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Akarisong『ひとりだけどみんなと家族』(最終回)
ずっとひとりで抱えてきたの
私が我慢すればいい、と
だけどそうじゃなかった
私がじっと耐えていた日も
私がグッと涙を堪えた日も
そこには娘の笑顔があった
それをいつしか忘れたの
辛い思いをさせちゃダメ
夫婦の問題は見せちゃダメ
傷つけちゃいけない…
私の顔から笑顔が消えた日
娘の顔からも消えた
夫の顔からも消えた
私はひとりだけど
みんなといれば家族
そんなシンプルなことを
忘れてい
Akarisong『輝く鈍色に…ある専業主婦の歌』(35)
【アカリのニューアルバム『家族の物語』早くもダウンロード&アルバム売り上げ総数30万枚突破!】
そんなネットニュースが流れている。
俺はそれを見るたび、複雑な気持ちになる。
『ある専業主婦の歌』から始まるそのアルバムは、俺の家庭そのまんまだからだ。
もちろんアカリをはじめとする関係者は、アカリのインスピレーションから作られた歌だと言っているが、『ある…』は俺の妻・アカネさんが作詞した。
「ア
Akarisong『輝く鈍色に…ある専業主婦の歌』(34)
久しぶりの我が身体。
今回はちょっと大袈裟なことになったけれど。
「アカネさん…オレが誰だかわかります?」
「え、どなた?」
アカネさんが、こちらを見てニヤリと笑った。
「アカネはこっちです。あら?元に戻らなかったみたい〜。このまま私、カリスマシンガーとして生きていかなきゃかしら?」
私の棒読み台詞にダンナさんの顔が固まる。
マツモトやエミカ、エイミちゃんも気付いているというのに、この人
Akarisong『輝く鈍色に…ある専業主婦の歌』(33)
アカねぇの入れ替え騒動が、なんだかとんでもない方向に向かい始めてきた。
今回入れ替わったアカネさんを、スタッフにスカウトするはまあ、いいとして。
アカネさんのご主人で、私の上司・課長の浮気心の歌を作るという。
その上で、お嬢さんのエイミちゃんや、部下である私の立場からも歌を作りたいって…商魂逞しいというか、KYというか…いくらなんでもやり過ぎ!
そう反論する私と、あまりの展開に口をぱくぱくする課長
Akarisong『輝く鈍色に…ある専業主婦の歌』(32)
ママとアカリの中身が入れ替わってて、最近噂のおばちゃんっぽいアカリの発言は、実は全部ママで、パパにはたくさん彼女…不倫相手がいて、アカリの妹のエミカさんがパパの部下で、パパの浮気相手の相談を受けてるって…なんだそれ?
じいちゃんに近いような担任から「あなたたちの話は脈絡なく、どんどん展開していくから、私のような者はついていけませんねぇ」と、うちらの話すことを指摘される。
でもさ、なにこの展開!
大
Akarisong『輝く鈍色に…ある専業主婦の歌』(31)
アカリ姿のアカネさんが、アカリの事務所で働くという。
いくら数日の間、アカリと入れ替わってバレなかったからとて、今まで専業主婦だったアカネさんが芸能事務所で働くなんて無理だろう。
日々の仕事となったら、そう甘くはないはずだ。
なにしろ、カリスマシンガー・アカリの事務所、迷惑かけるに決まっている。
がしかし…アカネさんは乗り気のようだ。
娘のエイミも、間近に見る芸能人オーラというものに毒されたのか
Akarisong『輝く鈍色に…ある専業主婦の歌』(30)
「エミカだったらどうしたい?」と言われたって、私はアカネさんじゃないからわかる訳がない。
いつだってアカねぇは私に振る。
子どもの頃からこうだ。
「私だったら課長と歴代愛人たちから慰謝料はふんだくって離婚するの一択しかないわね。課長には申し訳ないけど、こんな女性関係にだらしない男に使う時間もったいないもの」
課長の顔が思いっきり落胆した。
「ええっ!パパって愛人たくさんいるの!」
しまった
Akarisong『輝く鈍色に…ある専業主婦の歌』(29)
「マツモトさん、そのお話ですが」
アカネさん…といっても姿が私だから声も私のなんだけど、発した声にみんなが注目する。
やっぱ、私の声って響くなぁ。
浮気症のダンナさんなんて10cmぐらい飛んだんじゃない?
女性に慣れてるのかと思いきや、素のエミカ見てビビったり、マツモトの言動に動揺し過ぎ。
でも、私に「アカネさん返せ」なんて言うあたり、愛があるわよね。
私がニヤニヤしていると、マツモトとエミカが
Akarisong『輝く鈍色に…ある専業主婦の歌』(28)
「元に戻った後も、アカリのスタッフとして働いてほしいんです」
マツモトさんの言葉にアカリが頷く。
夫が口をあんぐり開けて固まる。
「へ?そんなの聞いてませんけど…」
マツモトさんに言うと「ええ、初めて言いました」としれっと答える。
そのまんま優雅にワインを一口。
うちの安いワイングラスが高級に見えるさすがやり手といった風情。
浮気は繰り返すクセに、実はチキンで弱気な夫ではぐうの音も出ない毅然
Akarisong『輝く鈍色に…ある専業主婦の歌』(27)
さすが現代っ子。
いや、アカネさんの家族…というべきなんだろうか?
アカネさんとアカリ、そしてエミカちゃんのやりとりを訝しんでいたアカネさんの娘・エイミちゃんは、2人の入れ替わりを驚いた割にはすんなり受け入れている。
この強心臓とルックス、うちで育てたい。
アカネさんの歌の才能が遺伝していなければ。
「だから、最近歌わなかったんだ!」
案の定の見解。
「だって、いきなり入れ替わられたとはいえ
Akarisong『輝く鈍色に…ある専業主婦の歌』(26)
パパの声に、ママが「わかっちゃいました?」とお茶目に言った。
変だな変だな…と思っていたけど、まさかママがアカリと入れ替わっていたなんて!
エミカさんは知っていたのかな…と、エミカさんの方を見ると、少しだけ俯いて溜息をついている。
マネージャーさんも知ってたみたい。
「じゃあ、最近、ネットニュースでアカリが所帯染みたことばっか話してておかしいって、中身がママだったからなの?」
誰をみて話せばい
Akarisong『輝く鈍色に…ある専業主婦の歌』(25)
「女子校の担任なんてなるもんじゃねぇぜ。10代とはいえ、女子だらけの中に俺一人ヤロウってんは地獄だって、1週間でわかった」
確か、高校の教師になったヤツが言ってたな…春先には「女子校に赴任が決まった」とウハウハしていたのだが、初夏に会った時は生気を吸い取られたかのようにヤツれていた。
それだけ女子の集団というのは、男にとって脅威らしい。
これまで俺は、それなりに多くの女性たちとはうまくやれている
Akarisong『輝く鈍色に…ある専業主婦の歌』(24)
ウ、ウケる…
アカリの姿を見たエイミと夫の、口をポカーンと開けたまんま、固まった顔。
そりゃそうよね、だって中身が私だなんて知らないし。
「ただいま〜!久しぶりの我が家〜!」
うっかり言っちゃったし。
そしたらそしたで、私の姿のアカリと、えっと…マツモトさん曰く、アカリの妹で夫の部下だというエミカさんが、玄関にやってきて「いらっしゃい」じゃなくてこう言ったのよね。
「はじめまして!おかげさま
Akarisong『輝く鈍色に…ある専業主婦の歌』(23)
着替えている時聞こえてきたママとエミカさんの話し声は、なんだか兄弟喧嘩をしているみたいだった。
どちらかというと、エミカさんの方が怒ってるみたいな感じ。
やっぱ修羅場じゃん…。
しばらくはここで避難するに限るな…と、ベッドの上に大の字になったら少し寝てしまったみたいで、窓の外が暗くなっていた。
スマホの画面を見たら8時過ぎていた。
「ヤバッ!」
パパに頼まれて連れてきたエミカさんとママが喧嘩し