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華麗なる誘惑

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Koji様の素敵イラストから妄想したショートストーリーたち。ヘッダー画像、この小説に使用させていただいたイラストは、すべてKoji様に著作権があります。
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2020年1月の記事一覧

星降る夜に、かかる虹

丘の上にある、まぁるい公園からは、海が一望できた。
ゆっくりと沈む太陽が、海を朱に染めている。

「ほら、おいで」

手を伸ばすと、愛猫のとろろが、ピョコンと私の腕に飛び乗ってくる。
3キロ近くあるとろろは、私の腕の中にすっぽりとおさまった。

冷たい空気。吹く風が体温を奪っていくけれど、とろろを抱っこしている腕の中は温かい。
とろろを抱き抱えながら、私は少しずつ暗くなっていく海を見つめる。
普段

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雪の涙が降る前に

窓の外を見ていた。
部屋の中は、冬になれば暖かく、夏になれば涼しく過ごすことができるのに、冬になれば冷たい空気を肌で感じたかったし、夏になれば太陽の下で、汗をかきたいと思っていた。

「真紀、起きてたの?」

「あ、うん」

翔平は、部屋の中に入ってくると、私の隣に腰をおろした。

翔平と私は、5年前に駆け落ちをした。
それからずっと、この小さな部屋で、ふたりひっそりと身を潜めて生きている。

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まんまるの優しさを繋いで*あとがき

未読の方はまず本編からどうぞ。

このお話は、noハン会小冊子企画で書いた小説だ。
ちなみに、テーマはこのイラスト。

Kojiちゃんの描いたイラストだ。

私がこのイラストを見て受けた印象は、まぁるい地球。歌に例えたら、「小さな世界」だ。
手と手を握り合って、まぁるい世界を思いやりと優しさで包み込んでいる。

生きている限り私たちは、喜怒哀楽、どの感情も持ち合わせている。喜怒哀楽は、いろいろなカ

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