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【講義のお知らせ】メイヤスー『有限性の後で』を解説するレクチャーイベント

The Five Books主催のレクチャーイベントで、カンタン・メイヤスー『有限性の後で』について講義をします!

参加者の方には毎週少しずつテクストを読んできてもらい、ぼくがじっくりと解説をする、という形式です。本は買ったけど途中で挫折したという方、名前は聞いたことあるけどまだ読んではいないという方。この機会にぜひご参加ください。いっしょに読んでいきましょう!

以下、The Five Booksのサイトから詳細を転載いたします。

日時

9月1日(木)〜9月29日(木)の毎週木曜20時〜21時半(全5回)

講義内容

本講義では、カンタン・メイヤスーの『有限性の後で──偶然性の必然性についての試論』を取り上げます。本書は「21世紀における新たな哲学的古典」と呼びうるような著作です。

2000年代後半から2010年代にかけて、現代思想の分野では「実在論」がトレンドになりました。そして、その中心には「思弁的実在論」という潮流がありました。この潮流を生み出すきっかけとなったのが、まさに本書『有限性の後で』です。

メイヤスーは、本書で「相関主義」という概念を提示します。思考と存在はつねにすでに相関していて、思考されていない存在をとらえることはけっしてできない──このような考え方を、メイヤスーは相関主義と呼びます。もし仮に、思考との相関から外れた存在そのものをとらえたとしても、その瞬間に、存在は「思考されたもの」へと変質してしまい、思考との相関に巻き込まれてしまうはずです。こうした強力な循環構造のゆえに、相関主義にはかなりの説得力があります。メイヤスーの見立てによれば、カント以降のおおくの近現代哲学において、相関主義が前提とされているのです。

本書の目的は、相関主義の外へ抜け出すことにあります。わたしたちは、いまや思考と存在の相関から成る「透明な檻」に閉じ込められているのであって、その外に広がる存在そのものの領域へと踏み出すことを制限されています。メイヤスーは、相関主義という限界を突破して、わたしたちとは無関係に広がる存在そのもの領域、いわば「大いなる外部」へと飛び立つことを試みます。本書で展開されるこの大胆な試みに共鳴するかたちで誕生したのが、先ほど紹介した「思弁的実在論」です。

本講義では、余裕をもって、全5回の講義で第3章までを読みたいと思います。全体の2/3ぐらいです。第3章でメイヤスー自身の哲学的原理が提示されるので、重要なところまではしっかりと理解することができます。本講義に参加し、じっくりとテクストに向きあうことで、以下の効能が得られるはずです。

【本講義の効能①】 20世紀哲学の洗練された考え方が身につく。

本書には、「現代哲学に精通した人ならこう考えるはず」といういわば「現代哲学あるある」が随所に登場します。この「現代哲学あるある」の根幹にあるのが相関主義です。それは、洗練された哲学的発想の極致のようなものだと言えます。メイヤスーは、相関主義者 vs. 実在論者という仮想の論争を描くことによって、 相関主義の特徴を徐々にあぶり出していきます。本書にとって相関主義は乗り越えの対象ですが、まずはそれをしっかりと理解することが重要になります。本講義に参加することによって、20世紀哲学の洗練された発想が身につくようになるはずです。

【本講義の効能②】 哲学史上最大強度の「偶然性」概念を体感。

本書第3章では、「絶対的偶然性」のテーゼが提示されます。メイヤスーは、あらゆるものが偶然的であると主張します。あらゆるものは、現にこのように存在していることの必然的な理由を欠いている。それゆえ、とつじょまったくべつのあり方に変化してしまうかもしれない。メイヤスーはこのように考えます。彼にしたがえば、物体のあり方をつかさどる自然法則や、思考の土台となっている論理法則でさえも、まったく別様になりうるのです。このあまりに破壊的で解放的な偶然性概念を体感してみてください。

本書はそこそこ難解な本ですが、論証がしっかりとしているので、ゆっくりと論点を押さえながら読みすすめていけば、かならず理解することができます。ご参加お待ちしています!

各講義の内容

【第1回】 09月01日(木) 20:00-21:30

『有限性の後で』を読むための導入的な講義をします。思弁的実在論を中心に、現代哲学における実在論トレンドについて概観したいと思います。また、メイヤスーのその他重要論文についても紹介します。

【第2回】 09月08日(木) 20:00-21:30

『有限性の後で』第1章を読みます。相関主義の定義がなされ、その分析が展開される箇所です。相関主義は、生命誕生以前の出来事(地球の形成など)にかんする科学的言明をどのように説明するのか。この点をめぐって、鮮やかな分析が展開されます。

【第3回】 09月15日(木) 20:00-21:30

第2章を読みます。引き続き、相関主義の分析が展開されていく箇所です。相関主義には「弱い相関主義」と「強い相関主義」があるということ、そして、現代の強い相関主義は「信仰主義」という問題を抱えているということがあきらかにされます。なぜ相関主義を乗り越える必要があるのか、その理由が示された箇所です。

【第4回】 09月22日(木) 20:00-21:30

第3章の前半(110頁まで)を読みます。相関の外部へと抜け出す論証が展開され、存在そのもののあり方として偶然性が提示される箇所です。本書のなかでも、とくに刺激的な箇所だと言えます。

【第5回】 09月29日(木) 20:00-21:30

第3章の後半を読みます。絶対的偶然性を根本原理とし、そのカオス的な力を限定することによって、無矛盾な事物の存在を引き出すということが目指された箇所です。カオス的な力が限定されることによって、そこから科学的言明に寄与するような物自体の概念が出てくるという、少し奇妙な議論が展開されます。

講師からのメッセージ

現代哲学の研究をしている、飯盛元章(いいもり・もとあき)と申します。

わたしは「断絶」をキーワードに研究しています。断絶とは、こちらとあちらで関係がスパッと途切れていることを意味します。その途切れ具合は、強ければ強いほど良いです。強い断絶は、その彼方を不可視の闇にしてしまいます。強い断絶のむこう側は、いかなる想像力によっても見通すことのできない高密度の闇だと言えます。

メイヤスーの絶対的偶然性は、わたしの言葉で言えば、通時的(時間的)な断絶をもたらす力です。メイヤスーにしたがえば、この世界はあるときとつぜんまったく別様になるかもしれない。自然法則も論理法則も異なる、想像不可能なまったく別様な世界の到来可能性。それは、わたしたちが住むこの世界そのものが、なんの理由もなくとつぜん異世界になってしまうような可能性です。絶対的偶然性は、このようにひじょうに強い通時的断絶をもたらしうるのだと言えます。

でも、「そもそもなぜ断絶なんてことを考えるのか?」と疑問に思われるかもしれません。それは、ただたんにワクワクして楽しいからです。哲学は、日常的な生に退屈した人に、最高度の知的エンターテインメントを提供してくれます。哲学はエンタメです。なんの意味もないこと、もっと言えばあらゆる意味が破綻した領域へと思考を誘い込み、思考をビリビリと痺れさせてくれるのが哲学です。ぜひ哲学的エンタメにどっぷりとはまり込んでみてください。

参加料金

7800円 (1560円/講義×5回)

5回分の料金なので若干お高めですが、Slackでの質問対応なども含まれていてお得な講義だと思います!

申し込みページ(Peatix)

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研究をしながら、分かりやすい記事をすこしずつ書いていきたいと思います。サポートしていただけると、うれしいです!