夏のおもいで

垂直に落ちる光はぼんやりと瞼を濡らし浮かぶ残像

父親がパチンコへ行く日曜の昼ごはんはぬるい冷や麦で

陽炎が空気を曲げる夏の午後自転車で踏む乾いた地面

あまりにも漆黒過ぎる夏の影プール帰りの友が眩しい

自販機で買ったサイダー握りしめ潰れたのはクシャクシャの自我

畦道を低空飛行する蜻蛉夕闇が日の終わりを告げる

食卓を囲む家族に父親はいない 今もパチンコに夢中

遠吠えが花火の音に掻き消され夜の静寂に吸い込まれゆく

夏は夜 さらりと言ってのけるのは清少納言と不眠患者

天井に吊るした淡い電球が光る蛍に見えるでもなく