見出し画像

老朽化した建物と住民ーー朝日新聞取材班『朽ちるマンション老いる住民』を読んで

 朝日新聞取材班 朝日新書 2023年出版

 この本は、朝日新聞で連載されていた記事が新書になったもの。古くなったマンションに住んでいる人たちのこと、マンションの管理などが書かれている。

 私が住んでいる団地もだいぶ古くなっていて、数年前に管理組合の理事会の役員になってから、これから先どうするんだと考えるようになった。この本に何か役に立ちそうなことが書かれていたらいいな、と期待して読んだが、そんなに実用的な情報は書かれていなかった。ちょっとがっかりである。

 私としては、管理組合と自治会、分譲住宅の居住者と賃貸居住者との違いなどが、知りたかったんだが、そういう実用的な知識になるようなことの記述は少なかった。取材はたくさんしていると思ったが、キラキラしている話は、住んでいる人でコミュニティを作った、サロンを作った、とか、老人の集まり会を作ったとかそういう話で、古い集合住宅とかが管理組合とかどういう組織に属さなければならなくて、自分が住んでいる住宅の資産価値を下げないように、自分が住んでいる場所に責任をもっていかなければならないか、というそういう話が本当は大事なのではないか、と私は思った。

 私が今自分が住んでいる古い団地にいて思うのは、この本のタイトルにもあるように「老いる住民」が重要なポイントになると思う。正直言って、その老いる住民は、若いころにこの団地を購入して、気が付いたら年をとっていて、建物も老朽化していているんだが、結局自分が生きている間、何事もなく住めればいいと考えているので建て替えには積極的ではない。いつ死ぬか分からないし、建替えてる間に死んでしまうかもしれない。若い人たちは仕事で忙しくて、理事会の役員なんてやらない。だから、暇を持て余してる頑固ジジイが理事長とかをやって、自分の住んでる団地にのさばる。そんな雰囲気の古い団地のイメージそのものが、今、私が住んでいる団地だ。この本は、「マンション」って言葉を使ったがために、そういう古い確執がある団地を取材しきれてないように思った。

 今、古くなっていて建て替えるか問題になっているUR団地とかは、老人には住みやすい環境なのは事実であって、この朝日新聞の新書読んでて、驚いたのは、認知症の老人がオートロックのマンションに住んで、いろいろ大変だった、という話だった。

 私がもっとこうしたらいいのにな、と思っているのは、今、老朽化が問題になっている団地は、とても住みやすくて、タワマンにはない良さがたくさんある。そういう住宅をどう残していくか、ということではなく、どうして、こういう団地が昭和初期にいっぱい建てられたのか、それはどういうメリットをもたらしたのか、どこが悪かったのか、をもっと考えて、日本という人口密度が高い国で、どういう風に他人と過ごしていったらいいのか、もっと考えるべきだ。

そういう議論がもっと活発になると良い。


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?