古書店はオリバンダーの店でした


小さい頃から魔法の世界への入口に憧れていた。

 ハリーポッターのダイアゴン横丁の入口や、ナルニア物語のクローゼット。はたまた、ふしぎ遊戯の四神天地書など。  

今でも道を歩いていて、ごちゃっとしている雑貨屋さんや本屋さんをみると「もしや……」なんて思いながら、だけど一歩踏み出せず、向こう側の世界へ思いをはせていたりする。

 そんな臆病者の私が、先日人生で初めて「古書店」に足を踏み入れてみた。

初めての古書店へ

 
そこは渋谷から歩いて10分くらいのところにある「totodo(東塔堂)」というお店。ガラス張りで綺麗な店内は、私が想像していた古書店のイメージとはかけ離れていた。  

開店時間の12時ぴったりにお店に着いたのだが、その日はまだ開店しておらず、朝5時からパソコンとカメラが入ったリュックを背負っていた私は、もうヘトヘトでその場に座り込んでしまった。

しばらく待っていたが、スマホの充電が30パーセントになり「帰るかな」と諦めようとしたその時、30代くらいだろうか、メガネをかけた雰囲気のある男性が現れた。 

 「……お待ちですか?」と声をかけられて、ブンブンと頷く。 

 店主さんの背中を追って、お店の扉を触った瞬間、緊張で少し震えた。

この感覚前にもあったな、と思い出したのは、鈴木心さんのカフェに入った時と同じものだった。 

写真をみて、真似て、鍛える

 というのも、今回この古書店に来たのは、写真をもっと知るためにどうすればいいか悩んでいたところ、心さんからこんなアドバイスをもらったからだった。

 「強いていうなら神保町に溢れる先輩たちの良質な写真集(とくに高価なものは見る価値があります)をたくさんみて、たくさん真似て(完全コピーするには読解力が養われます)、鍛えましょう。  

古本屋さんもコミュニケーション、店主を見抜いて、声かけて、本を出してもらいましょう。そしてしっかり購入すること。喜んでくださるし、次に繋がるし、そしてなによりいつでも自分の家で写真集を見れる。」

 このメッセージを見た時にこれだ!と思い、「今から行ってきます!」と言ってすぐにこのお店を訪ねたのだ。


古書店でのコミュニケーション

 
しばらく店内のアートに圧倒されながら見てまわるが、「うーん、どれを選んだらいいか分からないぞ……」と、自分で選ぶことを断念して、心さんのアドバイス通り店主に声をかけることにした。

 「写真を始めたばかりで、色々見たいのですがどれがいいかわからなくて……紹介してもらえないですか?」と正直に話してみる。

すると、すぐに「どういう系統がいいですか?」と嫌な顔1つせずに聞いてくれことに、ほっとひと安心。だけど、どんな写真が見たいか自分でもまだ決まってなかったので、少し焦りながら絞り出した結果、 

「ポートレート写真で、色がついているのがいいです」

 と、なんともざっくりとしたものを投げかけをしてしまった。

 だが、そんなことは気にせず「んー……」と考えて、本棚の前に立つ店主。 

 「これなんてどうでしょう?」

と最初に2冊、分厚い写真集を出してくれる。 どちらもポートレート写真ではベーシックな写真集らしく、1つはモノトーンの写真集だった。

「色がついているもの」と最初に伝えたのは、その時はまだモノトーンの写真に抵抗があったから。しかし、そんなの気にならないくらい目がひく写真がたくさんあって、思わず見入ってしまっていた。

1ページ1ページゆっくり見ていると、店主がまた別の2冊を出してくれた。


そして、最後に出してくれた本。


その本を見た瞬間、完全に目が離せなくなっていた。それは、アメリカの写真家・フィリップ=ロルカ・ディコルシアの写真集。

電車の中にサラリーマンが1人、金魚が入った袋を窮屈そうに持っている写真が妙に気になって、値段も見ずに「これにします」と言っていた。

レジで確認すると、その値段なんと10,800円。古本でそんな値段のものを買ったことがなく、急いで財布の中を見てみると入っていたのはちょうど10,000円ぽっきり。冷や汗がたらりと流れた。

おそるおそる聞いた「クレジットカードって……」という問いに返ってきた「いけますよ」という返事に静かに胸をなでおろし、魔法のカードをきった。

 写真集を選ぶ・選ばれる行為

初めて自分で足を運んで見つけた写真集は、宝物のようで、家に帰ってからも何度も読み返している。

古書店で実際に本を紹介してもらうことは、自分がなにを好きかを再認識すると共に、新たな出会いもある。店主さんが選んで出してくれるそのやり取りは、まるでハリーポッターに出てくる杖職人・オリバンダーの店みたいだと思った。

「杖が魔法使いを選ぶのじゃ」とオリバンダーが言うように、この本も今の私を選んでくれたのなら嬉しいな。


 鈴木心さんオススメの古書店4選

心さんに教えてもらった、気合の入っている古書店。

馴染みのなかった場所だったけど、もっと色々な作品を読んで、解読して、自分の写真に繋げていきたいな〜!

◼︎so-books(代々木)

◼︎totodo(渋谷)

◼︎ボヘミアンズギルド(神保町)

◼︎源喜堂(神保町)


皆さんも気になったお店があればぜひ行ってみてください〜!

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