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【小説】 レースカーテンと王子  【ショートストーリー】



今日はお父さんとひみつのおでかけをする日だ

ひみつだから、さつきちゃんとみっちゃんにも言ってない

もちろんお母さんにも

お母さんは、わたしとお父さんは公園に行くと思ってる。この前買ったレースの白いワンピースを着て行きたかったけど、よごすからだめだって。公園に行かないからよごさないのになあ

「じゃあ、行ってくる」

わたしとお父さんは手をつないで出発した

ひみつの場所まで歩いて行く

わたしはひみつのおでかけは、あまり好きじゃない。だって、つまんないから。あーあ、みっちゃんとプール行きたかったなあ。あついのに歩きたくない

お父さんの手がベタベタしてきた。手、はなしちゃダメかな

足があっつい。サンダルじゃなくて運動ぐつにすればよかった

のどかわいたよー

ミーンミーンうるさい


まだかなあ


頭かゆい。ぼうしぬぎたい


あ、みえてきた

ひみつの場所は、うちと同じ団地がいっぱいならんでる。うちはお花の絵が書いてあるけど、ここの団地は1.2.3って書いてある。たぶん、10まである。

ひみつの場所は8だ

お父さんとわたしは8まで歩いていく

えーと、3がいだっけ

3がいまでのぼってお父さんがピンポンをおした

「はーい」

おねえさんはわたしとお父さんを見て「いらっしゃい」と言ってニコニコした

わたしとお父さんはおねえさんの家に入った。おねえさんとお父さんは、大事なお話をするからって言ってひみつのお部屋に入っていった

ひみつのお部屋には大人しか入れないってお父さんが言ってた。わたしは入っちゃダメなんだって

どんなお部屋なのかな。大人になったら入ってみたいな

わたしはテレビのあるお部屋で、おねえさんがくれたオレンジジュースをのんでお話が終わるのを待った

はやく終わんないかな

おねえさんの家はウサギのコップとか、くまのぬいぐるみがおいてある。テーブルはぴんく色でかわいい

あ、カーテンにリボンがついてる。前来た時なかったのに。レースカーテンっていうんだっけ?うちのレースカーテンとぜんぜんちがう。いいなあ、おひめさまのお部屋みたい

あれ?カーテンがなんか動いてる

なんだろう

ちかくで見てみよ。あ、なんか小さいのがカーテンにかくれた!

ネズミかな?

「ネズミさ…ん?出ておいで」

カーテンをのぞいたらまた動いた!

すこししたらネズミが出てきた

「こんにちは。私はネズミではありませんよ」

あれ?しゃべった!ネズミじゃない。本で見た事ある!え…と

「お、王子さま?」


「そうです。はじめまして」

金色のかみの毛だ。すごい!本と同じだ。ちゃんとけんももってる。けど、王子さまってこんなに小さいの?

「なんでそんなに小さいの?」

「私の国では皆、この大きさです」

「くに?えーと、おしろとかあるの?」

「はい。ありますよ。貴女をお城に招待する為に、ここまでやって参りました。」

「しょうたい?おしろにつれてってくれるの?」


「はい。時間があまりありません。さあ、参りましょう」

「でもわたし、ドレス着てないからなあ」

「ドレスですか?わかりました。しばらくお待ち下さい」

王子はぴょんってレースカーテンにつかまって、上までのぼっていった。つまようじみたいなけんをレースカーテンにさして、するするって下までおりてきた。おりてきたらまたぴょんってレースカーテンにつかまってするするっておりてきた

何回も同じことしてる。どうしたのかな

「はい、ドレスができましたよ。着てみて下さい」

王子はわたしにドレスをわたしてくれた

「わあー!すごーい!キレイなドレス。レースカーテンで作ったの?」

「はい。私の国では、こちらの世界にあるレースカーテンでドレスを作るのです。では、ドレスをお召しになって下さい。城へ参りましょう」

「うん!」

わたしはレースカーテンのドレスを着た。キレイなドレス!うれしい!おひめさまになったみたい

「ねえ、どうやっておしろへ行くの?」

「魔法を使います」

「まほう?使えるの?」

「私の国では皆、使えますよ」

「いいなあ!」

「では、目を閉じて下さい。そのまま10を数えて、数え終わったら目を開けて下さい。いいですね?10ですよ」

「うん!とじたよ」

「10まで数えて下さい」

「いーち、にーい、さーん、よーん、ごーお、ろーく、なーな……」

あれ?ななのつぎなんだっけ?えーと…わかんなくなっちゃった。

「ろーく、なーな…」

えっと、うーん。なんで忘れちゃったんだろう。もうおねえさんなのに…。あーっ!もういいや。目あけちゃえ


目をあけたら、お父さんがこわい顔してなんか言っている

「おい!大丈夫か?しっかりしろ!」

あれ?おしろは?王子は?

「わかるか?おい!」

お父さんがわたしのほっぺをぺちぺちしてきた

「いたいよ!お父さん!」

「よかった…。心配したんだぞ!お前、一体何やってたんだ」

「なにって…」

あれ?レースカーテンが体にぐるぐるまいてある

王子が作ってくれたドレスはどこいったの?

王子はどこいったの?

レースカーテンを見たけどいなかった。トイレにもお風呂にもいなかった

ちゃんと10を数えなかったから、おこっていなくなったのかな


そうだ!ひみつのお部屋にいるかも

いそいでひみつのお部屋に行った

ひみつのお部屋にもレースカーテンがあったけど、王子はいなかった。お布団の中も見たけどいなかった


かってにひみつのお部屋に入ったからお父さんにおこられた。おねえさんはないてた

お父さんとおねえさんがケンカしたあと、わたしとお父さんはおねえさんの家から出た

いつもおねえさんはお見送りをしてくれてたのに、今日はしなかった。おかしもくれなかった

またお父さんと手をつないで歩いた

帰りはそんなにあつくなかった

ミーンミーンじゃないセミがないてる

ひみつのおでかけの帰りは、きっさてんでジュースがのめる。けど今日は行かなかった


お父さんの顔を見たらなんかおこった顔してる。ひみつのお部屋に入ったからまだおこってるのかな…


お父さんはわたしの手をはなして頭をなでなでしてきた

「ひみつのおでかけは今日でおしまい。ごめんな」

お父さんがなんであやまってるのかわからないけど、わたしは「うん」って言った

でも、ひみつのおでかけがなくなったらもう、王子と会えないのかなあ

王子に会いたいなあ。またレースカーテンのドレス着たいな


そうだ!お母さんにリボンがついたレースカーテンを買ってもらおう!お家にレースカーテンがあったら王子が出てくるかも

お母さんに王子の事とか、王子にレースカーテンでドレスを作ってもらった事とか話したら買ってくれるかも!お母さん、ふしぎな話が好きだから。ひみつのお部屋の話もしよう


またお父さんと手をつないで歩いた


はやくお家につかないかなあ♪


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