見出し画像

照れ屋で不器用なきみは、期限付きの恋をしたあの子とガーベラでコミュニケーションをとっていた。

その辺にいるいち高校生として、日常を歩む‘’僕”の人生が一変したのは、病室付近で心奪われる絵を描く‘’きみ”と出会ったからー。

病院で絵を描くのが好きな‘’春奈”。
ひょんなことから‘’僕”こと秋人と出会う。

二人が言葉を交わし合い、交流していくうちに段々お互いを意識し合うようになる。

けど、それが一生叶うことのない
‘’期限付きの恋”と知る。
(この辺の伏線はまたあとで)


わたしは、この本を読み進めていく内に
読み終わった時に

‘もしも二人が本当に生きてたら’なんて想像し、自分ごとに置き換えたみた。

自分ももし、病気してて長い間友達にも会えなくて、もしかしたらスマホも触れない状態が続く状態だったなら。

事前にそうなるって告知してたらまだ友達は「ああ、そうなの?」と安心できるかもしれないけど、‘’病は突然に”だとしたらお互い訳がわからなくなってしまう。

どこからどう事実を伝えるべきなのか
友達のそれまで、元気な姿を知る者としてどう気持ちの整理をつけるといいか
簡単にわかる訳がないし、わかってはいけないし。

だからお見舞いついでー は口実だけど、お見舞いに行ったついでで
秋人はガーベラを春奈に渡した。

せっかく花を買うなら、と花屋のおばちゃんが秋人に吹き込んでくれた“ガーベラはね、贈る本数によって意味合いが変わってくるのよ”のあの言葉。

「ある本数は意味を持たないけど、
何本かで‘’あなたに夢中です”ってことよ?」
とかいろいろ教えてくれた。

だから、秋人はそこから頻繁にお見舞いに訪れるようになる。

自分も病人なのに、お構いなしに。
きみは、‘’自分のために”その子と関わっていたんだ、って言うかもしれない。

けど、わたしはそうは思わない。
わたしは秋人の気持ちが痛いくらいわかると同時に、果たしてわたしだったら、その時自分が持っている何かしらの病気を差し置いてまでその子のことを一人にさせない強さがあるかな? とも思った。

だから
人生二十年まで生きることができなかったヒロイン二人も、幸せだったんだろうなと
決めつけちゃいけないけど、笑顔になる。

心臓病を罹患した秋人、
自分がかかった病を「珍しい病気」としか知らされていない春奈、どちらの母親も、

多分これは共通してたんじゃないのかな。

「健康な体で産んであげられなくてごめんね」

「ちゃんと大人になるまで生きさせてあげられなくてごめんね」

と。

もしもわたしが二人のこどもならそんなの思ってほしくないけどー

そんなふうにいろいろな角度から
主人公、主人公の家族のことを考えること、想像する時間が、今のわたしにとって大好きな時間だ。

わたしもまた
そのように想像することで物語の主人公みたいになれるんだろう。

ただの平凡な人生を歩むわたしが、
わたしと違う人生を歩んでいる本の主人公達と重ね合わせて、自分じゃない人生を創作して、生きてみる。

そんな生き方もありかもしれないと考えてみる。

結局は秋人も春奈と一緒の場所へ
旅立ったのだけど

20年にも満たない二人の人生は
幸せだったのかな?

空を見上げると本当に
春奈と秋人がいるように見える。

秋人は生まれ変わりなんてごめんだとか言いそうだけど、
春奈に関しては

「健康な女の子」か
「ガーベラ」になってまたこの世に生を受けたい。

そうして、またわたしも
今度はどの章であなたと出会えるかな。

春奈や秋人と一度は別れてしまった寂しさ、
また会いましょうという期待を込めて
本を閉じた。

やっぱり本は出会いも別れも含めて、
教えてくれることがたくさんある。

#辻村深月 #病院 #病人 #心臓病
#天国 #高校生  #ポプラ社 #期限付きの恋 #闘病 #二人だけの秘密
#読書感想文 #スキしてみて

この記事が参加している募集

スキしてみて

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?