不満そうに『こなしてるだけなんですよ』と話す訪問看護師の不満の正体とは?

先日お会いした訪問看護師さんが
「こなしてるだけなんです」と不満そうに話されていました。

私もこの感覚、訪問看護一年目の時に感じたことがあります。

出勤して、やることだけやって帰っている感じ。
もちろん考えて行動してるのですが、なんとなく毎日追われるようにただ過ぎていく感覚。
立ち止まって考えたいけど、考えるったって限界が。

私が立ち止まって考えられたなと思えた明確な機会は
一年目の終わりの事例報告会で「訪問看護師の役割について」事例をまとめた時でした。
自分の行動を振り返り言語化し、そのことについて、先輩や同期から意見をもらえてはじめて、

ちゃんと学んで成長していると感じられた記憶があります。

そんな、個人的な経験も踏まえて

「こなしてるだけ」な不満
=「こなす」+αを知っているのに、できていない状態、もしくは知りたいと思っている状態
   ≒やりがいの喪失、行動を言語化する機会・学習機会の不足

と仮定したところ、
論文で「リフレクション」について書かれたものにぶつかりました。

新入職看護師教育へのリフレクションの適用
青木由美恵1)他5名 関東学院大学看護学雑誌 Vol.2, No.1, pp.25-37, 2015

ここに「こなす」ことについて

[業務を覚えるのに精一杯で看護の実感がない]では、「業務をこなす」という言葉がしばしば使われ、

と、記載がありました。

「看護の実感がない」これですよね、まさに。

そんな状態に、リフレクションを行うと

方法によっては、以下のような内面的変化が得られることがわかった、というもう1つの論文。

看護実践におけるリフレクションによる効果に関する文献検討  新垣洋美1)他4名 京府医大看護紀要,25:9-18,2015

リフレクションは、状況との対話をしながら、実践家が行動について意図的な選択を行い判断するために、経験を注意深く、根気強く熟考するものであり、自己との対話を通して自分自身や自分の行為に意味づけをする プロセスであると定義されている 3)。また、看護者が看護実践の中で行っている思考プロセスと、その結果生じた変化の自覚によって、自己の看護実践を向上さ せていく自己教育プロセスとも言われている 4)。

自分が事例報告会で得た学びの過程はこんな感じだったんだなと読んで納得しました。

リフレクションを促す対話とは、他者を意識し相互の視点を借りあうことで、新たな視点を得て、自己と他者を見つめ直すプロセスと定義されている 10)。一人では視野が広がらず、負担になる可能性があるが、思考が滞った時に、他者が関わることで他者の考えを借りることができ、自己への問いかけが容易になるだろう。また、なぜそう考えたか、行動したかと問われることから自分の行為を紐解くきっかけになると考える。リフレクションは対話により促されると言われており、自己との対話だけでなく、他者との対話をして いる研究が多かった。
また、看護師は患者について話し合うことはあっても、自己について語り合う機会は少ない ことが推測される。看護師同士が語り合う効果は、経験の伝承のみならず、看護師間の人間関係をより深めると言われている 13)。看護師が自己について語ることで、学びを実感できる機会を意図的に設定していくことが必要である。自己との対話、他者との対話を循環 しながら、それら両方の対話を効果的に用いることが重要である。

看護師が「足浴」を行うにしても
・足が汚れていて傷口からの感染のリスクが高いと思ったから
・治療で足のしびれを訴えられ温めて緩和しようと思ったから
など、理由は様々。

事例報告会などのしっかりした機会だけでなく、時間がない中でも出来ることとしては、

普段からリフレクションの目的や問いかけ方を意識して、
「この前、足浴気持ちよかったみたいですよー。何かケアのきっかけがあったんですか?」みたいな。

看護師の考えを意図的に聞きだして、ワクワク答えてくれる、そんな日常がある職場の雰囲気もいいなぁなんて思ってました。

不満そうに「こなしてるだけ」という言っている方も

立ち止まって行動を振り返って言語化する機会を得て、誰かの考えを助けに

そこから学んだり、認めたり、変化を自覚したい、ということなのでしょうね。


リフレクションは、誰とどんな風に行うかによっても効果が変わるということも書かれていたので、もう少し具体的な問いかけ方などついてはビジネス書なども合わせて読んでみようと思います。またそれはいずれ。

そして、これらを書きながら、少し前に読んだ「在宅無限大」という本を思い出しました。訪問看護師の頭の中を丁寧に言語化されている内容でした。本の中のやりとりも研究者と行うリフレクションの役割があっただろうなと感じました。興味のある方は是非。

次回は、「訪問看護は1人で対応するから不安と感じている方へ」を書きます。

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