マガジンのカバー画像

お気に入り

85
気に入った他の方のノート
運営しているクリエイター

#小説

ダメになる会話「剣豪二人」

剣豪1「後をつけておる者、すでに気取られておるぞ。出て参られい。」

剣豪2「さすがは名のある剣豪。こうも簡単に気づかれてしまうとは
   私も焼きがまわりましたな。」

剣豪1「うむ、というか、どれだけ気配を消していても、真っ赤な羽織に
    黄色のマフラー、鈴のついた下駄で笛を吹きながらついて
    こられたら、気づくとかいう以前の問題でござる。」

剣豪2「ふふふ、さすがに笛はまずかった

もっとみる

愛をこめて、サラダボウルを

結婚式の前夜祭。各地の領主たちが集い、女たちは着飾り、男たちは酒に酔う。天井できらめくシャンデリアが作り出す光の濃淡が、一方では陽気な一座の顔に明るみをもたらし、一方では背後に影をつくる。食堂の中で私は配膳をしながら愛しいあなたを探す。必ずいるはずだ。この一座はあなたのためのものなのだから。

見つけた。あなたの姿は10年以上もお見かけすることがありませんでしたが、それでもすぐにわかりました。

もっとみる

ショートショート「再会」

男はその日、牢から出た。

男は長い間、牢に入っていた。

男の属していた組織の、不祥事の責任をとったのだ。

別に男一人が悪いわけではない。男が責任者だったわけでもない。

だが、無実、なのでもない。

誰かが罰を受けなくてはならなかったのだ。

牢から出た彼を迎える者は、だれもいない。

男一人に罪をかぶせ、多くの人が救われたが

誰も感謝などしなかった。

むしろ、男の存在を汚いもののように

もっとみる