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ワールドエンブリオ(著:森山大輔:全13巻完結)【「死にたくなければ読むな。これはもう読書紹介の一部だ!」「まーたはじまった」】

エモい。
若者じゃないけど言わせてくれ。
とにかくエモい。

この先生、読者の感情を誘導するのがとてもお上手。
森山大輔と書いてエモいと読むぐらいです(嘘)

この話、1巻2巻の頃、

3巻から7巻くらいまで、

真実が暴露される8巻、

それ以降、


と少なくとも4段階の物語構成になっています。

各段階では、別のマンガと間違えても仕方ないくらい違う。
これは、話に聞いているだけだと、どういう内容なのかわからないぞ。

まず最初のアイデア。
携帯電話に謎の電話がかかってきて、それに出ると感染。
「棺守」という化け物になってしまうというホラー。



これに義理の姉にしておそらく最愛の人を無くした主人公の少年が、
その死んだはずの姉から連絡が来るという、

もうひとつのアイデアをプラスして。


変な赤ちゃんの能力者に勝手に親代わりにされるという、
子育て物のストーリーを接ぎ木して。



この赤ちゃんが成長するとあの人になるという言葉を信じて、
自分一人で戦おうとして、



幼馴染の兄ちゃんから形見の能力と、
相棒の謎の少女との関係、を受け継ぐというヒーローバトルロマン。



そして少年マンガ王道のバトルマンガ展開。
そして怪物に襲われた人は、みな記憶を失くしていく。
死んだ人のことを誰もが忘れてしまう。どれだけ大切な人でも。



、打算、片思い、知り合いの少女の一方的な退場、トラウマ展開、
一連の事件の黒幕との接触、真相解明への期待感。
失われた記憶の秘密。


間違った選択によるバッドエンドな展開に、

そして事件の真相(過去編)でのなぞ解き。辻褄がピタリ合う思いがけなさ。

そして物語はまだ続く。
やり直し、もういちどやり直すことができるかどうか。

読者の感情をプロレス並みに引きずり回すというエモ展開に感激していました。

そしてラストで、私は、
「自作の小説と真相がマルかぶりじゃなくてよかった・・・・は、何を言ってるんだ俺は!!」
という自己嫌悪に見舞われたのでした。
この先生のアシスタントとかだったら、絶対に自分のアイデアもどさくさに紛れて、接ぎ木したな。
そうすれば完璧だもの。
どうせアイデアなんてアレンジすれば、いくらでもコピペできる。

どんだけアイデアを詰め込んでいるんだろう。
ふつうの作品の15倍くらいのアイデアをつぎ込んでいる。
アイデアで勝負するタイプの先生だ!

ラストちょっと失速したような気がするけど。
やはり自分のアイデアがあれば(くどい)
必要な時に必要な場所にいない才能を持つ私。

今はあんまり自作の作品を描いておらず、
フェイト関連をやっていらっしゃるよう。
それも素晴らしいとは思うけど、少し寂しいような。
そりゃアイデアをあのペースで使ってたら、持ちネタが尽きるのかもしれない。

森山先生の最初の雄飛は「クロノクルセイド」

このアイデアだとシナリオに制限がかかるな、とは思ったけど、物語後半でやはり制約になっていた。
アニメ化が黒歴史だということでも有名らしい。
私は原作の方で読みました。
ラストの切り方がキレイ。当然の結末を読者に見せないやり方。
これはうまいと思いました。


私たちがフィクションを好むのは、
フィクションがフィクションとして完全性を持っているか(ちゃんと筋の通った話であるか)ではなく、
結局は、その中に私たちのリアルよりも、もっとずっとリアルな人生の真実が垣間見えるから。

要するに涙を流したいからフィクションを見るわけです。
私たちは散文的すぎる自分自身の人生では感動することができません。
でも感動がなければ生きている意味がない。
だからフィクションで人生を体験する。

ほとんど最初の作品から、この先生はそのことを理解して使いこなしている。

ストーリーテリングについては本邦屈指の人だけに(断言できる)いまひとつ報われてない気がするマンガ家さんのような気がする。
そんな気がするだけだが、いいじゃん。

追記:あ、あと退場組の皆さんがあとがきで暴れまわっているので、メタ的な意味では悲壮感がない作品ですね。

ネッ!

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