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北の伏魔殿 ケースII-番外編④

○研修のススメ

 私は、新たな業務や行政経験をしたかったということを書いたが、結局それは、好奇心である。だから、新たな知見を得ることができる研修は大好きで、2~3年に1回は、県の研修に行っており、部下にも国の専門研修や県の研修を受講するように勧めていた。実際、国の専門研修に行った職員は、国の担当官と知己になり、情報をもらったり、相談もできてその後の業務に役だったと言っていた。

○国の研修受講を妨害する人事係長~それじゃ人材育成は無理だと思うよ


 そんな中、国の半年ほどにわたる自治体職員の幹部職員養成の研修受講の募集があった。
 私は、これまで法令等は独学で学んできたが、体系的に学んだことがなかったことや行政職員として折り返しの年齢に達し、がむしゃらに仕事をするだけでは、通用しない時代となってきていることを痛感していた。
 このため、この研修に応募し、合格した。
 半年ほどの研修で長期間不在になるため、これまでこの研修制度では、後任者が発令されていたが、本庁のN人事係長から、「後任者は発令できない、来年の受講ならいい」と課長あてに連絡があった。結局「異動は、次から3年だ」ということを人事課の意向やこれまでのルールを無視してでもどうしても実践したかったらしい。
 職場に迷惑はかけられないので、断ろうとすると人事課から「断るな」と連絡が来たので、結局、受講した。研修自体はおもしろく、全国各地の自治体職員とも交流でき、勉学はちろん休日には遊びにと県外にでたことのない私にとっては、首都圏で過ごした半年は、充実したものになった。

○自分の人事異動を報復のために利用する職員

 翌年、本庁のN人事係長が昇格して出先機関の総務課長として異動してきた。その前年、私の課には、N係長の部下だったM氏が同僚の係長としてやってきていた。M氏は、人当たりもよく、父が県の幹部職員で2世であったこともあり、おそらく将来の出世を見越して人事係に配置されていたのだろう。
 N係長改めN課長のポジションは、普通、ウチの部のポストではないが、人事係長として、人事課ともつながりのある彼は、事業系である部では主に庶務系統を歩いており、事業が苦手だったことと私への人事報復のためにそのポストを希望したらしい。それは、その後の私の人事に影響を与えるポストにばかりついていることで充分想像はできた。

○人事工作が裏目に~キャリアップに役立たない人事配置をしようとする人事経験者

 3年を経過し、管理職から人事異動の希望を聞かれたが、この頃、体調不良で本庁での激務はこなすことができないとの思いから、本庁は希望しない旨、伝えた。しかし、管理職からは、希望しないと出先機関ばかり回されることになると説得され、長時間の通勤が苦痛なほどの体調不良だったので、管理職の言うとおりにした。

 しかし、N総務課長は、私の異動に関し、過去に私が1年だけ在籍したことのある県庁所在機関の係長にしようと目論んでいた。その係の係長は、いわゆる定年前のあがりの年齢の職員がつく係であり、現在の部の職務ともなんら関係がなく、従って、キャリアアップにつながるものでも全くない
 まして、幹部職員養成のための国の研修を受講した職員が行くところでも決してないポストであった。
 
 当時、部の人事担当課長補佐は、私が担当者時代同じ課に在籍しており、私のことをよく知っている人だったので、N総務課長が画策したポストではない、本庁に在籍し、団体出向となる人事異動を行ってくれ、直接、内示の電話を入れてくれた。その事実を知ったN総務課長は、その直後、慌てて、私に内示の電話をしたが、彼のやろうとしていたことは見抜いていたので、なんら感慨もなかった。
 
 それよりも、可哀想だったのは、M係長である。N総務課長は、私が行く団体に、M係長が行くことで(N総務課長のいうところの3年ではなく、2年で異動対象外のはずであるが)人事課と調整していたのだろう。だから、私を行かせようとしていたポストに部から誰かを行かせざるを得ないので、本来であれば決して人事経験者が行くはずのないポストに子飼いの部下を無理矢理当てはめざるを得なくなってしまった。

 そんな部の人間のキャリアアップにもならない人材配置を単に自分の報復のためにやるような職員を人事に配置している県の人事政策に問題がある。というか、すでに人事課じたい、人事で報復し、隠蔽工作する体質にあり、職員の資質の向上など考えていないことは明らかである。
 なお、N総務課長の工作は、2度目であるが、手口は同じである。
 本来、異動対象者となる年数ではない職員と私を並べて、私よりいいポストにつかせることにより、私がくやしがると思っているらしい。私は、他人が人事でどう昇格しようが、なんとも思っていない。それよりも、面白い仕事がしたいと思っているだけなのが理解できていないというか、人間って自分の価値基準が他人も同様だと思い込むようだ。
 それが、結局、最後まで続くことになる。だから相互理解などできないんだろうな。ロシアのプーチンと同じだね。

画像:株式会社東洋電制製作所

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