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保育セミナー「初心連続講座2024」に寄せて04〜アートは常に初心を見ている

2024年5月から順次開催される、保育セミナー「初心連続講座2024」。
それに寄せて書いています。

柴田愛子さん「わたしの保育の初心」

初心連続講座、まず初めに紹介したいのは、柴田愛子さん「わたしの保育の初心」です。

昨年の保育セミナー「うたげと初心」では、札幌トモエ幼稚園の宮武大和さんに同じテーマでご講演いただき、大きな反響をいただきました。

このテーマで愛子さん(と、いつも呼んでいるので以降こちらで)にお願いできるのは個人的にとても楽しみですし、愛子さんに語っていただくのはまさにぴったりなテーマだと思ってもいます。

前回のnoteで、保育はスキルからアートへ行き、そのアートに初心というものが関係しているのではないか、という問いを立ててみました。

この問いにある意味、答え続けてくれているのが柴田愛子さんだと思うのです。

保育のアートとは何か

保育のアートとは何か。

アートとは、その時々に生まれるものです。
スキルが、固定化した「わざ」であることと比べると、わかりやすいのではないでしょうか。

たとえば、絵本を読む技術は「スキル」。
でも実際は絵本を読むと言っても、状況はさまざまです。

その状況に応じて、今絵本を読むことが必要であると判断し、絵本を読むことでまた新たな状況を生み出すのが「アート」。

でも、そんな臨機応変なアートはどこから生まれてくるのでしょうか。

これはとても悩ましいのですが、そのアートを行なっている本人に尋ねても、「その時はそう思ったのよね」とか「わからないけど、思いついたのよ」とか、そんなふうにしか語られないでしょう。

ここも比べてみると、単体の技であるスキルは教えることはできます。
しかしアートはその場その場での創造的行為なので、説明もつかず、教えることもできません。
まさに節は教えられるけれども、曲は教えられない。

アートの分解。でも足りないもの

冷静にアートを分解してみると、それは積まれた経験からくる予測の豊かさと、スキルの精妙な調整にあるのではないでしょうか。

アートの域にいる人は、これまでの臨床の経験値から、一つの状況に対して瞬時にいくつもの予測をおそらく同時に立てています。

それとともに、すでに身体はその状況に応答しはじめます。そして応答しながらも、その応答が生み出す結果をいくつも予測し、ミリ単位の微調整をしながらスキルを遂行していきます。

これは本人が意識するよりも前に、身体レベルで起こっているので、アートの説明は「思いついたとしか言えない」という返答になりがちです。本人にとってもアートは早すぎ、言語化されるような判断は遅すぎるのです。

ただ、このようにアートを分解しても何かが足りないような気がしてきました。
なんというか、仏作って魂入れずというか。

アートは常に初心を見ている

アートはとても自由闊達で、一見、無根拠に見えます。
でもとても精妙にその状況に即応しています。

ではアートは単なる思いつきかというと、そうではない。
実は、アートが拠り所にしているのが、初心だと思うのです。
アートは常に初心を見ていると言ってもいい。だから過たない(あやまたない)し、確信がある。

アートが無限に変化する状況に、その時々に即応できるのも、全体的な方向性に過ちがなく、繰り出さすスキルは、ある意味「なんでもいい」ということを知っているからです。

アートの自由闊達な印象はここからきます。常に初心さえ忘れなければ、方法論としては「なんでもいい」ということを、アートは知っている。そういう意味で、アートは常に初心を見ています。

むしろ、初心を体現するためにこそ、アートはあると言ってもいいでしょう。
アートは、子どもと出会った時の驚きという「初心」を今、ここ、に体現するために生まれます。

ではその初心とはどういうものか。ここから反対に問うこともできると思うのです。アートの振る舞いから、初心とはどういうものかがわかってくる。

初心とは初心者の頃に持ち得ていた心持ちですが、アートの中で初心は磨かれ続けるはずです。

保育の初心とは、子どもに出会った時の心の動きですが、アートの中でその驚きは常に新たに、豊かに耕されていきます。

当たり前のことですが、感動というのは新鮮でなければ、腐っていきます。というかそもそも、感動することはできない。

しかし一体、そんなことが可能なのでしょうか。感動を日々新たにするなんてことが。

今回は字数がつきました。次回は、柴田愛子さんがいかに保育の初心を語り続けているか、私目線で語ります。

保育の初心連続講座2024 5月から順次開催です!

保育の初心(しょしん)を問い、確かめる連続講座です。
講師には、溝口義朗さん、岩田恵子さん、そして柴田愛子さん。

個人での講座ごとの単発参加、通し参加、団体参加、いずれも可能です。
詳細、お申し込みはこちら!


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