見出し画像

入院日記② 切った。それでも呼ばない。

入院前の問診票に、『気をつかう性格だと思う』という欄があった。
私こう見えて(見たことあるか知らんけど)実は気ぃつかいぃなんですよ。
自分で言うヤツがホントにそうなのかと言われると自分でも疑問だが、じつは中学生の頃に『空気を読みすぎて我慢しすぎて子供らしく生きなさ過ぎて頭パッカンした』ことがある人間で、それ以降は他人にある程度の迷惑と手間をかけたり邪魔したりして生きるようにしてたのですが。
ただ、全身麻酔で腰の手術をするとなると、術後、身体じゅうにケーブル・管・点滴などが付いているので、寝返りを打つのも水を飲むのも、ちょっとでも動くときにはナースコールを押して看護師さんを呼びなさい、という説明を受けた。
これはキツい。精神的には、手術よりもキツい。
「すいませーん、ちょっと右向きたいんですけどー」ってナースコール押せますぅ?? そんな度胸無いっすよ、あたし・・・
手術前にも、担当してくださっていたベテラン看護師さんから説明があり、「とにかく勝手に動くと危険なので、遠慮せずに押してください。そうじゃないと、『安静を守れない患者』っていう、ブラックリストみたいなものに入ることになりますから。」と脅された。
ブラックリストに入ってしまって看護師さんたちに監視という仕事を増やしてしまうことを考えたら呼ぶしかないか・・・

14:00から予定、でも3件目だからちょっと押すかも?と言われていた手術ですが、看護師さんがいらっしゃって、「ちょっと早くなって13:50になりましたので、そろそろ用意して移動しましょうか。」と。
おぉ・・・まさかの “巻き” で呼ばれたか・・・
下はパジャマ、上は手術用の不織布の服に着替え、自分で歩いてエレベーターに乗り、手術室のある階へ。
手術室の前室みたいな場所でベンチに座って待つ。ここは涼しめになってるので、不織布いっちょの私にはブランケットがかけられる。
手術室への自動ドアの向こうに主治医が登場。「おーい、こっちこっちー」ぐらいのテンションで手を振る主治医。
ゆるいな・・・和んだけど。
緊張しないように気を使ってくれてるのに違いない。たぶん。知らんけど。
私にあまりにも緊張感が無いのもどうなんだろうと思って言ってみたんだけど、主治医は「あなたはもうそのままの人柄でいてください」と言った。オブラートに包んだ感じの「別に能天気でもいいよ、君は麻酔で寝てるだけやし。」みたいなことなんだろうと思う。
で、血管に針が入らない体質がここでも発揮されて、点滴がいつまでも入らない。これが入らないことには麻酔が始まらないので手術も始まらない。スタートラインにも立てないみたいなままで両手両腕をペチペチ叩かれ、シュシュシュシュさすられ、何か所か刺されてくっそ痛くてワケわからなくなってるうちに右手首の1か所が成功したらしく、いよいよ「麻酔を入れますので眠くなりますよー」と言われる。
ガス麻酔は秒で寝るとか聞いたことあるけど、点滴の全身麻酔ってどれくらいで寝るんだろうなぁー・・・と思ったぐらいからもう記憶ないんだけどそんな速さなんですかね?

そっからどうなったのかはもちろん記憶に無いんですが、次の記憶は看護師さんに「聞こえますかー?のどのチューブ抜きますねー」と言われた辺り。そのあと主治医がすぐ横に来て、私の顔面の至近距離に「ほら、これ、取ったヘルニア。触る?プニプニしてるで。」みたいなことを言われた気がする。そしてなんかよくわからんまま触って、ホンマや、プニプニしてますね、って言った気がする。そっから断片的に覚えてるのは、酸素マスクが外れたらすぐにマスクを付けられる(ご時世的なヤツで)ため、事前にマスクを1枚預けておくんだけど、そのマスクが

画像1

これだったんですけども。
誰の声かは判別つかないんだけど、「マスク取ってー。その藤色のヤツ」「藤色?あぁ、これのことですか?!」「藤色じゃない?」「ラベンダー色?」「いや、普通に紫でいいでしょww」「紫ってもっと濃い色のことやろ~?」って、けっこうな人数で盛り上がってるのを聞いた。バイトの休憩室ぐらいの空気だなと思った。

心電図、導尿カテーテル、点滴、ドレーンなど、いろんな線がつながった状態でベッドごと病室に帰ってきてるはずなんだけど、その記憶はまったく無い。次の記憶は病室で主治医がうちの親に『無事に終わりました電話』をしてるところ。「代われる?しゃべれる?」と受話器を渡され、「今終わって戻ってきたー、大丈夫ー」みたいなことを言ったと思うけど記憶は曖昧。いつまで眠いねん、あたし。

主治医も帰られて、ケーブルまみれの私にはもう2本、両足にフットポンプ(血栓症予防のマッサージ機みたいなもの)も付く。
あまりの傷口の痛さに「すみません・・・どこ向いても痛いんですけど・・・」と訴え、背中にクッション、お尻に座薬を入れられる。人生初座薬・・・座薬バージンを喪失・・・

この日は絶食で、明日の朝はゴハンが来るらしい。食べれるのか、こんなんで・・・でも朝食を半分以上食べないと栄養のための点滴が終わらない。意地でも半分は食べないと・・・と決心して寝る。
ただ、1時間おきに体温、血圧、血中酸素、採血など、めっちゃ忙しい。そしてその間も「一生治らんのちゃうんコレ・・・」っていうぐらい傷口が痛い。10分に1回ひそかに5cmずつぐらい体勢を変えて過ごす。寝れない。
そのうち、フットポンプからピーピーというお知らせ音が鳴る。1分以上待っても止まらず、そこでやっと「あぁこれエラー音なんだな」と思い、初めてナースコールを押す・・・!! ポンプを取り換えてもらって終了。

結局、後にも先にもナースコールを押したのはこの1回だけだった。

帰ってきてから4時間後には水を飲むのだけはOKになる。食べ物はまだ。
動けない、水飲めない。 でも、ナースコールは押したくない。
結果、気合で朝食までやり過ごしました。

そしてまたここから、朝食との闘いが始まるのです・・・

(つづく)

----------------------------------------

みなさんのスキを心に抱きしめて書いております。
いつもありがとうございます。
ツイッター → https://twitter.com/momonouchimmm
Youtube → https://www.youtube.com/momomoTV

 

いつかここの文章をまとめて同人誌にしたいという夢があります。