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小咄「ルイ辞書」

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「小さな口から出まかせ」 本文は140字以内に収める努力をしています。
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小咄「ルイ辞書」

小咄「ルイ辞書」

【病苦】【ジョーク】冗談ではない。死に直面して先にあるのは身体的な苦しみだけ。それなのにどうして生きねばならぬ。その先を生きることで何が得られるというのか。その重みが心の苦しみとなり二重苦となる。しかし人は生きる。必死で生き様と死に様を見せて世を去る。それが残される者の心に残る。そこに価値はあるか。

小さな口から出まかせ「ルイ辞書」

小咄「ルイ辞書」

小咄「ルイ辞書」

【献身】【賢人】人は元来、自分のために動くもの。成したことの果実を当てにし、それが原動力となりことを為す。これが社会への貢献の形である。しかしその果実を当てにしない貢献というのがある。己の欲を捨てことを為し名を残さず歴史にも現れない。実はこのような人物によって今が支えられているのかもしれない。

ルイ辞書

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【東尋坊】【用心棒】東尋坊は自殺の名所として知られる景勝地である。最期は美しい所でという心理の表れだろう。一方、自らを守るために警護を雇う者もある。自分が思う己とはかくも様々である。側にいて思う。どうして悪どい奴が警護を付け、美しい人が自ら命を断つのか。いや精神は自由なのだ。自分の命は自分で決める。

ルイ辞書

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【天神】【エンジン】東風吹かば匂い起こせよ梅の花主なしとて春を忘るな

菅原道真の歌である。天神さんは各地にあって合格祈願のため信仰を集める。しかし彼自身は才溢れるが故に都を追われ、都を夢見て亡くなっている。突出すると生きにくい。そこそこがいいのである。受験生に火を付けるにはそこそこの設定が必要である。

小咄「ルイ辞書」

小咄「ルイ辞書」

【信条】【真薯】日本料理のひとつ、真薯(しんじょ)は蟹や海老、白身魚などをよくあたり、山芋と卵白を混ぜて丸(がん)にし、蒸して椀物の種にし、炊いたり揚げたりして一品として供される。よくあたることでその口当たりは滑らかで喉越しもよくなる。しかし食材の風味も損なわないようにしなければならない。そこに料理人の矜持があるのである。

小咄「ルイ辞書」

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【饒舌】【小説】ドキュメンタリが事実を表すものである一方、小説というフィクションを描く世界がある。つまりは架空の話、実在しない事柄を表現するのである。小説家はいかにもそれが事実としてそこにあるかのように描く。いかに上手く嘘をつくかを競うのである。無垢な子どもには決してその事実を語ってはならない。

小さな口から出まかせ「類似ショ」

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【領収書】【常習者】確定申告の時期になると私は知人に領収書を書いてもらうのを常としている。もちろん費用として計上するためである。お陰で毎年50万円以上の納税を回避できた。ある日、災厄は訪れた。査察が入ったのである。しかし脱税発覚は免れた。知人が死亡していたからだ。私の容疑は脱税から殺人へと変わった。

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【鉄砲】【末法】【説法】流浪の愚僧は人を殺(あや)めんとする青年を制した。青年は言う。ここでやらなくても他でする、と。愚僧は人を殺める愚かしさを切々と説くが青年の耳には届かない。人を撃ち殺すことを使命と思う青年の心は頑(かたく)なだった。愚僧は青年の行く末を慮(おもんばか)ってそれを取り上げると思わず引鉄を引いた。けだし世も末である。

小さな口から出まかせ「類似ショ」

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【雁行】【観光】【難航】雁行というこの逆V型は空気抵抗が最も小さい飛行法だという。頂点で受けた風はその線に沿って流れる。それは水中でも確認できる。また人が観光する際も有効である。頂点にいるツアコンの声はこの線に沿って流れ、前方の視界を遮ることもない。しかし観光地においてこの陣形は迷惑極まりないのである。

小さな口から出まかせ「類似ショ」

小咄「ルイ辞書」

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【盗難】【遭難】人はいろんな厄介ごとに遭遇する。備えあれば、とばかりにいろんなモノを抱え込む。いざという時に役立つのは確かだがしかしモノはモノ、自分のモノと思い込んでいたモノがいつの間にか自分の手を離れてしまっているということもある。しかもモノに拘るあまり自分を見失ってしまうこともあるのである。

小さな口から出まかせ「類似ショ」

小咄「ルイ辞書」

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【まほろば】【幻】「大和しうるわし」の歌は大和の国はまほろばだと言う。まほろばとは「宝」ということだ。山の多い大和の国では青い山々が幾重にも重なり、その美観を作り上げている。間違いなくそれは美しい国のまほろばである。山はどこまでも青く美しい。しかしその裏山では「ファー」という声が響き渡るのである。

小さな口から出まかせ「類似ショ」

小咄「ルイ辞書」

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【和菓子屋】【アカシア】和菓子職人には芸術家という自負がある。刹那的芸術である。日々の自然の観察とデフォルメで和菓子を創り上げる。その優雅に人は惹かれ、それを口にしてその一生を終えさせる。

アカシアはインディアンの薔薇である。これによって愛の告白をするという。花言葉は「秘密の恋」そして「優雅」である。

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【陽気】【容器】良し悪しではない。暗い気分というのは沈み滞る。暗い気質の男にはそれを受け止める箱がある。一方、明るい気分というのは浮き上がり溢れ出す。よって女にはそれを受け止める蓋がある。しかしこれは男と女に限ったことではない。良好な関係というのはこうして築かれる。

あとは大きさの問題なのである。

小咄「ルイ辞書」

【同志】【透視】志を同じくして長年に亘る付き合いがある彼とは妻より長い時間を過ごしているかもしれない。よく夜を徹して話をした。彼とは分かり合えるものだと思っている。私はこの頃愛人ができた。そのせいか彼とは少し疎遠になった。しかし彼は何も言わない。

家に帰ると妻が言った。「あなた浮気してるでしょう」

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