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教師必読のルポ『でっちあげ』「殺人教師」の汚名を着せられた先生・小さな教育情報

本の紹介です。

『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』(新潮文庫)ーこの本の存在は前々から知っていたのですが、読んだのはつい最近です。もっと早くから手に取って読むべきでした。全国の学校現場にいる教員の皆さんの中でまだ読んでいない方は今すぐにでも読むべきです。

本書は事実無根、有りもしない児童への暴力行為をでっち上げられ「殺人教師」の汚名を着せられた一人の教師の姿を追うルポです。

「『死に方教えたろか』と教え子を恫喝した史上最悪の『殺人教師』」

これが平成15年6月27日の朝日新聞の第1報に続く10月9日号の週刊文春の記事タイトルです。

詳しくは本書を読んでいただくとして、ここに出てくるエピソードを読んで「似たような経験がある」と思った先生方はたくさんいるはずです。私もあります。ですから、読んでいて怖くなりました。一歩間違えれば私もこの先生と同じ目にあったかもしれないからです。

とにかく読んでいて怒りが収まりませんでした。何でもっと早く読まなかったのか、と悔やまれます。元同業者としてこの先生の悔しさをいち早く自分も共有すべきだったと思いました。

著者の福田ますみ氏は、終章「偽善者たちの群れ」でこう言っています。

子どもは善、教師は悪という単純な二元論的思考に凝り固まった人権派弁護士、保護者の無理難題を拒否できない学校現場や教育委員会、軽い体罰でもすぐに騒いて教師を悪者にするマスコミ、弁護士の話を鵜呑みにして、かわいそうな被害者を救うヒロイズムに酔った精神科医。そして、クレーマーと化した保護者。結局、彼らが寄ってたかって川上(汚名を着せられた先生の仮名)を、“史上最悪の殺人教師”にでっちあげたというのが真相であろう。

なお、この事件は裁判となりますが意外な展開を見せます。保護者側のほころびが次々と明るみに出て、すべてが作り話の虚構であることが判明するのです。

この先生は実質的に勝訴し疑いは張れるのですが、それでハッピーエンドというわけではありません。

本事件は平成15年に起こりました。本書が出版されたのが平成19年。3年後に文庫化されています。すでに10年以上の年月が経過しています。

しかし、本書の内容は色褪せていません。なぜなら、現在でもこの先生の辛く苦しい体験から現場教師が学ぶことは山ほどあるからです。自分の仕事と家族、そして自分の人生と学校現場を守るためにも一読すべきです。今こそ全国の先生方、教職をめざす学生に読んでもらいたい。

最後に「判決 茶番劇の結末」から一審結審後の川上先生の姿です。読んでいて私は涙が出ました。

疑惑の目が注がれたまま中途半端な状態で現場復帰するより、たとえ何年かかろうと、身の潔白が証明されてから戻っても遅くはない。それが川上の本音だった。ところが、B小学校を訪問し誰もいない教室に立った途端、このもやもやした気持ちはうそのように霧散霧消してしまった。何とも言えぬうれしさが込み上げ、自然に顔がほころぶのである。(そうだ、やっと帰ってきたんだ。自分の居場所はここしかない)川上はこの小学校で4年生の学級担任を務めることになった。

私は気になります。事なかれ主義の校長・教頭は川上先生に謝罪したのでしょうか?いい加減な報道を繰り返してこの先生の人生を破壊したマスコミは謝罪しているのでしょうか?まともな取材もせずに煽り記事を書いたマスコミの罪は限りなく重いです。あの杜撰な診断をした精神科医はまだ医者をしているのでしょうか?

今も似たような学校と教師に関する報道を耳にします。とても信じる気にはなれません。これ以降、マスコミはこうした「冤罪」学校事件を生んでいないと本当に言えるでしょうか?




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