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✓エミリの小さな包丁

▽あらすじ
恋人に騙され、仕事もお金も居場所さえも
失った25歳のエミリ。
15年ぶりに再会した祖父の家に
逃げ込んだものの、寂れた田舎の
海辺の暮らしになじめない。
そんな傷だらけのエミリの心を
救ったのは祖父の手料理と
町の人々の優しだった。
カサゴの味噌汁、サバの炊かず飯。
家族と食卓を囲むという
ふつうの幸せに触れるうちに、
エミリにも小さな変化が起こり始め…

▽印象に残ったフレーズ

そもそも常識なんてものは、
誰かが勝手に作り出した
「幻の縄」のようなものなのかも知れない。
わたしたち凡人は、目に見えないその縄に、
自由な思考と心をがんじがらめに
縛られていることに気が付かぬまま、
漠然と息苦しい日々を
過ごしているのではないだろうか。

誰かの噂話や悪口。会社への愚痴。
社会への不満。つまらない虚栄や、
くだらない嘘――。
沙耶の毒にあてられると、
わたしの内側を知らず知らず
救っていた目に見えない悪性ウィルス
のようなものが一気に増殖して、
その毒に陶酔したようになる。
そして、寝て起きた翌朝、
ふと冷静になった自分は、
二日酔いみたいに胸が悪くなり、
布団から出たくなくなる。
理由はもちろん自己嫌悪だ。

「別にいやなことがあってもいいじゃん。
そんなのふつうじゃんって。
もっと言えば、落ち込んでもいいじゃん、
泣いてもいいじゃん。
でも、身の回りには、ちゃんと
いいこともあるじゃんって、
そう思えるようになってきた感じかな。
つらいときは、身の回りの
小さな幸せを眺めて、いい気分を
味わっていればいいんだ。」 

「自分の存在価値と、自分の人生の価値は、
他人に判断させちゃだめだよ。」

「出来損ないも含めて、世の中の人間は
全てが先生だからな。」

「エミリを思いのままに動かせる万能な存在は、
唯一、エミリ自身。エミリの人生を自由自在に
創造していけるのも、エミリ本人しかいない。」

▽感想
エミリの結構波乱万丈な都会暮らし。
それにハマってしまう周りの環境と
エミリ自身の性格もあるのかなあと
読んでいて思った。
恋しやすい体質なんだろうか・・・?

とにかく、おじいちゃんの料理が美味しそう。
独居であそこまで料理が作れたら
毎日楽しいだろうなあ。
しかも新鮮な魚が必ずある!いいな!

おじいちゃんが、遠回りだけど
エミリをなんとか元気づけようとして
良いことを言って、エミリへの元気を
そっと置いていく感じ。

おじいちゃん、どうか長生きしてくれ~~

エミリの小さな包丁/森沢明夫/角川文庫




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