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ドラッカーの書いた「経営者の条件」が秀逸だと思った話

こんにちは、セーシン(@n_spirit2004)です。

今日は、経営学者・コンサルタントとして有名なピーター・ドラッカーが書いた「経営者の条件」について書いていきます。

この本、初版が1966年。

そう、今から55年前に書かれたのですが、私は最近までその存在を知らないままでした。

アマゾンのCEOジェフ・ベゾスが2013年のインタビューにおいて、必読書3冊の1つとして挙げていたことを知って、最近になって購読したのです。

ちなみに、残りの2冊は、「イノベーションへの解」と、「ザ・ゴール」で、いずれも名著です。(3冊の要約はこちらにまとめています >>>ジェフ・ベゾス(アマゾンCEO)が経営幹部の必読書とする本3冊の要約

さすがに55年前に書かれている本なので、主張を支えるために出てくる事例が、ケネディ大統領のことやベトナム戦争のことなど古さは否めませんが、そこから導かれる考察は現代でも十分に通用することばかりです。

この記事では、印象に残ったところをピックアップしてまとめていきます。


成果を上げるリーダーがやっている8つの習慣

ドラッカーによると、コンサルタントとして出会ったCEOのほとんどがリーダータイプの人ではなく、性格、姿勢、価値観、強みはバラバラだったそうです。

そうした人たちが共通に行っていた習慣が以下の8つだったとしています。

1:なされるべきことを考える
2:組織のことを考える
3:アクションプランを作る
4:意思決定を行う
5:コミュニケーションを行う
6:機会に焦点をあてる
7:会議の生産性をあげる
8:「私は」ではなく「われわれは」を考える

一見、当たり前のことしか書かれていませんが、実際にリーダーとして大事なのは当たり前のことを当たり前にやることなのでしょう。

これらの表現を裏返してみると、その大事さが如実にわかります。

1:なされるべきことを考えない
2:自分のことを考える
3:アクションプランを作らない
4:意思決定を避ける
5:コミュニケーションをとらない
6:脅威に焦点をあてる
7:生産性の低い会議をする
8:「われわれは」でなはなく「私は」を考える

この8つのことに対して自信を持ってNOと言うためには、相当な胆力、我慢強さを鍛錬して身につける必要があるのだと思います。

実際に成果を出すことに関して、ドラッカーはこのように言っています。

成果をあげることは習慣である。他の習慣と同じように身につけることのできるものである。そして身につけなければならないものである。


ホワイトカラーの管理職がすべき仕事

本書には、一貫してホワイトカラーの人たちがなすべきことが書かれていますが、その中で管理職がなすべき仕事としてとても示唆のある表現がありました。

ここでは、責任者は私である。しかし部下がジャングルで敵と遭遇し、どうしてよいかわからなくとも、何もしてやれない。私の仕事は、そうした場合どうしたらよいかを予め教えておくことだ。実際にどうするかは状況次第である。その状況は彼らにしか判断できない。責任は私にある。だが、どうするかを決められるのはその場にい者だけだ。

軍の士官が、ゲリラ戦の中にいる部下の兵士に対してどのようなマネジメントをするかという観点から答えたものです。

会社組織では、部下に対してマイクロマネジメントをしたり、逆に放置したりするケースが見られます。

しかし、この話を聞くと、管理職が部下と一緒にやるべきことは、以下の2つなのでしょう。

・将来起きそうなことを予め想定する
・それが起きた場合の対処法を考えて訓練しておく

軍隊という会社以上に組織的な行動が必要な組織でも適用できるのであれば、会社組織で適用できないわけがないと考えるのが自然です。

実は、この考え方はプロジェクトマネジメントの管理手法の1つであるCCPM(クリティカルチェーン・プロジェクト・マネジメント)にもつながるところがあると感じています。

CCPMでは、若手とベテランが一緒になって工程をロジカルに引いたあとに、先々で起こることを想定しながら、スケジュール短縮策やリスク回避策を事前に検討するからです。

CCPMの詳細は以下の記事をご覧ください。


人が多いからといって成果が出るとは限らない

忙しい部署にいると、よく「人手が足りない」、「もっと人がいないと経営陣の要求には答えられない」と言った声を何度も耳にします。

私もサラリーマン時代に管理職をしているときに、経営陣から

「今のアウトプットを2倍にするには、何人の人員が必要か試算して欲しい」

などと言われて、一生懸命試算したこともありましたが、試算しながら内心「本当にこれだけ人数がいたら、かえってマネジメントが大変そうだな。。。」などと思っていました。

本書には、この点について端的にこのように書かれています。

小学1年の算数の教科書は、「溝を掘るのに2人で2日かかりました。4人だったら何日かかりますか」と聞いている。1年生にとっての正解は1日である。現実の世界ではおそらく正解は4日である。

なぜ、このようなことが起きるかと言うと、業務の中で本質的にボトルネックではないところを増員しても、コミュニケーションの手間が増えるばかりで実際には時間短縮にはならないからです。

これは、TOC理論で明快に説明されています。(TOC理論の詳細は以下の記事をご覧ください。)


努力ではなく貢献に焦点をあてる

日本だと頑張っていることを評価してもらおうとしがちです。

「私はこんなに残業しました」
「私は昨日徹夜して作りました」

しかし、仕事相手にとって重要なのは、その人の努力や頑張りではなく、貢献であり成果です。

ドラッカーも、あるコンサルタントがクライアント組織の中でインタビューをした後に聞くことを事例に出して、このように述べています。

「ところで、あなたは何をされていますか」と尋ねることにしている。ほとんどの者が「経理部長です」「販売の責任者です」と答える。ときには、「部下が850人います」と答える。

「他の経営管理者たちが正しい決定を下せるように情報を提供しています」「客が将来必要とする製品を考えています」「社長が行うことになる意思決定について考え準備しています」などと答える者はきわめて稀だという。

成果・貢献に焦点をあてれば、働いた時間ではなく貢献度合いを意識するようになり、それをより短時間で実現できる方が素晴らしいという発想にもなるので、仕事の生産性自体も劇的に伸ばせていけるのでしょう。


成果を上げるためには、うまくいっているかではなく、貢献できているかで考える

こちらは組織として成果を上げるための心構えです。

「あいつとは馬が合う」
「彼は素直に言うことを聞いてくれる」

実際にこういう人を部下に持つと心地よく仕事ができます。

しかし、ドラッカーは次のように述べています。

人に成果をあげさせるためには、「自分とうまくいっているか」を考えてはならない。「いかなる貢献ができるか」を問わなければならない。

実際に、波長が合う人間をまわりに置くと楽ですが、何かあったときに情で判断してしまいがちになります。

組織として成果を出すには、その人への感情と、組織への貢献は切り離して考える度量が必要になるのでしょう。

さらに上記の引用には続きがあって、以下のように述べています。

「何ができないか」を考えてもならない。「何を非常によくできるか」を考えなければならない。

人はついつい他人の欠点に目を向けてしまいがちですが、大事なことは欠点ではなく強みです。

オペラの舞台監督は、プリマドンナが客を集めてくれるかぎり、彼女が何度かんしゃくを起こそうと問題ではないことを知っている。

私の経験上も、人に弱みを克服させる難易度に比べれば、人の強みを生かして仕事を配分する難易度の方がはるかに低いと感じています。

人は、弱み(=苦手分野)を克服するよりも、強み(=得意分野)を生かしているときのほうがはるかに生産性が高いからです。


意思決定の5つのステップ

私は、過去から現在にいたるまで様々な仕事上の意思決定をしてきましたが、意思決定は直感的な部分が占める割合が多いと思っていました。

しかし、ドラッカーは本書で丁寧に意思決定のステップを解説していて、「言われてみればそのとおり」と思うことばかりです。

このステップは、私がこれから仕事で意思決定をする上で重要な指針になると感じています。

これに関しては、別の記事で詳細をまとめました。


まとめ

以上、「経営者の条件」を読んで印象に残ったところのまとめでした。

若手からベテランまで、ホワイトカラーの方々には是非おすすめしたい一冊です。


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