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【料理エッセイ】話題のぼんご系おにぎりを食べてきた!

 いま、おにぎりが人気らしい。と言っても、日本の稲作が始まった弥生時代以来、おにぎりは人気であり続けていると思うのだけど、最近は「ぼんご系」と呼ばれる新型おにぎりに注目が集まっている。

 普通のおにぎりとどう違うのか。まず、おにぎりなのに握らないのが最大の特徴。型を使って成形し、作り手は最後にふわっと包み込むだけ。そのため、大きく、ふんわりしていて、温かい。お米一粒一粒の旨味をしっかり味わえる。加えて、具沢山なので食べ応え抜群。ちゃんとした食事になり得るおにぎりなのだ。

 その名称は大塚駅前の人気店・おにぎりぼんごに由来している。1960年創業の老舗で、大学生の頃、わたしもグルメな先輩に連れていってもらったことがある。

 当時の人気も凄まじく、けっこうな行列に並んだ記憶がある。そうして、ありつけたおにぎりはたしかに美味しかったことを覚えている。

 とはいえ、言ってもおにぎりはおにぎりであり、なぜ、人々がこんなにも時間をかけて、それを食べたいと求めているのか不思議には思った。

 おそらく、店主の右近由美子さんをはじめとする、歴史あるお店の空気感に答えがあるのだろうと10年前のわたしは考えた。こんなところは唯一無二。だから、みんな、一度は食べてみたいと思うじゃないか、と。

 だから、まさか、「ぼんご系」のおにぎりを売りにしたお店が日本中に乱立し、軒並み、好評を博さようになるとは、正直、予想だにしていなかった。

 つまり、「ぼんご系」はユニバーサルなブランドであり、大塚のお店に依存してはいなかったのである。

 そして、そこに目をつけたのがスニーカーセレクトショップ「アトモス(atmos)」創設者の本明秀文さん。知り合いに連れて行ってもらった大塚のおにぎりぼんごを食べて、ビビッときたらしい。これはとてつもないビジネスチャンスがある、と。

(いやはや、普通に美味しいと満足してしまったわたしとは大違い。だから、お金持ちになれないんだろうなぁ笑)

 さらに本明さんの凄いところはすぐさま新宿におにぎり屋さんを出店してしまったところ。仕事のできる人って、本当、スピード感がとてつもない。

 コロナ禍も落ち着いて、外食需要もインバウンド需要も戻ってくる中、あっという間に本明さんのお店は人気となった。ただ、まだまだ満足はしていないようで、NewsPicksの取材に対し、いまはおにぎりの通販を考えていると明かしていた。

 なんでも、外食産業のボトルネックは土地と人件費。どんなに効率化を測っても、最大化できる利益には限界があるらしい。そうすると、ゲームチェンジャーになり得るのは通販しないと、スニーカー通販で成功を収めた本明さんは確信している。

 ちなみに、おにぎり通販の方法はまだ未定なんだとか。できることから逆算するのではなく、やるべきことから思考するあたり、最高にカッコいい。

 とはいえ、わたしの興味は味にある。「ぼんご系」なるもののお手並み拝見とばかり、早速、新宿三丁目の本明さんのお店・おにぎり まんまへ行ってきた。

 訪ねたのは平日の13時ごろ。店頭には二組しかいなかったので、なんだ、そうでもないかもしれないなぁと並んでびっくり。後ろに続々人がやってきて、あっという間に十組以上の行列が出来上がってしまった。

 お客さんはグローバルで、それぞれ、様々な言語でおにぎりを楽しみにしているようだった。また、老若男女がいるのも印象的。おにぎりという料理の懐の広さを改めて思い知らされた。

 30分ほど経過して、中に通された。事前に渡されたメニューにはたくさんの具が載っていて、どれを選んだものか大いに迷ったけれど、ここは普段のおにぎりと比較したいと、しゃけとツナマヨ(各380円)、ランチサービスのとうふ汁(100円)を注文した。

 カウンター越しにおにぎりが出来上がっていく工程を眺めた。他の人が頼んだすじことか、卵黄の醤油漬けとか、インパクト大な商品を見ているうちに、あっちの方がよかったかもと後悔が生じてくるも、どどんと自分の分が提供されれば、お腹がグーっと臨戦態勢。それぐらい、魅力的な見た目をしていた。

 結論から言うと、最高に美味しかった。本家ぼんごと同じかどうかは、正直、記憶が曖昧ですよくわからなかった。ただ、やっぱり、おにぎりはおにぎりだよなぉと思わなくはなくて、つくづく、なぜ人々はこんなにもこれを求めているのか、不思議ではあった。

 これは本当に凄いことだ。なぜなら、おにぎりという家庭料理の代表的存在をスターダムに押し上げることに成功しているんだもの。

 これがトンカツだったり、ラーメンだったり、うな丼だったり、家で作れない料理だったら容易に理解できる。その特殊性がそのまま付加価値になるわけだから。

 でも、おにぎりはそうじゃない。家でもたいてい美味しくできる。コンビニでも安く簡単に購入できる。わざわざ並んでまで食べたいと思わせるのは至難の業。少なくとも、わたしはその方法を見つけられる気がしない。

 たたがおにぎり。されどおにぎり。

 本明さんのいう通り、ぼんご系おにぎりブームは日本の外食産業を大きく変えてしまう可能性に満ちている。

 さて、こんなことをいろいろ書いているうちに、元祖・おにぎり ぼんごにも行きたくなってきた。ただ、調べてみると、いまは5〜6時間待ちの日もあるらしい。もはや聖地と化しているのだ。

 そう考えると、これはおにぎり界のラーメン二郎のようなもの。とてつもない革命が起こりつつあるのかも。しばし、ウォッチを続けなければ。




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