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ノーサイド・ゲーム 小説とドラマの雑感 第一話

7月7日(日)21時からTBS日曜劇場でまたも池井戸潤原作ドラマが始まりました。

原作小説もこの6月に書き下ろされたばかりの新作です。

ラグビー経験者かつ池井戸作品好きとしては見ないわけにはいきません!

小説は発売早々に買って読んでおりますが、感想を書くのはこのドラマを待っていました。というわけでドラマの進行に合わせて感想を書いていきたいと思います。

小説とドラマの差異

おおむねのあらすじに違いはないんですが、最も大きな違いは主人公君嶋の家族が描かれていることですね。妻の役には松たか子が起用されています。小説では名前すら出てこないのですが。。。

小説ではあくまで企業小説として君嶋が組織の中で奮闘する姿のみが描かれておりますが、松たか子を起用するということはそれなりの割合を家族ドラマを描くことが想定されます。完全に原作小説にはない場面なので、ドラマ側の腕の見せ所ですね。

さっそく第一話から長男との父子関係がアツく描かれています。

いじめに立ち向かう息子に、(覚えたての)ラグビー精神を説く姿は胸をあつくするものがありますね。ここでも半沢直樹以来TBSが日曜劇場で培ってきた池井戸ドラマ節が炸裂します。

小説を読んでいる身としては違和感があるのですが。。。

ドラマの違和感

小説では経営戦略室でマネジメントや分析を得意とするエリート社員として描かれており、アストロズのGMとしてもそういった視点でチームに改革を起こしていきます。

ドラマでは左遷されてヤケになった姿が前面に出され、小説にあったクレバーな分析力が影を潜めます。その代わり強調されるのは。。。

大雨の中、身体をぶつけ合い互いを認め合うというものでした。。。

え、令和のドラマじゃないの?これじゃスクールウォーズじゃんと思ったらすごいセリフが出てきました。

好き放題言いやがって。けど、俺かてそや。俺もリーグ残留なんかじゃ満足できへんねん。もう負けんのはいやや。
やってられるか!
俺は、俺はこのチームで優勝したい。

君嶋の名アジテーションのあと部屋から出て行き、静かになったチームメイトにキープレイヤーの浜畑が、米津玄師の主題歌をバックに独白する名シーンは私の頭の中でこちらに変換されていました。

プロジェクトXが描いた伏見工業ラグビー部がラグビーに初めて向き合う涙なしには見れない場面です。そのまんまとは言わないけど。そして伏見工業ラグビー部と言えばもちろんスクールウォーズのことです。

そうして思うとタイトルロゴはどことなく似てるような気がします。

こう、文字が横になびいてる感じね。

ドラマで描かれていないもの

スクールウォーズテイストで進行する家族ドラマは、小説で描かれている重要な要素が落とされています。

それは日本蹴球協会についてです。

チケットが売れていないという点で、その固有名詞自体は一度出てきましたが、その運営の是非については言及されません。

また、君嶋がチームに向けた演説でも、強くなれば観客動員は増えるというエリート戦略家とは思えない発言をします。

小説では日本蹴球協会について厳しいメスを入れる内容になっています。そしてこれは現実の日本ラグビーフットボール協会に向けたものそのものと読めるものになっています。今ようやく変わろうとしていますが、それほどまでに現実のラグビー協会の運営はヒドイと言われています。森元首相すらあきれるほどに。

池井戸小説の醍醐味の1つが巨悪なる組織に戦う姿にあるのですが、この協会の点を描かないのだとするとちょっと残念です。

君嶋の組織運営の苦労話も半減しそう。その分を補う家族ドラマなのかな。。。

ラグビーとアツい男の話ってだけでも十分おもしろいと言えばおもしろいんですが、今後どうなるんでしょう。

早くも来週が待ち遠しいです!


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