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好みのコーヒー豆を見つけよう! その4

前回までの記事で、コーヒーの3大種(アラビカ・カネフォーラ・リベリカ)と、2大原種(ティピカ・ブルボン)について書いてきました。

まだまだ品種はたくさんあるのですが、入手性や私の好みなどをあわせて、あといくつかおすすめ品種を紹介させていただきます。

今回は、私が大好きな品種、「ゲイシャ」についてご紹介します。
ここ数年、日本でも高級豆として取り上げられることが増え、急速に知名度を上げています。


某大手コーヒーチェーン店や大手コンビニエンスとア、高級コーヒー店の目玉商品として限定販売されたこともありました。
価格は、某コーヒーチェーンで1杯2000円とか…。
おそらく、これでゲイシャ=超高級豆のイメージが定着したのかな?と思っています。

しかし、あれはスペシャリティーコーヒーの中でも更に特別なもので、農園単独でオークションにかけているものです。
(普通は、複数の農園の豆を混ぜて、地域や国の単位でオークションにかける)

例えば「パナマ ラ・エスメラルダ ゲイシャ」であれば、「パナマのラ・エスメラルダ農園で特別栽培されたゲイシャ種」という意味です。
真ん中に何か名前が入っているということは、「農園単独でのオークション=超高級豆」ということになります。

実際には、真ん中に名前がないゲイシャも流通しているので、そちらは比較的お手ごろな価格で楽しむことができます。
(人気が高まり、価格上昇傾向ですが…)


ちなみに、私がゲイシャを推す理由、それは…

・香味の特徴が際立っている
・原種に近い

・ブレイクするまでのストーリー

という点です。

そして、ラ・エスメラルダ ゲイシャの香味はというと、
最初、すっきりしたフルーティーな酸味が口の中に広がり、華やかな花の香りが鼻に抜けます。
次に、優しい甘みが追いかけてきて、ふくよかな花の香りと共にゆっくりと口の中に降りてきます。
最後に、すっきりした甘み・苦みと、落ち着いた花の香りが余韻として残る…
という感じです(長くなりましたね💦力が入ってしまった…)

つまり、この品種の特徴は温度によって変化する「花の香り」です。

もちろん、スペシャリティーではないゲイシャでも、きちんと焙煎とドリップをすれば花の香りを楽しむことができます。

花のような香りを生かすため、浅煎りで提供されることが多いかな?という気がします。
ちなみに極浅煎りは、大丈夫か?というくらい早い段階で焙煎を止める勇気が必要なので、極浅煎りでゲイシャを焙煎できるお店はかなり腕に自信があると見ていいと思います。

さて、前置きが長くなりましたが、ゲイシャとはどんな品種なのかを見ていきたいと思います。


③ゲイシャ種

「ゲイシャ種」が日本で人気になった理由の一つとして、味や香りはもちろん、その名前があると思います。

おそらく、名前を聞いて

こちらを想像した方も多いのではないでしょうか。

あるいは、日本人が品種改良などにたずさわっていて、「日本人=ゲイシャ」というイメージでこの名前がついた…とか、最初に栽培を始めたのが日系人だった…とか。
(実際、ハンバーガーの世界では「サムライバーガー」や「ショーグンバーガー」などがありますし…)

ゲイシャも、名前の文化的な親近感とプレミアム感がうまくかみ合って、日本でもブレイクしたのだろうと思います。

しかし、実は…「日本人や日系人は、栽培史に出てこない」という悲しい事実があります。


このゲイシャ種、元々はエチオピアのゲシャ地域で自生していたアラビカ種の一品種です。
つまり、品種改良ではなく原種で、名前の由来は芸者さんではなく「ゲシャ地域」からきています。
その「発見」は意外に遅く、20世紀に入ってからです。


ゲイシャ種の苦難の道のり

脚光を浴びるまでのゲイシャ種は苦難の道のりを歩みます。

ゲイシャ種は、病虫害や気候の変化に弱いアラビカ種の中でも、ひときわ弱く育てにくい品種です。さらに根が浅いため木が倒れやすく収穫量も少ない…という、栽培品種としてはかなりマイナスの特徴が多いものでした。

独特の香味には定評があったものの、まだ当時はその花のような香味が広く評価される時代ではなかったため、栽培は広がりませんでした。

そのため、当初はゲイシャ種単独ではなく、色々な品種のコーヒーの木の移植に紛れる形で各地に運ばれたのです。

現在のゲイシャ種の主産地は中央アメリカです。
そのきっかけになったのは、1950年代に、中央アメリカ地域のコーヒー産業振興のため、その地域に最適な品種を研究する目的で多くの品種がコスタリカの研究所に持ち込まれたことでした。

1960年代になって、パナマのドンパチ農園が、コスタリカからゲイシャ種をパナマに移植し、さらにパナマ政府が農園に苗木を無料配布したことで栽培が広がりました。

ところが、栽培の難しさや収量の低さから栽培を断念する農園も多く、さらに1970年代~80年代に広がった「さび病」の影響で、ゲイシャ種は忘れ去られてしまいました。


「再発見」と伝説の始まり

1960年代、ある人物がパナマのコーヒー農園を買収しました。
その人物は、Rudolph A. Peterson。Bank of Americaの頭取だった大富豪です。

そして、この農園こそ現在のラ・エスメラルダ農園
ここで、ゲイシャ種は他の品種に紛れて生き延びていました。

21世紀になり、世の中のコーヒーに対する嗜好が徐々に変化していきます。コーヒーの香味に注目した「スペシャリティーコーヒー」に対するニーズが高まり始めたのです。

その頃、パナマコーヒーはある悩みを抱えていました。
パナマコーヒーは欠点も少なく高品質だが香味が面白みに欠ける、と言われていたのです。

そんな時、オークションにどんなコーヒーを出品しようか悩んでいたラ・エスメラルダ農園の農場主は、偶然にも、ある一本の木からとれるコーヒー豆が独特の花のような風味を持つことに気が付きました。

これがゲイシャ種の再発見です。
ラ・エスメラルダ農園では、再発見したゲイシャ種を完全に他の品種として分離し、栽培をスタートしました。

そして2004年、パナマの品評会(best of `Panama)に出品されたエスメラルダ・ゲイシャに衝撃的な審査結果が発表され、それまでありえなかった高値で落札されます。

その後、品評会の優勝を総なめにしたラ・エスメラルダ・ゲイシャは、自らの最高落札価格を更新し続け、2007年には3万円/kgというとてつもない高値をつけました。
あまりにも他の豆と差がついてしまうため、2008年からはラ・エスメラルダ・ゲイシャだけの品評会とオークションが行われています。

スペシャリティーコーヒーブームに乗り、ラ・エスメラルダ・ゲイシャの伝説はまだまだ続いていくのでしょう。


最近では、他の農園でも栽培が再開されましたが、多くの農園ではゲイシャ種の木が絶滅してしまっていたため、まだ出荷量は少なめです。
しかし、ゲイシャ種の需要が高い状態が続けば、栽培が広がり、入手性はさらに良くなっていくと思われます。

ラ・エスメラルダにこだわらなければ、一般的なアラビカ種に比べて少し高いくらいで入手できるものもありますので、ぜひお試しください!
個人的には、酸味と香りを存分に楽しめる浅煎りがおすすめです。


おまけ

ちょっと贅沢ですが、ゲイシャでアイスコーヒーを淹れると、とてもフルーティーですっきり仕上がります。

夏が目の前ですので、近いうちにアイスコーヒーのお勧めの作り方も記事にしたいと思います。


ちなみに、さらに後ろに「ナチュラル」「ウォッシュド」「ハニー」「ワイニー」などと書いてある場合は、その豆の精製方法(豆から果肉などを取り除く工程)を示しています。

(例)パナマ ラ・エスメラルダ ゲイシャ ハニー

最も一般的な精製方法はウォッシュドで、何も書いていない場合はたいていこれです。
パナマをはじめとする中米諸国は、環境保護の観点からも大量に水を使うウォッシュド以外の精製方法の採用に熱心です。

精製方法についても、まとめて記事にしていきたいと考えています。
それぞれ独特の香味をもたらすため、選択の幅が広がります!


皆さんのおうちカフェがいっそう充実しますように!

ここまでお読みいただきありがとうございました!


以前、コーヒーの淹れ方を記事にしていますので、参考にしていただければ幸いです!

コーヒーを美味しく淹れましょう! その1

コーヒーを美味しく淹れましょう! その2

コーヒーを美味しく淹れましょう! その3


もし、読者の方からのご質問があれば記事化していきます!
(時間はかかると思いますが、少しずつ記事にしますので気長にお待ちください<m(__)m>)

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