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映画Winnyを観に行って

Winnyとは

最近映画館で映画を観ましたか?昔は映画の日とかレイトショーとか、よく見に行きましたが、子供がまだ小さかったり、コロナ禍の影響でここ数年は映画館に足を運ぶ機会も無くなってしまいました。
しかし、IT業界に身を置くものとして、また実際にその時代を生きていた者として、ぜひ上映中に見たいと思う映画がありました。
それが映画Winnyです。

https://eiga.com/movie/91266/

皆さんはWinnyと聞いてピンときますでしょうか。世代によると思うのですが、私はドンピシャ世代でこの事件の事をよく覚えています。
当時は、周りでもWinnyを使ってファイルをダウンロードする人も結構いましたし、毎日のようにニュースが流れていました。 当時ITに全く知見が無かった私は、Winny=「悪いもの、作ってはいけないもの」と言う印象がありました。

しかし20年が経ち、映画Winnyを観て、当時の認識と現実に大きな乖離があったこと知りました。
そして、今後の日本の技術者にもおおいに関係があると感じたのです。

Winnyあらすじ

 映画Winnyのあらすじを簡単に説明すると、
2002年に簡単にファイルを共有できるソフト「Winny」を金子勇さんと言う方が開発をしました。2chから話題になり瞬く間に広がっていきました。しかし映画やゲーム、音楽などが違法アップロードされ、社会問題へと発展しました。
そして開発者である金子さんも「著作権法違反ほう助」の罪で捕まってしまいます。
弁護団を結成し、金子さんと共に逮捕の不当性を裁判で主張していくという実話に基づいた話となっています。

Winnyはなぜ問題になった?

著作権侵害

「Winny」は、無料で様々な動画や音楽ファイルを交換することができました。そのため一部の利用者が映画や音楽、ゲームなどの著作物が違法に共有し、著作権侵害やプライバシー侵害などが大きな問題となったのです。
損害額は数十億になるという試算もあります。

当時は著作権侵害ということを身近に感じる機会はあまりなかったので、なんとなく悪いことはとわかっていながらも、罪悪感薄く多くの人が使っていたように感じますね。

開発者の罪とは

「そんな迷惑なもの作って、金子さん悪いなぁ」となりそうですよね。
…と言うか私も当時その様に感じていました💦
しかし、例えばナイフを使って事件を起こした人間は罪になりますが、ナイフを作った人間は罪に問えるかと言えば、どうでしょうかね?
ソフトウェアの開発者を罪に問うというのは、同じことで、世界的に見てももナンセンスな話だったようです。

金子さんは、ネットワーク上のプライバシー、匿名性に関心があり、Winnyの開発においても、ユーザーのプライバシーや匿名性を保つ仕組みを取り入れたとされています。 また単純にプログラマーとしての技術的な挑戦という面もありました。 Winnyの制作自体は著作権を蔓延させるために作られたものではないのです。

Winnyのココがスゴイ

分散型ネットワーク

Winnyでだったのは、分散型ネットワークです。
一般的なインターネットは、サーバーで処理された内容をクライアントから利用する通信を行っていますが、Winnyでは、ユーザー同士が直接ファイルを共有できるピアツーピアという方式をとっています。
ピアツーピアでは、サーバーとクライアントをいう関係ではなく、クライアント同士が繋がって処理をします。 サーバへのアクセスが必要ないことから、ネットワークの帯域幅やサーバーの負荷による遅延が少なく、高速なファイル共有ができました。
またユーザー同士の直接通信なので、情報のやりとりが一元的に管理されることがなく、ネットワーク上のトレースが困難で、匿名性を高くすることもできました。

https://codezine.jp/article/detail/13319

注目され続ける技術

画期的って言っても20年も前の話でしょ?と思われるかもしれませんが
NFTや暗号資産のような比較的最近にも分散型ネットワークがかかわっています。
例えばブロックチェーンも分散型ネットワークによる技術なんです。
ブロックチェーンは、データの取引履歴を「ブロック」単位で記録し、ブロックを時系列順に繋げて管理する技術で、データを改ざんしようとしても、改ざんを隠ぺいするためには、後続ブロックに保管されたハッシュ値の書き換えが必要で、その後続の…とすべて繋がっているため改ざんがが限りなく不可能になるという仕組みです。

https://www.ntc.co.jp/column/culumn04

またSNSアプリの「LINE」でも、友達や家族との間で写真や動画の共有ができますが、その共有の仕組みにはピアツーピア技術が使われています。 大規模なサーバーが不要なことは、LINEアプリが無料で使えることの理由の一つになっています。
このように分散型ネットワークは、今でも最新の技術に応用されているのです。

Winnyを観て感じた事

技術者への正当な評価

今話題を席巻しているChatGPTがもし日本で開発されたとしたら、日本はこのシステムを正当に評価できたのでしょうか。
学生が自分の代わりに論文やレポートを作ってもらったり、最近ではコンピュータウィルスを生成することもできてしまう。
「こんなシステムは危険だ」と開発を止めたり、開発者を捕まえたりしないと言えるのか、今の日本なら起こっても驚きません。
問題を予見することも重要な事ではありますが、リスクだけを見て開発自体を問題視してしまうのは、技術が進歩しようとする意欲をとめることになります。
また海外に比べると日本では優秀な技術者ほど長時間労働、低賃金で働いている現状もまだあります。
技術者への正当な評価ができなければ、技術者は別の所へ行こうとするのは自然ですよね。
優秀なIT技術者は、海外に流れているともいわれています。日本がどんどんIT後進国いなっていくのも当然の結果なのかもしれません。

日本は潔癖すぎる?

最初から完璧なものを求める思考って、なんか昔から日本にはありますよね。
ウォークマンからiPodに取って代わられたことの一因として、著作権保護に重きを置きすぎて、その結果、より使い勝手が良いApple製品へと、ユーザーが流れてしまったという話は結構有名なです。
もし問題があるなら、修正すればいいだけなんですけど、リスクを重視し過ぎて動きが鈍くなっている現状があるのではないでしょうか。

金子さんもそこに山があったから登るという表現をしていました。 技術者がより良いものを作り、それを評価する環境があれば自然と技術力も高くなってくると思うのですが、今その様な環境が日本にあるのか、皆さんはどう感じますか。

日本のITリテラシーの低さ

 Winnyが著作権侵害を蔓延させることが目的だったかどうか、当初裁判ではその「意図」が論点になっていました。しかしその「意図」が無かったことが明確になったにもかかわらず、一審は有罪となってしまいました。

この結果はマスコミの影響も大きかったものと思われます。 リテラシーの低いマスコミ、裁判官、国民全員がWinnyの仕組みを理解できなかった事が、このような残念な結果になったのだと思います。
そこから7年かけて、金子さんは最高裁で無罪を勝ち取ることができましたが、金子さんの技術者としての時間はもう戻ってはきません。
もし有罪にならなかったなら、金子さんは日本にどれだけの技術的貢献をもたらしたのでしょうか。
国や組織だけでなく、私たち一人一人もITのリテラシーを高くもつことが大事です。SNSなどで極端な情報があふれている中、正確な情報なのかどうかを判断できるように、最低限の知識を持っている事は今の時代必要なのではないでしょうか。
それが技術者の挑戦を支え、日本が進歩していくことにつながってくるのかもしれません。

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