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RAVELラヴェル


・ジャン・エシュノーズ著

・関口涼子訳

・カバー画
リュック=アルベール・モロー
「ボレロを指揮するラヴェル」1930年

・みすず書房

公的な人物でありながら謎めいていた作曲家モーリス・ラヴェルの晩年をテーマにした、「音楽のような小説」と評される、詩集の雰囲気も持つ作品です。

ル・アーブルの港から、演奏旅行へ旅立つ日の朝。

不機嫌な入浴場面から物語が始まります。

「ラヴェルがアメリカへ行くのは初めてで、これが最後になるだろう。
今日から、彼の死まで、ちょうど十年ある」

心身の不調、睡眠などに悩まされながら、栄光の頂点にいた52歳のラヴェルに向けられる、乗客からの視線。

驚愕する数の衣類と煙草、サイズの小さな靴を携えて
豪華なスイートルームへ。
当時の船舶内の様子やラヴェルの過ごし方も興味深いです。

毎日の食事と同じものを、あえて船内でオーダーした時のメニュー。

サバのマリネ、大きなレアステーキ、グリュエールチーズ一切れ、季節の果物、白ワイン。

25着の部屋着の中から、この日はヴェロネーゼグリーンではなくエメラルドグリーンを選択。


何度も読んでも、最後は天井が高く広い部屋に取り残されたような寂しさが暫く残ります。
今回は午前1時に、狭い部屋で読了。


華奢で小柄だったラヴェルが手描きしたという壁紙や、いくつもの部屋があるという、谷を見下ろす小高い場所に建つ不思議な作りのラヴェル邸。

ラヴェルのこだわりが詰った宝箱のような家と言われているフランスの自宅は、博物館として公開されているそうですね。

モーリス・ラヴェル博物館
5, rue Maurice Ravel, 78490 Montfort l'Amaury


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