小説家森奈津子の華麗なる事件簿/西澤保彦

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読了日2019/10/28
華麗なる事件簿。
どんなどんでん返しハラハラ極上ミステリーが待っているのだろう。


さて読むか。
そう本書を手に取ったとき、私は忘れていた。

この本の作者は、腕貫探偵シリーズでも有名な西澤保彦。
そして主人公は西澤保彦先生が敬愛する、森奈津子。

フツーのミステリーであるはずなかった。
かといって、フツーのSFになるわけでもなかった。

短編集なので、各話は別な話となる。

まずは孤島に囚われた森奈津子。
ここまではフツーのミステリーだった。
フツーのミステリーでいいのだけど。

一人きりで孤島に囚われたまま、たまたま手に入れた休暇を謳歌する奈津子。
孤島の向かい側には似たような孤島があり、
さらに奈津子が過ごす別荘と似たような別荘もあり、
さらに奈津子が一人で別荘にいるように、向こうにも誰かがいる。

そして向こうの孤島で、殺人事件が起きていた。

序盤は男女の愛憎絡みの様相だった。
しかし主人公が森奈津子なので、そう簡単に説明できるものではない。

森奈津子が関わった時点で、事件が帯びる色味は通常と全く異なっているのだ。

続く2本目。
この話の時点でやや「森奈津子いらなくないか?」という声があがる(私の中で)。
人生に悲観した男が宇宙人に遭遇し、彼を食事で買収して願いを叶えてもらうというもの。

私は目下、生殖器サマがもたらしてくださる痛みに悶絶する日々を送っているくらいには根っからの女で、
いつかグレーのスウェット姿の恋人(中村倫也に似ているとなお良し)が目元をこすりながら「おかえり」と言ってくれる未来を妄想するくらいにはメンタルも女なので、

まあ、男性がセックスにかける夢を見る気持ちというのがまったくわからない。

だからこの話の主人公(もはや森奈津子が途中から消えてしまうのだ)、蜷原の死ぬまでにやりたい(ヤリたい)気持ちがまったくわからない。

ま っ た く わ か ら な い 。

だからこそおもしろいって思うんだけどね。
男の人って年中こんなこと考えてるのかなーって考えたらさ。
まあ女の自己防衛本能が働きますわ。

夜道にライトバンが停車していたら避けて通るのが女心、
というネットでの意見に、
「え?女ってなんで被害妄想そんなに激しいの?ww」みたいな男性の意見が散見されるのだけど、
まあこういう話を読めば……いや読まなくても男性たちならわかってくれよ、と思うんだけどね。
「タイプじゃない女なんて襲わねーよww」って話じゃないんだよ。
選り好み出来る男性たちしかいないわけじゃないでしょ?
選り好み出来ない男性たちとなったら手当り次第になるでしょ?

ならない?

その心を大事にしてくれ←

ところで今しがたニュースで、
国立大の特任教授(68歳)が20代の女性にストーカーした容疑で捕まったってやってたんだけど、

恋ってホント、人を惑わすよね……。

私も惑ったよ。
かつてな。
かつて。

そんな話が3話目、うらがえし。

これは読んでほしい。
西澤保彦にやられた、って心底思う。
失礼、西澤保彦先生であります。

途中に名前が出てきたのに気にも止めなかった自分とか、タコ殴りにしたい。
痛いから未来の自分だとしても殴られたくはないけど。

くう〜ってなる。
川平慈英テイストに。

4話目の、キス。
ここはガチめのSFだった。
ガチムチ系のアニキが出てくるわけではない(なんせ主人公が森奈津子だからね)。
ここでの森奈津子の立ち位置はなかなか不思議だった。
なんだか能力者じみてる。
主人公感は極薄の0.18ミリもない(森奈津子だけに)。

ラストはちょっとホッコリ。
カワイイ。
あっ、ラブストーリーだった……。

トランスジェンダーの下りで混乱したのは事実だけど、
それだけ自分がその方面に知識がテキトーにしかなかったんだなって反省させられた。
ちゃんと勉強しよう。

終章、舞踏会の夜。
謎のシロクマ宇宙人が書く、SF短編ストーリー。
SFは短編がいいね。
見た目から中身までいささかイラつきをくれるシロクマ宇宙人のくせに、
意外と本格的なSF短編を書くのだ。
作家志望な身としては、シロクマの片手っこをつかんでどこかに放りなげたい気分にも駆られる。

出てくる名前の既視感で、
「まさか!」
という思いになるのだけれど、
最後までまさかの投げられっぱなし。

って、そう言われていたっけ。

シロクマ宇宙人のくせに、やるじゃないか。

というか、
シロクマ宇宙人ってなんだよ。

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