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歳を取るほど頭は冴える

人間はいつどこで老け込むか判らないものです。

例えば、見た目は中年でも実年齢は20代後半の男性がいれば、還暦前だというのにどう見ても30代にしか見えない女性もいます。他人から見た場合、前者は「何だか若さが感じられない」になり、後者は「いつもながらお若いですね」になります。

ところが「実際問題その通りなんですよ」と言われれば
皆さんは信じますか?

だからといって、男性でも化粧をすれば若くなれる訳じゃないし、女性も昔の良き時代の自分に戻ろうとすると逆に老け込んでしまうのではないでしょうか。

テレビでは、たまに100歳を超える長寿な人の特番をやっていたりします。そんな超高齢者は大抵が女性であり、年齢を感じさせないほど意識も言語もハッキリとしています。

現地へ訪問したインタビューアが「長生きの秘訣は何ですか?」と質問すると、「よく食べて、よく運動して、よく若い人と喋ることだね」と答える。食卓には大きな皿に乗った分厚いステーキがあり、彼女が美味しそうに齧り付く。すると――

長寿の秘訣は牛肉を食べること!

と、デカデカと大きな字が画面の下に表示される訳です。
「そんな単純なものじゃねえよ」私はすぐさまテレビを消したのでした。

その女性は、たまたま肉が好きだっただけの話です。粗食の人間でも菜食主義者でも長生きはする奴は長生きします。それよりも、毎日規則正しい生活をするほうが重要です。その生活の中に「適度な刺激」があるからこそ老いることなく、若さが持続している、と言ったほうがいいでしょう。

そうなる為には、毎日当たり前のことを当たり前のようにやっていれば問題ないのですが、これは人間にとって最も得意なことであるし、もっとも不得意なことでもあります。

何しろ「根気」が要ることですからねえ。

人間は一度でも「ダメだ」と思ってしまえば、立て直すのが難しいもの。「根気を失う」ということは「思考を奪われる」ということです。だから、老け込むのも早い。そう思えば、ここ近年は年寄りみたいな若者が増えたように思います。

多分、ゲームにのめり込んだり、スマホばかりいじるようになり、深く考えるということをしなくなったから老け込んだのでしょう。

ニートと呼ばれている人種も、若い老人みたいなものです。私もまたニート経験があるし、ゲームにもハマったし、パチンコにのめり込んだこともあります。あれは天国のようで底なし沼のような地獄でしたね。

だから、頭を使うということは老化防止に重要です。

■20年前の劣等感

日本は良い意味でも悪い意味でも学歴社会です。しかし、学校の勉強が役に立たないのかといえば、それは違います。東大に行こうが行くまいが、高卒であろうがなかろうが「社会で学んでいく為の下地を作る」という意味では学力があるほうが有利です。つまり、学校の勉強もしっかりやっていたほうが物事を理解しやすくなるのは言うまでもありません。

私の場合は、それで苦労しました。何しろ、学校の勉強が大嫌いでしたので。当然ながら、国語の勉強もして来なかったので、体育の成績以外は、ずっと「1」でしたね。本当ですよ。

だから、20歳になっても本を読めなかったのです。単語を知らないからですよ。社会の勉強もして来なかったので地図の見方も知りませんでした。

政治経済の話になんてなると、もう大変。テレビ放送されている国会中継の様子なんて宇宙人の巣窟にしか見えませんでしたね。
「コイツら頭おかしいんじゃね?」と思っていても、実は自分自身が無知なのは解っていたのです。それでも、やはり認めたくなかったのですよ。

そんな事ではいかんと思い、本や新聞を買ってきて読もうと頑張ったんですけど、やはりダメでした。挙句の果てにはノイローゼになり、その印刷物を手当たり次第ビリビリに破き、暴れまくったこともありました。

酒にも溺れたし、インテリの連中を見ると、何だか馬鹿にされた気がして喧嘩を売りまくったこともしょっちゅうでした。

とにかく明朝体の活字を見るのも嫌でした。

■PCとの出会いが劣等感を払拭した

そんな劣等感から抜け出したのは、書店で雑誌を立ち読みした時でした。本は嫌いだったのですが、他に行く場所がなかったから、本屋へはよく行きます。まあ、心のどこかでは「書いてあることを理解したい」という欲求があったのだろうと思います。

そんな中

記事のひとつ、デーブ・スペクターさんの「これからはパソコンを覚えた人が生き残れる」が目に入りました。「何を眠たい事いってやがる。あんな細々したのをやってられるか?」と思わず口にしたくなったんですけど、続きを読んでみたら――

「アメリカに比べれば日本はパソコンについての認識が遅れている。あれは、自分を楽にさせてくれる機械なんだよ。仕事じゃ君の秘書になってくれる」

秘書か…。

お金は持ってたので、翌日に日本橋まで行き「Windows」の入ったパソコンと、「Word」と「Excel」と「Access」の入った教科書を購入した。図解だったので、とても分かりやすく、すんなり入っていけた。プリンターも必要になったので、後で購入したんですけど、この時に「インストール」というものを覚えました。パソコンの仕組みも解ってきました。

インターネットが珍しかった頃、やったほうがいいなと思ったのは理屈ではなく「勘」でそう思ったんですよ。知らないことを聞けるようになる。誰かが教えてくれるかも知れない。

そうやって、知らないうちに覚えたことも多かったように思います。

ところが周りの連中は、それが理解出来ないのですよ。信じられなかった。彼らは難しい本を読めるくせにパソコンを知らないんですよ。動かし方は知っていても、それを上手く利用する術を知らない。

その時ですよ。私の中から劣等感が無くなったのは。元々、ゲームの攻略が好きだったので、同じ要領で出来たのかも知れません。

■もう一度、読書に挑戦した

「人よりもPCが理解できたんだから、本も読めるんじゃないのか?」
もう一度小説にチャレンジしてみました。

母親が文学マニアだったので「何でそんな難しい本、読めるんですか?」と訊いてみたんです。

すると、こう答えるんですよ。

「最初は意味が分からなくても一通り読むのよ」

どうやら、解らないところは付箋をしておいて、後から辞書で調べてから、もう一度読むのだそうです。

本当かね?

疑り深い私は、インターネットでも「読書の好きな人のサイト」を片っ端から捕まえては、そこの管理人さんに同じ質問を投げかけたんです。

大方は同じ答えが返ってきました。だから、私もそうしようと思ったのだが、性格的に「理解しないと前へ進みたくない」タイプのようです。曖昧にしていると先が分からなくなるという不安があったからです。

やはり、小説を読むと1ページごとに詰まっていましたね。
そいつが、300ページ近くある訳。ゾっとしましたね。

仕方ないので、ネット辞書で知らない単語を調べて「Excel」で登録しました。データベースにして、本当に理解しているのか確認する為にテストも作りました。結局のところ、調べた単語は「1000」を超えました。

で、1ヶ月経ってようやく

水野敬也さんの「夢をかなえるゾウ」を読み終えた訳です。今度は同じ要領で、読むべき本のレベルを上げていきました。

この時に思ったのは「小学校から、ちゃんと勉強しとけば良かった」という後悔と、「歳を取っても、根気を失わなければ出来るんだ」という確信の両方でしたね。

数こなしていくと、嫌でも要領は覚えていきました。
多分、オール1の脳みそが歳を取ってから覚醒したのでしょう。

■地理を覚える要領

地理を覚えられい人の最大の原因は「地図の見方を知らない」に尽きます。
今では、ナビという便利なものがありますけど、あれに頼ってしまうと逆に道を覚えなくなるんですよね。

経験上、一番いいのは自分で地図を作ること。まずは、スーパーマップルなどの分厚い道路地図を購入する。それから、覚えたい範囲を指定し、その「主要道路と交差点のみ」を方眼紙へ書いていく。すると、区域によって碁盤の目みたいに道路が繋がってたり、直線だと思っていた道が、実はカーブだったりすると判る。

後は、実際に走行してみる。交差点の繋がりを徹底的に覚えるんですよ。一方向ではなく、どのような方向からでも走行してみる。で、飲み込めてきたら目印も覚えて、それを地図に書き込む。更に、マップルに書いてある抜け道も走ってみる。で、また地図に書き込む。これの繰り返しですね。

そうすると、面倒ですが嫌でも覚えます。だから、年齢と老化は、世間が思っているほど大きくありません。危険なのは、その世間様の固定観念に洗脳されて年相応に考えてしまうことです。本来は年をとるほど頭を使う機会が増えるのであり、若い頃に比べれば、反って冴えるものです。

■古畑任三郎の名言

倒叙形式の刑事ドラマ「警部補 古畑任三郎」で、幼馴染の作家(津川雅彦)を古畑(田村正和)が説得し、犯行を阻止した場面があります。作家は年齢的に晩年を迎えており、妻の不倫に心を痛めていました。

これがマスコミにバレでもしたらスキャンダルとして取り沙汰され、世間から袋叩きにあう。若いうちならまだいいが、この年齢では耐えられない。だから、妻を殺して自分も死ぬつもりだったようです。

古畑は「それでも死んではいけません。スキャンダルによって、あなたが最悪の結果になったとしてもです。後から幾らでもやり直せます」という。「しかし、俺たちは年をとりすぎた」と返す幼馴染だったんですが、そんな彼に対して古畑は――

「それでも、明日死ぬとしても、やり直してはいけないと誰が決めたんですか?」

「えっ?」と我に返る幼馴染。
もう一度、耳元でささやく古畑。

「誰が決めたんですか?」

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