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【宗教2世ごろごろケア日記05】元カレ教団をめぐる、エトセトラ


 ごろごろしながら宗教2世のケアについて、まったりと考えるシリーズ。

 ちまたの宗教2世のスタンスをぼんやり眺めていると、こんな声や訴えに出くわすことがある。

「教団や組織は、過ちを認めて謝罪してもらいたい」

とか

「教団や組織は、真摯に反省して、再発防止に取り組んでほしい」

みたいな言い方だ。

 もちろん、いちばん過激なのは

「教団や組織は、消えて無くなってしまえ」

というものだが、それはまあ、おいといて。よほど恨みの感情が強いんだろうなあ。


 あ、ちなみに、むこがわさんのスタンスは、上の2つとはちょっと違う。

 もちろん問題のある教義や活動が存在することについては「それはマズい」とは思うものの、基本的には

「相手にしてもムダ」

という気持ちが正直なところ。

 この話は、実は第2回でお話した「覚醒」の考え方の違いに起因する。


 カルト宗教や、カルト的な組織や団体、教団をどのように捉えるかは、人によってずいぶん差がある。それが第2回でお話した「覚醒」の考え方の違いに直結するのだけれど、むこがわさんの場合は

■ カルトや間違っている教えは、そもそも間違っていて悪で偽りなので、詐欺師だ

という考え方をする。極論だけれどもね。

 なので、「悪で偽りで詐欺師」なので、途中で出てきた「消えてなくなってしまえ」派の言いたいことも、よくわかるつもりだ。

 そりゃあ、そんなに問題のある組織団体なので、なくなるのが一番である。

 ところが、ここで大きな問題が出てきて、いちおうリベラルな国では、「信教の自由」というものが保証されているので、

「ワシは悪魔を崇拝するんじゃー!ぐはははは!」

という信仰や教団があっても、基本的には許されることになっている。具体的な犯罪行為を犯せば処罰されるものの、信教の上で悪魔を崇拝し、悪に染まりたくてもべつに構わないのだ。

 そうすると、積極的にその教団や組織をつぶすことよりも、「悪で偽りで詐欺師」なんだから

「関わらないようにしよう、くわばらくわばら」

という立場でも全然構わないことになる。まあ、平凡な一個人としては無難なところであろう。


 さあて、問題なのは、次のパターンだ。

■ カルトや間違っている教えは、ちゃんと正しくなってほしい。組織や教団はちゃんと正してほしい。

という考え方である。

 むこがわさん的には、「そんなもん詐欺師で嘘つきなので、自分たちを正すつもりなんか最初からないし、当てにならんがな」と思うのだけれど、一部の元宗教2世なんかは、上の考え方に固執する場合がある。

 なーんでか。

 それは、すでに「覚醒」のところで述べたように、「失恋」だからである。

 つまり、元カレに「いい人になってほしい」と心から願っているのである。元カレは嘘をついたし、あたしを捨てたりしたけれど、

「謝って、ちゃんとして、真人間になって!」

と思っちゃうのだ。


 これにはいろいろ複雑な心境が関係していると思うので、なかなかシンプルには整理できないが、

■ そんな元カレが好きだったんだもん
■ そんな元カレにも、一時期救われたんだもん
■ そんな元カレにも、いいところがちょっとくらいはあるんだもん
■ そんな元カレに対して、あたしだって情があるんだもん


とか、そりゃまあ、複雑怪奇な恋心があるというものだ。当然、信者からすれば、一時期はそれを信じてすべてを投げ出したのだから、「自分の選択」「自分の責任」「自分の気持ち」は、常に教団や教えに投影されてしまうだろう。

 そんな男を選んだのは、そりゃあ自分自身なのだしね。

 なので、「理想的元カレ」への思慕がなかなか消えないとか、あるいは一周回って、

■ 元カレをめっちゃ恨んでやる!
■ いつまでも責めてやる!
■ キーッ!

みたいになるのだって頷ける。愛憎は紙一重なのだから。

 だって本気で、人生賭ける(献身する)くらい好きだったんだもんね。


 でもそいつ、詐欺師だぜ?

 でもそいつ、たぶんあんたのこと何とも思ってないぜ?

 でもそいつ、あんたを捨てたんだぜ。騙してたんだぜ?

 ほら、いまも別の女の子を騙してすべてを奪おうとしてるんだぜ?

 そりゃまあ、被害者女子同士、徒党を組んでぶっ殺しにいくとかならわかるけど。え?殺さない?警察に突き出すだけ?

 はやくそいつのことなんか忘れて、幸せになろうよ。



 ・・・まあ、むこがわさんが言いたいのは、そういうことなんですよね〜。

 一番大事なのは、そういうことを被害者ときちんと話せる友人でいられることだと思う。それを一人で抱えていたら、やっぱり病んでいくだけだと思うから。

 もちろん、これは「個人ベース」の話であり、今度は公的ベースの話では当然「詐欺師は捕まえろ」ということになる。

 なので、教団や組織に対して、「正してゆく」のではなく、詐欺行為をさせないように仕向けていったり、法に基づいて適切に処罰してゆくような体制は当然望ましいと思っている。そういう声を上げてゆくのも含めて。

 すこーし、みなさんの立場や気持ちが整理されましたでしょうか?


(つづく)







 

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