「メンヘラ」って言葉について、考えてみませんか?

メンヘラという言葉が嫌いです。
目にすると、嫌な感じに胸の辺りがどきっとします。

ネットには、この言葉が溢れています。

なぜその言葉に傷ついてしまうのか。
私が目にした「メンヘラ」という言葉が使われていた例をいくつか挙げてみます。

1、かわいいキャラクターからお花が送られてくるというサービスに対するコメント→「メンヘラになりそう」
2、自分の好きなゲームに文句を言っている人に対して→「このゲームに文句を言ってるやつはメンヘラ」
3、某女性ファッション誌の映画レビュー「メンヘラな女の話」

3の映画については観ていませんが、少なくとも精神疾患の女性の話ではないようでした。ふるまいが突飛な女性が出てくるラブストーリーのようでした。
恋愛において、依存したり束縛したりといった人に使う傾向も多く見られます。

この文脈からすると、使っている人たちの中に一貫した定義があるわけではなく「ふわっと自分が変に思う人」に使っているように思います。

ですが「メンヘラ」という言葉はもともと2ちゃんねるのメンタルヘルス板、つまり精神疾患を抱えた人が集まる掲示板で生まれました。
私自身は、はるか前にちらりと覗いたことがある程度ですが、調べたところによるとそこに書き込みをしていた人たちが「私たちはメンヘラだよね」と自称する形で生まれたとのことです。
実際、現在もメンヘラ=精神疾患を抱える人、という意味で使っている人もいます。

「それぞれの思うなんか変な人」というふわっとした意味と「精神疾患を抱える人」という二つの意味が、混在した言葉なのです。

初めに挙げた3つの例は、いずれも精神疾患とは全く関係のない文脈で使われています。
ですが、メンヘラという言葉を使うことによって、関係ないはずの精神疾患を抱える人が侮蔑されるという矛盾した状態になります。
この言葉を使って誰かをバカにしているのを見ると、巻き込み事故を食らったように心が傷つきます。

「そんなつもりで言ってないよ」という人が大半だと思います。
また「自称してるなら言われても仕方ないんじゃない?」という意見もあると思います。
私は一度もメンヘラを自称したことはありませんが、例え自称している精神疾患の人がいたとしても、自称することと他人が言うことは別の問題です。
例えば、あなたの友達に太っている人がいたとして、その人が自分を「また太っちゃったんだよね」と言うことと、あなたがその人に「また太ったね」と言うのは全然違うことだと思いませんか?

また、精神疾患のことを抜きにしても、少し変わっていたり、心が不安定な人を、あっさりと「メンヘラ」と切り捨てる風潮もどうかと思います。
メンタルがタフな人もいれば、揺れやすい人もいる。
色んな人を認め合う方が、誰もが生きやすい社会に繋がるのではないでしょうか。

「メンヘラ」という言葉を使いたい気持ちはわかります。
深く考えなくても、既にそこにある言葉で簡単に相手を罵倒できる。
言葉を尽くさなくても「なんか変な人、こじらせてる人」を説明できる。
それは気持ちいいことだろうと想像できます。

でも、そのために関係のない人を傷つけるのって、楽しくないことじゃないですか?

その「関係ない人」って、もしかしたら病気のことをカミングアウトできていないだけで、身近にいる誰かかもしれません。

「言葉狩り」だと思う人もいるかもしれませんが、安心してください。ここまで広まってしまった言葉をなくすような力は私にはありません。

だから、使うのをやめてとは言わないし言えない。
ただ「メンヘラ」という言葉に傷つく人間がいる、ということを知って欲しいと願っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?