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まっすぐ それぞれの『青春の影』

チューリップの『虹とスニーカーの頃』を聴いた時はぶったまげた。
初めて聴いたのは若い頃、ワルい年上の友人たちとの徹夜カラオケだった。
だいぶ年上の「職業・芸者」の姐御が明け方頃に踊りながら歌った。
「この歌……すごい歌詞やね」
「え、そんなん思ったことないわ、でもそう言われてみたらヤバいな(笑)」
「ヤバすぎる、歌い出しから、しかも何度もそのフレーズ出てくるし」
「そういう時代だったのよね、おい和夫(笑)」
先日NHK「のど自慢」のトリとして登場した方の歌を聴いて数日して思い出した。
「結婚して37年、普段口には出せない妻への気持ちを歌います」
紹介されて歌われた歌は同じくチューリップの『青春の影』だった。
歌い終わって司会のアナウンサーに感想を求められた純烈リーダーの感想が、よかった。
「なんか……めっちゃ…よかったですね」
他のメンバーもぽつりと漏らすように「なんかすごいよかった」
よかったんだ。
 
司会のアナウンサーも感想として言ったこの言葉、「まっすぐ」。
まっすぐな歌をまっすぐな歌い方で、そこには相手へのまっすぐな気持ちが込められていて。(というように感じて)
他者に「みられること」に対して滲み漏れる自意識は滲んでなくて。(というように感じて)
でも、伝えたい気持ちがあって、選んだのがこの歌で、その、歌い方。
メッセージ、紹介、歌詞、メロディー、きもち、舞台に立った人の持っていたり醸し出していたりする雰囲気、声、歌い方……。
しかもこの歌の一番の最後、「聞かせどころ」の高音。
この高音に持っていくまでの歌詞の部分は昔から「すごいな、エグイな、純な殺し文句だなすごい歌詞だな」って感嘆のフレーズなのだけど、この歌詞を盛り上げて盛り上げて、高音、で、スッとおさめる。
この高音の響かせたところ、聞かせたところで、鐘が鳴った。
合格じゃなかった、でもいまどきの言葉でいう「優勝」な鐘だった。
そうして歌い終わって、「言葉で感謝のお気持ちを」とアナウンサーに言われたその人は、照れたように、でも、しっかりとおっしゃった。
 
「いつも支えてくれてありがとうございます。これからは私も支えるようにしますんで」
 
この「支える」という言葉に違和感とかモヤモヤとか「ん?」を感じる人もいるかもしれない、
少なくないかもしれない、とも思ったりも、とてもした。
でもでも、この方は、とても素直に正直な気持ちとして言われたのだろうな、とも。
この歌を選び、歌い、そして言った言葉に、そんな気持ちが込められているように感じて。
 
『青春の影』は今更私が言うのもあれだが、
ほんまにエモいし、さきほど書いた箇所のフレーズは、めっちゃ、すごい。
初めて聴いた時、『虹とスニーカーの頃』のあの冒頭のフレーズ同様、
「すごい」「なんてフレーズを書くんだ」とぶったまげた。
でもわたしは後半の歌詞が、歌詞は、二番の最後の方の歌詞や、最後の歌詞、これもキラーな歌詞は、過剰反応かもしれないけれど「ん?」となってしまう。この歌詞が泣けるのだろう。けれども「ん?」は、なんか、ある。
でも、この歌を好きな人はめっちゃ、いっぱいおるんやろう、それぞれにそれぞれの『青春の影』があるんだ、そうして今まで聞かれてきて、歌われてきたんだ。

その中のひとりがこうして「感謝を伝えたくて」選び、歌ったまっすぐは、よかった。
 
後からもう二度三度聴くと、かなり手練れというか、結構歌い込んでいて、たぶん結構チューリップや和夫(呼び捨てすな)が好きなんだろうなと感じたし、意外と〝ワル〟(実はキザとか)なのかもしれない(笑)
でもそれでも「ああ、正直な正直なまっすぐなお気持ちだ」と感じた気持ちは変わらず、それを「支える」というワードだけで、否定したりするのは違うよな、とも考えたりした。
 
「なんか……めっちゃ…よかったですね」「なんかすごいよかった」
 
もうひとつ、この歌で忘れられないのは、旅芝居・大衆演劇の、舞台でのこと。
今は大御所の「会長」たる役者氏が息子に看板を譲ると決めた一か月公演での舞踊だ。女形で踊っておられた。
HPに綴られた気持ちを読んだあとだったから、ぐっときた。
「これからは一人の役者に戻り、誇りをもちながら、芝居の道を追求する。
座長としては出来なかったことをやりたい。
よりお客さんを感動させるべく、一から勉強したい。やり直したい」
若い頃からヤンチャな反骨魂の人で自分の道を追求し続けてきた人。
そうして引退後、息子との衝突、息子のドロン(逃げ)、からの、再びの座長復帰。
数年後和解し、今は息子は役者を引退したけれど、今は婿が座長となり、孫も成長。
病に倒れるも若い役者を束ねる「会長」となり、今も舞台に立っている。

といういろんな重ね合わせはさておき、いや、重ね合わせたから言うけど
歌をじっくり聴くと、出会えた歌とも別れの歌ともとれるんだよね。
それも、そこが、すごいんだ。


定期的に登場、のど自慢話。

◆◆◆
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構成作家/ライター/コラム・エッセイスト
中村桃子(桃花舞台)と申します。
大衆芸能、
旅芝居(大衆演劇)や、
今はストリップ🦋♥とストリップ劇場に魅了される物書きです。

普段はラジオ番組構成や資料やCM書き、
各種文章やキャッチコピーなど、やっています。

劇場が好き。人間に興味が尽きません。

舞台鑑賞(歌舞伎、ミュージカル、新感線、小劇場、演芸、プロレス)と、
学生時代の劇団活動(作・演出/制作/役者)、
本を読むことと書くことで生きてきました。

某劇団の音楽監督、
亡き関西の喜劇作家、
大阪を愛するエッセイストに師事し、
大阪の制作会社兼広告代理店勤務を経て、フリーに。

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