冷静に 手際よく 愛を込め丁寧になぞる。

たったひとつの、例えば

衝動ではなく
感傷ではなく
同情ではなく

ある種の欲望だとする。

あぁ、だからと言って...
ヒステリア。
ウテルスの覚醒。

彼女のフォルムといえば、

十分な筋肉と脂肪が骨の上にのっかり、
胸は決して大きくなく乳房が斜め上をゆき、
ふくよかというよりはロマンスグレー。

あぁ、でも..
メープル。
ウテルスの疼き。

彼女の視線といえば、

小さな羽虫を追うかのように黒目を泳がせ、
ある興奮と幸福が静まった後の放心の身振り、
演じれば口に含むいっぱいのアイディンティティ。

欲望というより
愛情というより
希求というより

ある種の労働だとする。

あぁ、それから...
ブラッドレッド。
シンボルの悪戯。

彼女の奇妙な冒険は途中、

膝のお皿の切り傷の跡、
腕にある火傷を知っていても
あなたの背中のほくろは全部で七つ、
つなげればオリオン座になること知ってる？

あなたが知らないことでも
わたしが知っていることがある。

冷静に 技術の駆使 効率的に含む。

口いっぱいに。

たったひとつの、純粋苦悩たとえば、

唇いっぱいに満たすアイディンティティ
演じていたはずなのに愛情と欲望に溺れてく。

あなたの視線がどよめきはじめたモメント。
あなたのアイディンティティを無心の舌と唇で、
めいっぱいに含み、星までゆらす。
あなたの底光に潤う瞳をあいする。

あなたが分からないことでも
わたしが分かることがある。

労働だとしても
債務だとしても
甘ったれた退廃だとしても

あぁ、だからといって..

わたし、
あなたのうっとりとした瞳を見るの。


好きなのよ。

もっと愛していいですか。

わたしの指がオリオン座をそっと唇でなぞる時
あなたの顔はどんな顔してる？

あなたにもわたしにも
見えなくて知らないことがある。

月の女神しか知らない顔、
あなたは持っている。