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街と明るさ

街には暗がりがないと色気がなくなって、乾いた街になってしまう。例えばパリとかにはこの路地の奥どうなってるんだという暗闇があって、酔っ払いが立ちションをしていたりする。目抜通りにも芸術家が占拠した廃墟のようなワケの分からない建物があったりする。暗闇は人の想像力の燃料みたいなもので、水木しげる先生も「明るくなりすぎた街には妖怪さんがいられなくなってしまった」と言っていた。人工によってコントロールされすぎた街は少しつまらない。護岸工事をバキバキにされて生命力を奪われた川もそうだ。暗渠は面白いけど同時に切ない。
「千と千尋の神隠し」には人間の開発や生活によってどうにかなってしまった川の神さまが出てくるけど、ああした悲哀は確かにある。

都市開発や再開発と共に暗い路地や不思議な小道は消えていく。ある意味では安心感もあるし、管理しやすいから良いのだけど、色っぽさは失われていく。

ところで怪談というものが好きです。
「北野誠の深夜の雑談」
田中康弘さんがゲストの回を聞いた。

そこでも、そのような話をしていて、興味深かった。久しぶりに昔行った心霊スポットに行ってみるかと尋ねると、20年前とは比較にならないくらい明るくなっていた、と。昔の家には、どこか家の中にも暗闇があって、夜を強く感じさせられる空間があった、という。面白い話。

暗闇は余白でもあるし、逃げ場でもあるかもしれないし、少しスリリングな色気を帯びているかもしれない。

首都だろうが先進国だろうが、関係はない。パリとかロンドンにはあやしげな暗闇があった気がする。ルーマニアの暗闇なんて恐ろしかった。ドラキュラを信じさせる暗さと街並みがあった。どうか街はビカビカと照らさずに。

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