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想像以上に魅了されてしまった英文学 ジェーン・オースティンの世界

先日、動画配信サービスから映画「EMMAエマ」を見た。2020年2月半ば頃からイギリスで公開されていた映画だ。地下鉄の構内で、黄色のロングドレスを着た女性が一人立っている看板を何度も目にしていたが、その頃私はただその看板の前を通り過ぎるだけで、特に何も感じてはいなかった。後に、こんなにジェーンオースティンを敬慕する自分がいるとは知らずに。

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昨年ロックダウンが始まってから時間ができたため、これまできちんと向き合っていなかった「イギリス」について、勉強することにした。地理・歴史・名所そしてイギリス文学。仕事で知り合った年配の日本人女性が、ロンドンに住むきっかけとなったのは、学生の頃イギリス文学に惹かれたことだと語っていた。確かにイギリスには、著名な文学作品が多くある。しかし、私がそれまでに親しんだイギリス文学といえば、「不思議の国のアリス」「ピーターラビット」そして「ハリーポッター」くらいだった。今更ながら、是非ともイギリス文学に触れてみなくてはと思った。

インターネットなどでイギリスの名所・見どころが紹介されている写真なども好んで見ていたのだが、魅力的なイギリスの館を見つけた。「チャッツワース・ハウスChatsworth House」。イギリス中部地方のピークディストリクト国立公園内にあり、ジェーン・オースティンの「高慢と偏見 Pride and Prejudice」のロケ地として使われたという。コリン・ファース演じるミスターダーシーの家なのだ。これはとても気になるではないか。

ちょうどその時、日本にいる親友から、今年の誕生日プレゼント、何か欲しいものある? というとてもありがたいメッセージをいただいた。それでは、と私は「高慢と偏見」をリクエストした。

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本を読み始めて、あ、これは恋愛小説なんだと知った。若い頃は恋愛小説を読むのが楽しく、ドキドキしながら読んでいたものだが、結婚して、すっかり自分のパートナーが落ち着いてしまうと、恋愛小説にはあまり興味がなくなっていた。しかし、ジェーン・オースティンの世界はただの恋愛小説ではなかった。観察力が鋭く、登場人物が高慢なように思えて、でも実際人間というのはそもそも偏見から人間関係をこじらしているのだと思える展開。上下巻に渡る長編小説だが、読み終わってしまうのがもったいないと思えるほど、もっともっとその世界にはまっていたいと思った。とにかくすっかり魅了されてしまったのだ。

本を読み終わると、今度は映像でこの世界を味わいたい。「プライド&プレジュディス」は、有名な作品が二本ある。一つは、1995年にBBCで放映されたドラマ。エピソード6まであり、ダーシーの役をコリン・ファースが演じている。もう一つは、2005年に放映された映画。主人公の女性エリザベス役が、キーラ・ナイトレイ。どちらも好きな俳優さん。どちらもも見たい。

まずは、やはりBBCから。オープニングで流れる音楽がこれまた素敵。18世紀末のイギリス田舎町の世界をエレガントに表している。ミスターダーシーも小説のイメージにピッタリ。6話まであるため、小説のストーリーが忠実に再現されており、6話全て堪能した。

それから、次は映画。こちらも良かった。でもやはり、短すぎて物足りない。キーラ・ナイトレイは相変わらず美しいが、イメージとしては、BBCのドラマで演じたジェニファー・イーリーの方がしっくりくる。

これが私のジェーン・オースティンへの傾倒の始まりだった。


今年に入って、ジェーン・オースティンが晩年の8年間を過ごした家がミュージアムになっていることを知った。ホームページを見ると、ミュージアムが閉館中のその時期、バーチャルツアーをやっているとの案内が。早速参加してみた。

ジェーン・オースティン記念館Jane Austen's Houseを案内してくれた二人の女性は、当然ながらジェーン・オースティンのことが大好きなご様子。彼女が過ごした部屋をバーチャルで紹介してくれる。途中チャットで質問が入ると、それにも丁寧に対応。そして、終了予定時間を過ぎてもまだ質問が続く。私たちはまだ大丈夫、ジェーン・オースティンについて語り合えるなら何時間でも嬉しい、と話し続けてくれた。やはり世界的に有名な作家、彼女のファンはたくさんいる。同じ作家を好む人たちが国を問わず集まるということは、感慨深いものがあった。その場に足を運ぶことができなくても、楽しいひと時を過ごさせてもらった。

そのツアーの中で、「彼女の小説を忠実に再現していると思われる映画はなんだと思いますか?」という質問があった。興味津々で見ていると、お二人の女性の答えは一致していた。「エマ」です。これはもう、「エマ」を見ずにはいられない。

しかし、私は映像を見る前にまず本を読みたい派。やはり日本語で読みたい。そこで、今やすっかり手放せないアイテムとなっているKindleで「エマ」を購入。外国にいながら日本の書籍をたやすく購入して読むことができるKindleは本当にありがたい。

こうして、今度は小説の「エマ」に出会った。「エマ」はイギリス上流階級のお嬢さんが主役の恋愛物語。ジェーン・オースティンの暮らしは、上流階級ではない。しかし、上流階級に属する女性が愛らしく、微笑ましく描かれており、再び惹き込まれていった。今回もまた、誰もが経験してしまいそうな早とちりや思い込みでストーリーが進んでいく。読者側にしてみれば、それって勘違いでしょう、って思えるところもあるのだが、そこがまた面白い。

それからようやく、「エマ」の映画に辿り着いた。映画に登場する主人公は、私が小説で抱いていたイメージよりも幼く描かれており、そうだ、エマは私が思っていたよりも幼いのだ、ということでしっくりきた。ミュージアムの女性が言っていたように、ほぼ小説に忠実なストーリーで、世界観にうっとりした。イギリス上流階級のお屋敷には、ずっと以前から憧憬の想いがあったが、なんと洒落た世界なのか。そして、最後の山場は、映画ではよりコミカルに描かれている。私が大好きなシーンで、私が大好きなセイヨウトチノキの花が満開に咲いていた(タイトル画像に使った写真がセイヨウトチノキ)。すっかり心が奪われてしまった。好きなものが結びつく偶然、幸せを感じた。

私のジェーン・オースティンへの探求はまだまだ始まったばかり。バーチャルツアーで、「ノーサンガーアビー」はジェーン・オースティンの自伝的な作品だと紹介されていた。これも是非とも読まなくては。

私の手元には、ジェーンオースティンゆかりの地を綴った本もある。小説に登場する場所や、オースティン自らが過ごした場所などが紹介されている。イギリスで行きたいところがどんどん増え、読みたい小説もどんどん増えていく。

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最後に、映画「エマ」ではもう一つ嬉しい偶然があった。エマのお父さん役をやっている俳優さん、ビル・ナイ氏。この方、私がこれまで見た好きな映画の中で、登場するのが3回目だった。「ラブ・アクチュアリー」「マイブックショップ」そして、今回の「エマ」。またいつかどこかの映画でお会いできるだろうか。


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