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お年寄りと若者の関係ーー『ショウコの微笑』を読んで

 チェ・ウニョン著 吉川凪監修 クオン 2018年出版 

 クオン社という出版社から、新しい韓国の文学シリーズで出ているので、とりあえず、いろんなのを読んでみようと思って借りてみた。

 この小説は、日本人の女の子との交流がテーマ。ショウコは、韓国に中学か高校の時に留学した日本人女性の名前。そのホストファミリーだった女の子が語り手なんだが、このお話も、日本人の子が大きくなって、精神的におかしくなっちゃう話でもあり、そういう病む話多いな、とちょっと思った。しかし、家族の話でもあり、韓国の家族、とくにこの話は、おじいちゃんの話でもあるが、そういうのは、ちょっとほろっとするというか、心が温まるというかあまり、こういう気持ちに最近ならないから、おじいちゃんを慕う孫の描写とか読んでると、結構泣ける。

 韓国の家族という捉え方は日本とは似ているけど違っているような感じを受ける。日本より家族の絆が強いと感じるときもあるし、目上の人を敬う儒教の世界も関係しているのかな、と思ったりもする。かつての日本もそうだったんだろうか、と思うと同時に、現代の韓国も少子化問題などを抱えているから、実際今の若者はどう考えているんだろうと思う。日本も韓国も、「家族」に呪縛されていることは共通点のようだが、韓国の方が若者がおじいちゃんとか年配の人に対する愛情を抱いているようにも思う。日本は、そういうお年寄りに対して若者がうざったいばっかりで、照れ隠しでもなく、本気で嫌がっている表現しかしない。どういうことなんだろう。

 韓国からみた日本というのを考える。そういう本を読んで、私は日本からみた韓国を考えているが、日本人が書いた小説で、こういうふうに韓国を隣国としてとらえて書いてる話ってあんまりないように思う。

 似ているようで、違う。同じアジアなのに、仲が悪い。共通点がいっぱいあるのに気が付いていないのはどちらで、何が違って、何が同じなのか、考えるのはなかなか難しいが、国のレベルではなく、個人的な問題で考えたら、案外分かりやすいのではないかと思う。こういう小説を読むことは第一歩になるし、若いうちに読んでおけば、意識せずに韓国がお隣りの国でこういう文学を生みだすところなんだ、と身体にしみこむのではないかと私は思う。


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