感想 恋せぬふたり 吉田恵里香 「普通」とは?。「常識」とは?。改めて考えさせられた衝撃作。
NHKの人気ドラマ「恋せぬふたり」の小説版。
ドラマでは、高橋一生さんと岸井ゆきのさんが、「アロマンティック・アセクシュアル」というセクシュアリティの男女を好演しました。誰にも恋愛感情を抱かず、性的にも惹かれない。二人の作った仮家族というフィルターを通すことで本当の幸せが見えてくる。
「普通」とは何?
「常識」って何?。
「家族」って何?。
人と違うと、何で馬鹿にされたり差別されるのか?
どうして、少数派は多数派に意見を合わせたり遠慮しないといけないのか?
その息苦しさの中、自分の性をカミングアウトできずにいる男女が
仮の家族を形成する。
当然、親や姉妹は理解できない。
友達や元彼だって納得がいかない。
主人公の女性はこう思ってしまう。
そんなある日、高橋という野菜売り場の主任に「いると思いますよ。恋しない人間」と言われる。
これがある意味、二人の架け橋になった言葉。二人は同類だとわかっていきます。
少数派の人のことは、同じ立場でないと理解できない。
ふたりは急接近し家族になろうとする。同居する。
家族は彼女に「普通」を要求する。普通に幸せになれ、普通の家庭を作ってさ・・・
彼らにとっては、「普通」という言葉は言葉の暴力でしかない。
自分たちの家族観が正しくて、それ以外は不幸と決めつける。その意味が彼らにはわからない。
「普通」って何なのよ。「普通」になれないから苦しんでいるんじゃん。
「普通に幸せになるって何?」
彼は言う
彼らの朝食は、彼の手作り手打ちうどんなのだ。
この比喩は突っ込みどころ満載ですが、ニュアンスは十分に伝わってくる。
ようするに世界中が敵になった時でも、この人は「味方」である。それが家族であるということを、彼は伝えたいのだと思う。
そこに恋愛感情やSEXは介在しなくてもいい。
すげーと読後に思いました。
お金で繋がっているだけの人たちや、冷え切った家族がたくさんいる中で
なるほど、これぞ本当の家族と思ってしまいました。
2022 5 19
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