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なぜ今「イノベーション」が重要なのか

今ではすっかり一般的なビジネス用語として定着した「イノベーション」
イノベーションを推進するための新部署や新会社を立ち上げた企業も、少なくないでしょう。
一方で、掴みどころがなく曖昧な概念でもあり、その本質的な意味や重要性があまり理解されていないのも事実です。

そもそもイノベーションとは何なのでしょうか?
なぜ今、イノベーションが求められているのでしょうか?

経済発展におけるイノベーション

経済発展におけるイノベーションの重要性を最初に説いたとされる経済学者のシュンペーターは、景気の循環メカニズムについて、次のように論じています。

まず独創的で英雄的な企業者(アントレプレナー)がイノベーションを起こすと、それによって、企業者は独占的な利潤を得ますが、
それを模倣する者達の出現によって、やがて超過利潤を取れなくなります。
企業者の利潤がゼロになり、市場が均衡状態になると、誰も経済活動にコミットしなくなって経済は停滞してしまいます。
しかし、やがてまた次のイノベーションが起こることで、このサイクルが繰り返されます。

つまり、経済の循環というのは、均衡状態へと向かう自発的で連続的な変化と、均衡状態を撹乱する非連続的な変化(=イノベーション)の繰り返しによって引き起こされるのです。
そして、まさにこのイノベーションこそが経済発展の駆動力であり、
したがって、イノベーションなくして経済の発展はあり得ないということになります。

イノベーションの間隔が短くなるほど、経済の発展スピードも加速度的に上昇していくという現状も、このメカニズムで説明することができますね。


企業活動におけるイノベーション

企業の成長においてもイノベーションが重要であるということは、以前から言われ続けてきました。
しかし、ビジネス環境の変化に伴って、その度合いは大きく変わってきています。

かつては、一つのイノベーションが、ある程度長期に渡って競争優位性を発揮することができました。
しかし、バブルの崩壊後、少子高齢化・人口減少によって、労働生産力は低下しています。
さらに、テクノロジーの急激な進歩・情報社会の発達・新興国の台頭によって、競争が激しく、容易に模倣ができる時代になりました。
その結果、イノベーションのライフサイクルは非常に短くなり、競争優位性を維持するためには、継続的なイノベーションが必要不可欠になっています。

かつては企業が「成長するため」の原動力であったイノベーションですが、
現在では、もはや「生き残るため」の原動力になっているのです。


ユーザーイノベーション

シュンペーターの経済理論によれば、経済循環は、消費者の嗜好の移り変わりよりも、もっぱら生産者の側からもたらされるものでした。
ところが近年では、ユーザー主導のイノベーションも無視できなくなっています。

一般的な取引市場においては、基本的に、売り手が買い手よりも多くの情報を持っています。
しかし、昨今のデジタル・テクノロジーの進化に伴い、消費者のデジタル武装が加速しています。

モバイル端末さえあれば、世界中のあらゆる情報を瞬時に手に入れ、比較できてしまう時代です。
企業が発信する一次情報よりも、ごく普通の消費者が下す評価の方が、市場に大きなインパクトを与えることも珍しくありません。
デジタル空間における企業とユーザー間の情報の非対称性が逆転し、市場の主導権をユーザー側が握り始めているのです。

こうした環境下では、従来の常識にとらわれない組織を構築し、企業が自ら「創造的破壊者」にならなければなりません。

新事業が、既存事業とバッティングすることもあるかもしれません。
既得権益に守られた人達から、強い圧力がかかることもあるでしょう。
しかし、それでも躊躇せず、前進していく勇気が必要になります。

これからの時代を勝ち残っていくためには、真のデジタルトランスフォーメーションを実現し、新たな価値を提供できるかどうかにかかっているのです。