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【観劇レポ】ロンドン ミュージカル『Newsies』


ロンドン留学中の女子大生です🇬🇧
先日、ディズニーミュージカル『Newsies』を観劇しました。
豪華で迫力な満点の本作の魅力を綴ります🖋


演目『Newsies』について

アラン・メンケンの音楽による、ディズニーのミュージカルです。
映画は不発だったが舞台で成功したとして有名です。
映画は1992年に公開、ブロードウェイで2012年に初演、トニー賞を受賞。今回がロンドン初演のようです。日本では2020年に予定されていた公演がコロナにより中止となり、翌21年に初演を迎えました。
Disney+でBW版舞台映像が公開されています。

1899年にニューヨークで実際に起きた、新聞配達の少年たち(newsies) によるストライキを基にしたお話です。
Jack Kelly を中心とした少年たちの新聞社 (や権力者) への反抗と、Jackと記者のKatherineの恋愛が同時に描かれます。
ディズニーらしく、超ハッピーエンドです。

'Carrying the Banner' や 'Sant Fe'、'Something to Believe In' に代表されるミュージックナンバーが有名です。舞台俳優さんのカバーアルバムやコンサートでよく登場するので、これらの音楽には馴染みがありました。それ以外も印象的で素敵な音楽ばかりです。流石アラン・メンケンさん。
ダンスも圧巻です。バレエの動きがベースなので指先まで美しく、どの瞬間を切り取っても絵になります。アクロバティックなバク転やスタンツもあります。手足が長く背も高い男性が身体全体を使って行うパフォーマンスは迫力満点で格好良いです。プラス、走って飛んで回って激しいダンスをしているのに全く歌がブレないのもすごいです。
'King of New York' のタップダンスや、上から吊るしたランプに掴まり宙でくるくる回るサーカスのようなパフォーマンスも見所です。
※ダンスはBW版とロンドン版で違いあり


劇場について

Troubadour Wembley Park Theatre、最寄りは Wembley Park 駅です。
ロンドン中心からは少し離れており、電車で20~30分程度。
住宅街ですが、アウトレットやスタジアムも近くにあります。

エントランス外


建物は、骨組みが見えるトタン小屋で無機質な印象。
エントランスを入ってすぐロビーで、物販やバー、クローク、お化粧室があります。クロークがある劇場は意外と珍しいです。
各所に舞台写真やキャストさんの扮装写真が飾ってあります。
プログラムは£10と、こっちではお高めでした。

ロビー


オープンステージ (上・横の枠がなく、島のようなステージ) です。Thrust Stage と同義。客席が舞台を三方からコの字型に囲みます。パフォーマンスは「コ」の縦の線の部分を正面に行われます。
劇場内装と同様、セットも鉄の棒を組んだような無機質なもの。場面に応じて机やシャンデリアが登場しますが、大掛かりなセット転換はありません。

私は今回、上手側の5列目。
舞台が近く、段差もあり見やすかったです。横からにはなりますが、際立った見切れはないです。ただ、私より外側のお席だとキャストさんの後ろ姿を見る時間が多かったりセットで見切れたりしそうでした。


感想 -演出や各人物について

若い男性が沢山の舞台ってエネルギッシュで良いですよね。
特に好きなのが 'The World Will Know' と 'Seize the Day'。「ストライキやってやる!」という意志が溢れ出てて熱くて震えます。口から発せられるスラングだらけの乱暴な文章と、優雅で上品なダンスのギャップがまた魅力的。彼らのオフマイクの絡みも面白いです。
場転の際にセットや小道具を動かす要員で、ステージの端等にアンサンブルさんが何人か割と常に残っています。

UK版の魅力の1つが、場内演出。
そもそもオープンステージは、舞台と客席を完全に分離せず、観客が自分も舞台の世界にいる感覚を味わいやすいステージです。また、1階席で舞台に対して目線がそこまで高くなかったので、ジャンプやアクロバットの高さを実感しやすく、臨場感がありました。
加えて、客席の背後や通路等、箱全体を使って物語が進みます。
後ろから歌声が聴こえてきたり、JackとDaveyとLesがSnyderから逃げる際に目の前の通路を走り抜けたり、実際にnewsiesから新聞がもらえたり。
更に身近でキャストさんの熱量を感じられます✨
そのお陰か、観客の熱量も他の作品に比べて高めな気がしました。

客席後ろの通路
後半にキャストさんが配り歩く新聞🗞


驚いたのが、ブルックリンのnewsies役を女性たちが演っていたこと。
オリジナルは男性です。それに伴い、ブルックリンのnewsiesの歌のパートは全て彼女らが歌います。
以前『Allegiance』のレポで Race-blind なキャスティングの話をしましたが、併せて議題となるのが Gender-blind キャスティング。恋愛が絡むと性別を変えるのは難しそうですが、このように差し支えのない程度で役の性別を変えるのは素敵な取り組みですね。


主人公 Jack は黒人さんが演じます。強い意志や責任感が溢れていて頼り甲斐があり、かつ1人1人と紳士に向き合う丁寧さも持ち合わせる Jack でした。
黒人さんは笑ったときに見える白い歯が際立って素敵です。他方で、舞台では眉や目の表情がわかりにくい気がしました。個人的な印象です。
アルバムやコンサートで単体で聴く 'Santa Fe' は意志を持ってSanta Feへの憧れを語る熱いナンバーという印象ですが、舞台で聴く 'Santa Fe' は残酷で悲痛な現実からの逃避欲を歌う切ないナンバーでした。Jackって、地元愛の強いリーダーに見えて、意外と1人で Santa Fe に行って新しい人生を始めることを夢見る外向き思考な一面がある。ミステリアスな男性です。

片足が不自由で松葉杖を使っているCrutchieは、どんなに素早く動く時も、捌ける時も暗転中も、常に足を引き摺っています。
当然と言えば当然ですが、そんなCrutchieに手を貸す他のnewesiesや、カーテンコールで普通に両足で走っているCrutchie役のキャストさんを見て、プロ意識を改めて感じました。観客の目の触れ得る範囲では何があろうと役に生きる。
普段は辛さや弱さを見せずににこにこしている優しさの塊のCrutchieですが、Refuge(施設)からJackに手紙を書く 'Letter from Te Refuge' で、文章では明るく振る舞うのに実際は涙を流している様子に胸を打たれました。

Katherineは、髪型や衣装、言動がキャラクターを体現しています。
挑戦心や向上心に富み、何かにぶつかることを恐れない強い女性。
同時に、鈴の音のような高い響きの声も彼女の魅力です。
その声が、サバサバした挑発的な台詞を滑らかにする。
通る声質で音程もブレないので、メロディーと台詞が混ざる 'Watch What Happens' の安定感がすごい。他方、Jack役のキャストさんが比較的通りにくい声質で、デュエット曲 'Something to Believe In' では JackがKatherineに負けている感じがしました。


感想 -ストーリーについて

本作、ストーリーはかな〜り簡潔。
悪者がいて(PulitzerとSnyder)、ヒーローがいて(Jack)、サブヒーローがいて(Davey)、ヒーローと恋に落ちるお嬢様 (Katherine) がいる。ヒーローが仲間と協力をして、お嬢様と恋をしながら、悪者を退治するお話。ディズニーぽい。
悪者たちは根っからの悪者で、「この人はこういう背景・事情があるから悪事をするのも仕方ないなあ」みたいな共感の余地は一切ない。観客全員、悪者を憎みヒーローを応援します。Pulitzerの部屋にシャンデリアがあったり、'The Bottom Line' で散髪師がオフィスまで出張していたりと、Pulitzerが新聞値上げ前でも十分裕福な暮らしをしているのが強調されています。
だから、観劇後のもやもやもなく、すっきりしたハッピーな感情で劇場を後にできます。たまにストーリーが簡潔すぎると考える余地がなく物足りなく感じますが、本作ではダンスや歌等注目ポイントが他に沢山なのでお腹いっぱいになりました。
スポットライトが当たるのは、ヒーローを始めとするプリンシパル周り。人柄や想いや背景が見えるのはJackとDavey(&Les)とCrutchieとKatherineで、他のnewsiesは、プリンシパルやお話の主軸をサポートする役回りな気がします。だからと言って見せ所が少ない訳では決してなく、特にダンスパフォーマンスからアンサンブルさんの実力の高さを感じます。アンサンブルの位置付けや役回りは作品によって本当に様々なので、注目すると面白いです。

ロビーの物販とキャストの扮装写真


総じて

音楽は知っており気になっていたが日本では観れなかった本作、ロンドンで観れて大満足です。音楽ももちろん、作品としても大好きになりました!
今回の上演は本年4月までの予定ですが、今後の再演やUKツアー情報に期待です✨
※3/11時点で本年6月まで上演延長されてます!

カーテンコール



※見出し画像は『SeatPlan』公式HPより
https://seatplan.com/london/newsies/


作品情報

Date: 15 January 2023 1:30 PM
Venue: Troubadour Wembley Park Theatre
Cast: 
   Jack Kelly - Michael Ahomka-Lindsay
   Davey - Ryan Kopel
   Crutchie - Matthew Duckett
   Katherine Plumber - Bronté Barbé
   Joseph Pulitzer - Cameron Blakely
Creatives: 
   Produced by Disney
   Music by Alan Menken
   Lyrics by Jack Feldman
   Book by Harvey Fierstein
   Directed by Matt Cole


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