であった。
 しかし、各地の自治体で不正や不適正事務が起こる原因のひとつは問題を起こす職員自身とそれを管理しきれない上司の両方に責任があると思う。

追記1
 私が異動することになり、後任の係長あての引継書には、当該職員のこれまでの経緯とスケジュール管理が必要なことを記載した。
 異動後、出張で課を訪問し、後任の係長と話している最中、当該職員は不在で、本庁から当該職員の提出書類が期限内に行われていないという苦情が係長に入っていた。どうやら、後任の係長は、スケジュール管理を行っていなかったようだ。私は、そうなる前に事前に当該職員を指導していたので、本庁からそういう指摘を受けたことはない。当該職員自身の評価はもちろん、上司である私、管理職の責任になるからだ。

追記2
 私の県の他の部署でも、若い職員が補助金業務について交付申請手続きが間に合わず、決裁をとらずに支出していた事例が発覚した。しかし、これなどもスケジュール管理していれば、係長は、例年申請のある補助金が処理されていないことに気づくはずである。もちろん、問題の無い職員のほうが多いので、スケジュール管理もその職員ごとにやるべき内容のプロセスが違う。だから常々、部下の動向をみながら、能力、性格にあわせた対応が必要なのである。

画像:株式会社東洋電制製作所

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