見出し画像

クリエイティブマネジメントのススメ パッケージデザイン編

■TVCMでみたあの新商品が思い出せない・・・

タイトルのようなコトが起きた経験はありますでしょうか?
○○って会社の~□□って商品名だったよね~っていう知覚であれば
まだ、そのTVCMは優秀ですが、かなり薄ら覚えの場合が
多くあります。
何故、その様なるのかはクリエイティブマネジメントのススメ
(広告編)でご説明をしていますが、
パッケージデザインにも大いに問題・課題が多く潜んでいます。
それは、覚えられないパッケージデザインが多いからに他なりません。
何故その様なコトが起きるのでしょうか?
多くのメーカーの依頼の仕方にも問題があるのでしょう。
あんな商品みたいにして、といった依頼の仕方と評価軸では
似たようなデザインでなければ評価されず・選択されないと
デザイナーサイドは考えてしまいます。おのずと渋々似て非なる
デザインを提案せざる負えなくなります。
新しいデザインを提案しても選ばれないのが分かっていれば
提案しないし、提案されることも無いでしょう。
こんなことが続けば、思い出せないという様なことは
永遠に無くならないでしょう。

■覚えられるパッケージデザインとは?
答えから言うと、子供が覚えてしまうデザインです。
“初めてのお買い物”っていうTV番組ありますよね。
お母さんから、言葉ではなく、これね!と見せられて
行く道すがらの誘惑の多い中で、お店に着いても覚えていられるのが
記憶されやすい、覚えてしまうパッケージデザインです。
では、その条件をクリアするには、どうすればいいのでしょうか?
色もカタチもシンプルであることです。
複雑なモノは、覚えにくいのです。
例えば、シャネルのマーク書けますか?
ルイヴィトンのマーク書けますか?
ナイキのマークなら書けますよね。
シンプルだから覚えられるのです。
しかし、覚えられ後も大切ですよね。
シンプル、目立った、綺麗など感じるデザインが出来たとします。
ではそれで購入に結びつくのか?というとすべて上手く行くわけでは
ありません。
さらに、デザインと同様に重要なのが商品名=プロダクトブランドとも
呼ばれるモノで、人間なら、まさに名前そのもの。
食品の場合、商品名よりメニュー名の方が大きくレイアウトされる場合が
ほとんどで、社名・商品名・メニュー名の3つが表記されます。
基軸がコーポレートブランド戦略と呼ばれています。
洗剤などのトイレタリー商品は、社名が小さくレイアウトされるか、
または裏面に表記され、商品名と機能表示が正面にドンとレイアウトされる
場合があり、こちらはあくまでも商品名優先で、プロダクトブランド戦略と
呼ばれています。
欧米企業では、このプロダクトブランド戦略が主で、
そのブランドそのものをM&Aで取引されることも多くあります。
この表現方法の違いは、そのメーカーの考え方・戦略の違い
によるもので、どちらが良いというモノではありません。
デザインとブランドは、切っても切れない表裏一体なモノなので、
覚えやすいデザインと覚えやすい名前で、さらに覚えやすい構造を
作り上げ、お客様との関係を強固なモノにしようとしているのです。

■スーパーマーケットなどの店頭が及ぼすデザインの現実
基本的に食品を初めとした日用品のお客様は、大半が大人なので
中身がどうなっているとか?
仕上がりはどうなるのか?
味は辛いのか?甘いのか?
何人分なのか・・・
いつまで使って大丈夫などたくさんの情報から判断しようとします。
覚えやすいデザインと先ほどまで書いてきましたが、
覚えやすいデザインというのは、シンプルであるという条件を
突きつけてきますが、シンプルは、さらに美しいという表現も
当てはまります。例えば、無印良品。
田中一光さんがデザインし、素敵なデザインの潮流も作られました。
なんだか魅力的な生活を演出してくれるというか、
虚飾を捨てて、必要最低限度のデザインと最低限度の表記で構成され
商品を眺めるだけでも、実際はゴチャゴチャしている自分の部屋も、
スッキリでオシャレな部屋になれそうかな?と想像させてくれます。
長年メーカーでパッケージデザイン開発に関わる者として
直接、お客様に販売出来るお店があるから、あの様なデザインが
出来るのだ!と悔しくもあり、しかし羨ましく思ってきました。
メーカーのデザインは、どうしても隣に同様の競合商品と肩を並べて
陳列される宿命にあります。
どうしても自身の商品を選んで頂かなければ勝ち残れないので、
目立つ・派手・暑苦しい、時にはうるさいデザインになりがちです。
あくまでもお客様が選ぶという視点でデザインを開発しますが
どうしても競合に勝ちたい!という企業のクリエーターとして、
またメーカー人としての欲望が沸々してしまい、
前のめりデザインになりがちです。
当然、商品担当マーケッターは、私以上に、なりがちかもしれません。
このまま突き進めば、自己満足満々のデザインが出来上がります。
結果は、想像される通りで、発売前の調査で全滅もありえます。

■パッケージデザイン開発におけるクリエイティブマネジメントとは?
今回は初回なので、大枠から3つお話したいと思います。
・まず、1つ目が、「多くを望んではいけない」ということです。
TVCMが出来る商品ならまだしもですが・・・(CMでも説明出来るのは
一つか一つ半)店頭に置かれるだけの商品は、商品そのもので説明・話を
お客様としなければなりません。法的な表示はしっかりするとして
言いたいことを全部デザイン・表記しないことです。
言いたいことの優先順位をつけて、覚えやすいデザインであるかに
特化し、魅力を最大限に表現することです。
そして、商品の成長に合わせてデザインと表記を進化させて
いけばいいのです。
どうしても日本は納得のいくデザインが100%を超えて120%完成して
からの商品化になりますが、
実を言うとその後のデザインの改良・改善は数年後というのが多いと
思われます。そのため厚塗りで表記の多いデザインになり、シンプルで
覚えやすいデザインからかけ離れてしまいます。お客様と共に、
その商品理解が深まるコトと合わせたデザインの成長が必要になるのです。

・2つ目が、「デザインは毎年改善して良い」ということです。
これは、一つ目を受けた提言になります。
ASEANに赴任していたときに気が付いたのは、欧米企業の日用品の商品
デザインと表記は、レベルの大・小はあれど毎年見直されていました。
リサーチを元にお客様の不満や課題をソリューションする姿勢が常にあると
感じられました。
もちろん、最初に覚えたデザインの骨格は基本的に残しながら
(大幅に変えると使っていただいているお客様が商品を探せなくなるため)
デザインを洗練・進化させていくのです。
不思議なモノで商品は生鮮野菜や魚介類でもないけれど、
改良したデザインの商品が新鮮に見えるのです。
そう、お客様・・・人間はなんでも新しいモノを選びたいと思っているので、
感覚が研ぎ澄まされるのかもしれません。

・3つ目は、「購入後を考慮する」
1つ目、2つ目はお客様との出会いの為のノウハウに近いモノですが、
3つ目は商品の本価値をスムーズに発揮するためのマネジメントです。
食品であれトイレタリーであれ、どの様に商品を使いこなして
いただくのか?にかかっています。
折角、厳しい競争の中から選択して頂いたのに、
うまく使いこなせなかったら二度と購入して頂けません。
パッケージのサイズや法定の必要表示にスペースを取られますが
可能な限り文章に頼らずイラストで容易に理解していただくことを
オススメします。でも、この分かりやすいイラストがなかなか
描けないのですよね~。
何故かと言うと、理解したイラストレーターが描くからで、
何も説明せず商品を渡して、使わせてから描くと気づきがあるため
分かりやすいイラストになりやすいです。
最近はQRコードをスマホで読み取り使用方法など映像で紹介することも
増えてきましたが、この高齢化社会・・・上手く使いこなせていない方も
多くいます。
ストックされる商品であれば、そのストックされやすい表示方法など
ユニバーサルデザインの視点を当たり前として表現して欲しいと思います。
食品の場合、男性から大さじがどれか分からず問い合わせがあったりして
従来の“按配”が通用しなくなっていることもあり、
その時代時代であらたに出てくる課題は尽きません。

パッケージデザインを変えるだけで、販売がよくなることはあります。
ただし、短期間に売れた商品は商品ライフサイクルも短い傾向にあります。
もちろん菓子などと調味料とでは元々の商品性が異なるので同じには
なりません。
それは時代にジャストフィットさせたからですが、時代の流れが変われば
そのデザインの持つパワーは直ぐ変わります。さらに追い打ちのように
競合が攻めてきます
息の抜けない終わりの無い戦いが続きます。
本当にマーケティング&デザインクリエイティブマネジメントは
疲れる仕事だと思います。

この記事が参加している募集

自己紹介

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?