詩 「夜のために」
夜が暗いのは
見えないものを見せるため
夜に月が浮かぶのは
遠い記憶を照らすため
夜が沈黙するのは
小さな祈りに耳を傾けるため
夜が長いのは
ふたりを繋ぎ止めるため
夜が深いのは
ひとりの海に潜るため
夜の森が揺れるのは
風の寝息を受け止めるため
夜に明かりがともるのは
光を集めてやさしい夜をつくるため
夜が夜のうちに死ぬのは
朝の木漏れ日を浴びる死体になるため
朝がいつも新しいのは
夜が死んでくれるから
夜のために
夜にだけ咲く花を摘み
今夜 あなたにあげる
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