バスの時刻表を見ようとしたら瞬時に声がとんできた。
「さんじゅっぷんっ!」
ベンチから、先にバスを待っていたおっちゃんだ。
次にバスが到着する時間を教えてくれたのだ。
びっくりしたが、びっくりと同時に言葉を返していた。
「あ、30分なんや、ありがとー!」
目をやるとニット帽に防寒ばっちりの服装にスニーカー。
「それ過ぎたらな、次50分までけーへんねん」
「そうなんや。よかったー」
そんなこんなでバスを待つ間、おっちゃんと会話をすることになった。

「寒いな」「うん、寒いなー」
「どっからきたん」「歩いてきた、向こうのバス停から」
「歩いてきたんかいな。えーっ。なんでぇな」
「寒いやん、向こうのバス停ベンチないやろ? せやから長い時間待ってるん辛ぁて。せやけど良かったわ、あと2分やん。ラッキー」
「確かにここベンチあるもんな。せやけど吹きさらしやで」「それはそうやな」「笑」
「寒いなー、もう駅まで歩いた方が早いんちゃうか、歩こかなーまた次のバス停まで」「結構あるでー?」
「歩いたことあるねん駅まで」「まあ歩けんことはないな」「まあ待つわ、あと2分やし」
「どこで降りるん? 近鉄?」「JR」「どこまで行くん?」「おーさか!」
「大阪! そんな遠いとこから来たんかいな! 大阪なら近鉄で降りたほうが近いで」
「いや、JR」「大阪のどこなん」「大阪のはしっこ」「はしっこ?」「梅田!」
「梅田はしっこちゃうやん」「まあな」「俺、大阪40年住んでたからわかるねん」「そうなんや」
「……明日休みやしついていこかなー?」
「あー、残念やなーー、明日わたしは仕事やわーーー」

「遅いなあ。なんでやろ。道路混んでへんのにな」
「ねー」「たまに遅れるねんめっちゃ」「あ、そうなんやー」「うん」

「どこおったんですか?」「寝屋川!」「そうなんや、近いなあ」

「事故ったんかもしれんなあバス」
「え」
「遅いで?」
「あー、それは困るなあ。50分とかまで待たれん。歩こっかなーーそれならー」

「あ、来た、ラッキー」

（遠くの方に🚌が見える）

「また会えるかもねー。毎週木曜日は来るねーん」
「木曜日かー………」
「せやねん。あー、来ーーたーー」
「まあまた奈良おいで」
「ありがとうございます」

（乗る）

（私はおっちゃんが先に乗って座ったのを確認してから離れて遠くに乗る）

（おっちゃんは近鉄の駅で降りた。降りるときには会話しなかった）

でもでも、でもでも。

でもでも、また会えますように。いや、ほんま。ほんまやで。


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大阪の物書きです。中村桃子。
構成作家/ライター/コラム・エッセイ/
大衆芸能（旅芝居（大衆演劇）やストリップ）や大衆文化を追っています。
現在、lifeworkたる原稿企画２本を進め中。
演劇、古典芸能好き、からの、下町・大衆文化も好きです。

ラジオ番組の構成などにも関わっています。
AMの懐メロリクエスト番組。(昭和1桁〜50年代歌謡)とか、なぜか落語家さん絡みの番組多し。

現在、ウェブマガジンにて女２人の酒場巡りを連載中。
現在第10回（New!!）　

そして、あたらしい連載「Home」。皆の大事な場所についての文章、も、ぼちぼち。

旅芝居・大衆演劇関係では、各種ライティング業。
文、キャッチコピー、映像などの企画・構成、
各種文、台本、役者絡みの代筆から、DVDパッケージのキャッチコピーや文。あ、小道具の文とかも（笑）やってました。
担当していたDVD付マガジン『演劇の友』は休刊ですが、
アーカイブがYouTubeちゃんねるで公開中（貴重映像ばかり）。

……と、New。今年はYouTube絡みのお仕事にもかかわります（演劇系とかじゃないけど）。ふふふ。

仲良くしてくれたら、とても嬉しく思います。
改めて今後ともどうぞよろしくお願いします。ありがとう。ラブ。