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書評「モルグ街の殺人」

著者:エドガー・アラン・ポー 1841年発表 短編

「モルグ街の殺人」を読みました。で、感想を書いてみようと思います。

先日、書店をふらふらしていると、この小説が目に入りました。
実はこの小説、ミステリー界では結構有名な本なのです。
なぜなら「世界初の推理小説」と言われているからです。

自分は「中の上」くらいのミステリー好きで、これまで古今東西のミステリー小説を読んできました。
この作品の存在は知っていましたが、そういえば読んだことがない。。。
推理小説のオリジンなわけだし、「この際ちゃんと読んでみるか」と購入してみました。

スマートな知的ゲーム

読む前は、19世紀の作品だし、著者のエドガー・アラン・ポーという人は「江戸川乱歩」のもじりのもとになった人だし、タイトルも雰囲気あるし、荒唐無稽でおどろおどろしい感じなのかなと勝手に思っていました。

でも実際読んでみると、少し猟奇的な描写はあるものの、それはそれは理知的でスマートな作品でした。

パリを舞台にした密室殺人ものですが、探偵っぽい人と語り手が出てきて、モルグ街で起きた殺人事件の推理を始めます。
意外な犯人なのだけど、途中でその情報がないので、今の推理小説の見方(誰が犯人なのか当てる楽しみ)からするとアンフェアになるのかもしれません。

ただ作者としては、そこはあんまり考えてなかったんじゃないかなあ。(まあ最初の作品ですしね)

この作品の特徴としては、推理のプロセスをしっかり書いています。
探偵たちが殺人現場で得た情報や目撃者の証言から、とても論理的に推理を展開していきます。
つまり「Aという事実からBが導き出され、よってCが犯人だ」といった、ある意味数学的要素を小説のなかに持ち込みたかったんじゃないかなという気がします。文章を使った知的ゲームですよね。

この短編が発表された1841年って、日本で言えばまだ江戸時代。当時の読者にとって、かなり新しい読書体験だったんじゃないかなと思います。

最後に、読んでいてハッとした描写をご紹介します。

「僕に向かって話をしていたが、その声は決して大声ではないものの、どこか遠くにいる人に向かって話すときの抑揚がついており、見つめているのはただ壁ばかりだった。」

本書より

これは探偵役の人が推理を披露するときの描写です。
これまで多種多様な推理小説を読んできましたが、探偵役の人って、形はそれぞれあるけれど、推理を披露するときまさしくこんな感じなんだよなあ。
探偵キャラクターの本質をつく描写に思わず身震いしました。

※画像は購入した文庫本を撮影しました。

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