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「自分はどうせダメ人間だし好きなことしよ!」~歎異抄のロジック~

皆さん「座右の銘」はありますか?

・継続は力なり
・石の上にも三年
・やらない後悔よりやる後悔
・笑う門には福来たる
などなど…

「座右の銘」とまではいかなくても、
好きな言葉や、行動の指針にしている言葉があるのではないでしょうか?

私にも好きな言葉があります。
それは次のようなものです。

「いづれの行もおよびがたき身なれば、とても地獄は一定すみかぞかし」

どんな言葉やねん、と思うかもしれませんが私はいたってまじめです。
私はこの言葉を聞くととても前向きになれますし、
行動する勇気がわいてきます。

今日はこの言葉について少しお話しさせてください。

元ネタは『歎異抄』

「いづれの行もおよびがたき身なれば、とても地獄は一定すみかぞかし」

そもそもこの言葉、聞いたことがあるという方もいるのではないでしょうか?

この言葉の出典は『歎異抄』です。
『歎異抄』とは、親鸞という鎌倉時代のお坊さんの教えが書かれた本です。

ちなみにですが、この本の作者は親鸞ではありません。
親鸞の弟子の唯円が書いたというのが定説ですが、
はっきりしたところはよくわかっていないそうです。
あくまで、親鸞の言ったことを周りの人がまとめた本ということですね。

さて、そんな『歎異抄』のなかに登場する言葉
「いづれの行もおよびがたき身なれば、とても地獄は一定すみかぞかし」

いったいどんな意味なのでしょう?

ざっくり訳すとこんな意味になります。

「(私は)どんな修行もまともにできないので、地獄行きは決まってるんです」

単に訳されても、文脈がないとよくわかりませんよね。
これは親鸞が「なぜ念仏を唱えるのか」について説明している場面で登場します。ざっくりいうとこんな流れです。

「(なぜ念仏を唱えるのかについて)別に念仏がいいことなのか悪いことなのかなんてわかりません。でももう自分には念仏を唱えるしかないんです。念仏以外の修行をして悟りを開けるならまだしも、私はどんな修行もまともにできないんです。地獄行きは決まってるんです。だから私は念仏をひたすら唱えるっていうのでいいんです。」

かなりざっくりですが、私はこんな感じで捉えてます。

さて、この言葉ですが実は、
私以外にも好きだという方が案外たくさんいるようなんです。

代表的なのは哲学者の梅原猛さんです。
そもそも梅原さんは『歎異抄』を現代語訳しているほどの
『歎異抄』ファン・親鸞ファンです。
そして彼もこの「いづれの~」という言葉に救われたそうなんですね。

ではこの言葉、いったいどこがいいんでしょうか?
「地獄行き」とか言ってて、一見するととてもネガティブな言葉に聞こえますし。
この言葉の何がそんなに人をひきつけるのでしょうか?

「ダメ人間だからこそ好きにやろう」~親鸞の"アクロバット"さ~

この言葉のポイントは、
「逆説的なロジック」です。

「自分はなにをやってもダメでどうせ地獄行きだから、好きなことやろ!」

この論理、ふつうに考えるとヘンじゃないですか?

自分は何をやってもダメだ。
どうせ救われない。
こんなふうに考えるなら、
ふつうはネガティブで消極的な方向に結論づけそうなものです。

自分はダメだ…だから何もしないでおこう。
自分はダメだ…だから仕事(学校)に行くのやめよう。

こういうネガティブな方向に行くのが普通だと思います。

でもそうじゃないんです。
親鸞のロジックはいい意味でアクロバティックなんです。

自分はダメだ…
どうせ何やってもダメなんだから思いきり好きなことやろう

自分のダメさを受け入れながらも、
とても前向きなところに着地しています。

というか
自分がダメだということを受け入れるだけでなく、
そのダメさを行動のモチベーションにしてしまうんです。

ここが親鸞のすごいところです。

これこそがこの言葉の魅力だと思っています。

私のはなし

私自身、この言葉に救われた一人です。

私は自分のことをダメな人間だと思っています。

なにをやっても続かないし
不器用だし
そのくせしてプライドだけは一丁前にあるし

ずっと自分のことを好きになれませんでした。

そんな私がこの言葉と出会いました。
私が救われたポイントは以下の三つでした。

・自分のダメさを受け入れて前向きになれる
・気持ちが軽くなる
・行動する勇気が湧いてくる

自分はダメだ。
だからこそ思いきり好きにやっていいじゃないか。

どうせ名家の生まれでもないしエリートでもない。
たいして積み上げてきたキャリアがあるわけでもない。

ダメ人間・落ちこぼれだからこそ、
自分の好きなことを何にも縛られずにやることができる。

この考え方によって、
気が軽くなるというか、救われたような気持ちになるんです。

そして私は今でもこの言葉に行動する勇気をもらっています。

悩んだとき、
落ち込んでしまったときこそ、
自分の好きなように行動すればいいじゃないか。
そう思えるんです。


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