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【連載小説】聖ポトロの彷徨(第10回)

27日目(再)

夜になって、ようやく地震はひと段落したようだが、たびたび起こる余震に未だ予断を許さない状態が続いている。

地震というものは、地球ではせいぜい数分間程度のものであるはずだ。しかし、今日体験した地震は私が知りうる限り最大の地震であった。

最初に激しく地面が縦揺れし、それからしばらく後に大きな横揺れが起こるのが地震というものの特徴なのだが、今回の地震は一体なんだったのか。いきなり始まり、あまりの激しさに立っていられないほどになり、思わず記録中だったコムログを取り落としてしまった。
コムログはすぐに回収できたが、激しい揺れはさらに続き、ものすごい轟音とともに数メートル先の地面がめりめりと地割れを起こした。私は恐怖に駆られ、地割れの反対方向へ情けない格好で這い進み、その場で揺れが収まるのをじっと待った。
乾燥した大地の只中で、何せ、掴まる物も場所も全く無いのだ。
私にはただただ乾いた地面にはいつくばって、埃まみれになりながら、揺れが収まるのを待つ以外に無かった。

コムログを見たら、地球時間の15分ほどが経過していた。こんな地震を体験したのは初めてだった。
一体何が起こったのか?
大規模な地殻変動だろうか。
私はすぐさま、コムログで周辺の地形走査を行ってみたが、小さな地割れ以外には、さしたる変化は無さそうだった。

それにしても、大きな地震だ。この世界ではこんなことが度々起こっているのだろうか。そしてこういった大地震が、この土地が生物の住めない死の世界に変わってしまったことに関係しているのだろうか。

その後も体に感じられる地震が何度かあったが、最初の揺れほど大きなものは無かった。おそらく余震であろう。私はパニックを治めるためその場に座り込み、そして治まった後もしばらくそのままその場に留まることにした。
いつまた大きな地震が来るかわからないし、月明かりがあるとは言え、暗い夜の闇の中で昼間見たような地割れが起こるととても危険だ。事態が一段落するまで、探索は断念せざるを得まい。

食糧事情も心配だが、別の要因でわざわざ命を落とすのも馬鹿げている。今は、明日には事態が落ち着いていることを、ただただ祈るばかりだ。

【記録終了】



「ニンゲンのトリセツ」著者、リリジャス・クリエイター。京都でちまちま生きているぶよんぶよんのオジサンです。新作の原稿を転載中、長編小説連載中。みんなの投げ銭まってるぜ!(笑)