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コロナ禍で書いた産後メモ


約3年前、コロナ禍で出産した。

産後ハイの中で書いたメモを久々に読み返したら
我ながら、なかなか面白かった。


読みやすいように少し手直しして、出来事というよりも心の声の部分をメインにここに記録しておく。あえて時系列はバラバラに編集した。引用部分が当時のメモ。


今、絶対に自分、産後ハイ。お酒で酔った時みたいな変なテンションになってる。くだらないことで笑えるし、しょーもないことで泣けるし、自分でも変なのが分かる。出産って、それくらいクレイジーにならないとやってられないくらいのダメージとストレスなんだろうな。防衛本能というか忘却術みたい。

たぶん産後2〜3日くらい



コロナ禍だったから立ち会いはもちろん家族が院内に入ることすらもNGで、陣痛に耐えた数時間も、分娩も産後も、退院までずっと孤独だった。(感染対策のため初期の妊婦検診からずっと一人。パパママ学級とかも全部中止)

この時も「言語化」についてあれこれ考えていた。

分娩中、痛くて終わりが見えなくて怖くて何度もパニックになりそうだったけど、脳内で状況や感覚や感情を言葉に変換することで冷静さを保つことができた気がする。

人間が生き延びてきたのはやっぱり「言語」があったからなんだろうな、と思った。

「怖い、痛い」だけを頭の中で叫び続けるんじゃなくて、どう怖いか?なぜ痛いのか?何が怖くてどうしたら少しでも楽になるか?を考えて、俯瞰して自分を見ることで冷静になって、必死に工夫してきたから、人間は生き延びられたんだと思う。

生き延びてきた人類にまで想いを馳せていた。笑



産後しばらくは、完全にホルモンに支配されてる感があった。感情のコントロールが全然できず自分でもすごく怖かった。産後うつは他人事じゃないなと本気で思った。



入院中のときのメモ↓

調乳指導の時、授乳中、沐浴が終わった後、食事中に泣かれた時、どうして泣いてるか分からない時、3時間おきの授乳がすごく疲れるとき、ふとしたタイミングで無性に怖くなったり果てしないような絶望感に襲われることがある。叫びたくなるような、逃げ出したくなるような。

でも、きっとそれはホルモンバランスのせい。睡眠不足のせい。変じゃないし、それが当たり前だと受け止めて、いったんその恐怖をそのまま感じて、言葉にしてみるとか俯瞰して見てみると、少し冷静になれる。

これを「自分のせいだ」とか「こんなふうに思うなんて私はおかしい」とか、目を逸らして蓋をしていたら簡単に産後うつになる自信がある。だから絶対に頑張らない。状況を観察する、面白がる、学んでみる、いったん離れてみる、誰かに投げてみる、相談する、理由なんてないんだと諦めてみる、イライラしてみる、言葉にしてみる。とにかく、頑張らない。



入院中の手厚いサポート体制のありがたみを感じた分、退院後の孤独な状況への不安も増した。(実家遠方、里帰りもなし)

でも今は、どれだけ赤ちゃんに泣かれても、すぐに助けてくれる人が近くにいて、どれだけ泣いても迷惑がられないありがたい環境で、誰にも責められない、時間内に終わらなくても、どんな失敗をしてもいいし、絶対に怒られない、行儀が悪くても絶対に許される、どれだけトロくても下手くそでも間違ってても、誰も笑わない、という安心感があるからまだ余裕がある。

夜寝ている間は赤ちゃんを預かってくれるから休めると分かっている。あと何時間頑張れば休めるかが分かっている。これが、一人きりの自宅や、終わりが見えない状況、味方がいない場所だったら、きっと簡単にパニックになると思う。

よくニュースとかで見る「お母さんの孤立」ってそういうことなんだと分かった。本人の問題以上に、環境に問題があることが絶対に多い。これも自分が経験してみて、今日初めて身をもって気がついたこと。知識だけじゃどうしても分からなかった感覚。「味方がいる安心感」ってこんなにも大切なんだ!!!

でもそれもたぶん、お金で解決できることが多い。お金があれば、産後ケアのホテルに入ったりサポート体制を整えられる。経済的に苦しくて何もできない人や、情報弱者でサポートの存在すら知らないままの人、周りに頼れずに孤独な人もたくさんいる。辛いのに誰にもSOSを出せずに孤独な中頑張っている人もきっとたくさんいる。本人の努力だけじゃ絶対限界ある。ほんと世の中、不平等だよなー。



出産直後のメモ↓

分娩室での夕食後、ベッドに帰ってきて、さぁ早く寝よう!と思ってスマホも見ずにとにかく目を閉じた。

でも、耳の奥で心拍エコーの音が聞こえて、さっきの怖かった感覚がフラッシュバックして、心臓がバクバクして寝付けない。

ハサミでジョキンと切られたお股もズキンズキン痛いし、全力でイキみすぎて全身筋肉痛でバキバキだし、メンタル的にも怖いしで、とにかく冷静になろうと「大丈夫、もうあの恐怖からは解放された。大丈夫、もう休めるやっと休める」と自分に言い聞かせた。


でもやっぱり無心にはなれなくて、寝られなかった。音楽を聴いて気を紛らしてみたけどダメだった。

一旦諦めて、妊娠アプリを開いて「出産」のボタンを押すと、妊娠が分かった日から今日までを振り返って労るメッセージが流れた。今日までのいろんなことを思い出して涙が出てきた。相部屋の人がいたので気付かれないように静かに泣いた。

コロナ禍で不安な中での妊娠、辛く長い悪阻の日々、熱が何日もおさまらなくて次の検診では心臓が止まってるかもなと覚悟したこと、初めて胎動を感じた時のあの感覚、お腹が大きくなってきて不安になった日のこと、色んなことを思い出して涙が止まらなかった。今日までよく頑張ったね、とたくさん自分に声をかけた。

「あぁ〜ホルモンバランスのせいか」とか「これが産後ハイか」とか、冷静に感情を分析しながらも涙が出てきてますます寝れなくなった。


スマホを見たい衝動にかられたけど、目がチカチカしてたしとにかく命優先と思い、ぐっと我慢して朝まで目をつぶって体を休めることにだけ集中した。

朝7時くらいからは眠るのも諦めて部屋のテレビの新生児の扱いに関する説明動画を全部見た。昨夜の助産師さんが「どうですか?寝れましたか?」と部屋に来て、新しい1日が始まった。

朝ごはんの味噌汁はすごく美味しかったし、夜は全然食欲が出なくて食べられなかったのにモリモリ食べられたことが嬉しかった。陣痛前からだからもう2日近く一睡もしてないけど、不思議と眠くなかったし、脳が完全に覚醒してる感じがした。



産後しばらくは脳が覚醒してる感(万能感)があったが、それも数週間で落ち着いた。今はもう、ここに書いてあるような感情や感覚を感じることは全くない。

こんなことを考えていたことすら、
すっかり忘れていた。

やっぱり記録って大事だな。


今も、孤独な中で頑張っている出産直後のお母さんがたくさんいると思う。

できることならヘルプに行って、寝不足のお母さんをぐっすり寝かせてあげられたらいいのに。

大丈夫だよ、どんな感情もおかしくなんかないよ、必死に頑張ってる証拠だよ、頑張りすぎないでね、って声をかけてあげられたらいいのに。



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