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悪い流れには、片目をつぶって乗り越えて 【6/5日ハム戦○】

「もうシーラカンスですよ、ええ」と、マウンドに立つカツオさんを見て解説のがんちゃんが言う。

私は毎度、オープン戦や交流戦での日ハムサイドの実況と解説をしぬほど楽しみにしているのだけれど、今日もがんちゃんの解説はキレッキレだった。願わくばゴーンヌ実況とのペアで聞きたかったのだけれど、致し方ない。一応、今日の実況の方も「ワンツースリー」くらいは言ってくれる。ゴーンヌイズムは流れているわけだ。

暴走しがちながんちゃんの解説を、実況が静かに諭す。プロである。ただしゴーンヌ氏の場合、二人で暴走しあった上で謎の調和が生まれるという奇跡の瞬間がある。願わくばあれがまた聴きたい。でも来年の交流戦は神宮になるのかな、あのペアでの中継を見るのはもう少し先になるのだろうか。

さて、「シーラカンスになったカツオ」は、まじでなんなんだというくらいにさっくさくと打者を打ち取っていった。大田泰示さんと並ぶと、カツオさんはますます小さく見える。よくもまあ、こんなにでかい打者に立ち向かっていけるものだ、と、毎度新鮮に感心してしまう。

速い球を投げるのは、生まれ持った才能による部分が大きいだろう。だけど、コントロールを良くする、というのは、ある程度、練習によって磨かれていくものだ。カツオさんはそれを、もう18年もずっと、続けている。「速く走る」ことはもちろん豪快でかっこいいけれど、「長く走る」ことは簡単じゃない、ものすごい偉業だ。

浦添のブルペンで、高梨くん、シミノボくん、じゅりの後ろを、投球練習の終わったカツオさんが通っていくのを見た。

「みんなライバルですから」とカツオさんは言う。自分の息子さんに近いくらいの選手たちを、ライバルだ、と。若い選手たちの隣で投げながら、自分の年齢を思うこともきっとあるだろう。でも、そんな若い選手たちを「ライバル」と呼んで同じ場所に立つカツオさんを、心からかっこいいなと思う。

「若いこと」がそれだけで武器になる世界だ。同じ能力なのであれば、若手を登用する、そういう世界だ。勝負の世界なのだからそれは当たり前だ。でもその世界で、カツオさんは18年間戦い続けている。大きな怪我をすることなく、ずっとまっすぐ自分に向き合って。

カツオさんは言う。

「自分に過保護になりすぎないこと。(体の張りなどに)敏感になりすぎず、ときには鈍感になることも必要。この世界は多少、体の状態が悪くても、結果を残さないと生き残れない」

いつだって100%ではいられない。誰も鉄人じゃない、人間なのだ。だから、身体も、精神状態だって、いい時も悪い時もある。自分に自信がなくなる時だってきっとある。でもそれに、つまり自分自身の状態に、そして周りの雑音に、振り回されすぎちゃいけないのだ。いつだって「そういう時もある」と、良い意味で開き直って、時には片目をつぶり、気にしないふりをして、口笛吹いて、やっていくしかない。

それが、その時は、強がりでも。

5-0で勝った今日だって、流れがいつもいつもこちらにあったわけじゃない。何度もチャンスで併殺に倒れ、向こうのもんすんごい守備にも阻まれた。がんちゃんは「レイザアアアアアアビイイイイイイム!!!」と叫んだ。

でもそこで心折れることなくカツオさんは次のイニングでも好投し、失点を許さず、流れを呼び戻した。その繰り返しだった。

悪い流れにだって、片目をつぶるくらいでちょうどいい。鈍感になるくらいでいい。そうしていればいつかまた、良い流れがやってくる。

みんなみんな、カツオさんに続け。偉大な先輩の背中を追って、いつか思い切って追い越せるように。(でもカツオさんはまだまだ投げていて)



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