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ローカル新聞に載って縁がつながっていく

先日、こちらの超ローカルな新聞にパートナーと一緒に掲載していただきました。移住者にインタビューをして『どうしてこんな田舎へ!?』と尋ねて紹介する趣旨のコーナーです。

取材して撮影することはあっても、取材され写真を撮られるのは初めてだったので面白い経験でした。
質問に明確に答えるのは思ったよりも難しいことです。
出来上がった記事を読むと、こういうふうに話した内容をこんなふうにまとめてくれるのか!と興味深かったです。書くだけじゃなく、書かれるというのも学ぶところがありますね。

ローカルな新聞は全国的な影響力はないかもしれませんが、その代わりローカルコミュニティーには確かな影響力を持っています。


ご近所の方から「載ってたね!」と声をかけてもらえることはもちろん、役場の方から「早速、町の人から連絡が来ましたよ!春になったらタケノコをいらないか?とのことです」と電話をいただきました。なんて素敵なお誘いでしょう!この町には人間同士の気軽な繋がりがあるのだなあと嬉しくなります。


役場経由で連絡をくれたマダムに連絡をとってみると、一度遊びにおいでと誘ってくださいました。ドキドキします。でもせっかくなのでお言葉に甘えることにしました。


それからお会いする前日にも再度お電話をいただいて「じゃがいもを掘ったことはありますか?」と尋ねられました。いえいえ、ありません。「それでは一緒に野菜を採りましょう。あんまり綺麗な格好で来ないようにしてくださいね」と仰ります。勇んで軍手と長靴を準備しました。


マダムはわたしたちと同じ町に住んでいますが、訪れたのはいままで行ったことのない地区でした。移住して半年が経ち、すっかり慣れてきた気になっていましたが、この町はまだまだ広いのです。

マダムのお宅に着いてみると、そこはなんとも堂々とした立派なお家です。十分に時を経た造りですが、きちんと手入れされているのが見て取れる、さっぱりと気持ちの良いお宅です。
お庭も綺麗に刈り込まれ、池には湧き水が流れています。町の中でもちょっと高台にあって、目の前には空と山と畑がいっぱいに広がっています。
庭の奥には竹藪があり、ここで春になると大量のタケノコと山菜が採れるそうです。近所の人に配り歩いても余ってしまうほどなのだとか。お腹が鳴ります。


野菜を採る前に、お茶をいただきました。

お茶請けは、お友達が仕込んだという甘い梅干しとマダムが漬けたきゅうりとみょうがの浅漬け、それにミニトマトでした。これはなんと良いアイデアでしょう!
お茶請けというと甘いものだという固定観念がありましたが、さっぱりしたきゅうりやみょうがが夏らしく、身体に沁みます。日本茶にも合います。

お茶をいただきながら、マダムといろいろお話をして、三味線の演奏も聴かせてもらいました。三味線の音を直に聴くのはパートナーもわたしも初めてです。ギターともバンジョーともまた違った弾ける勢いとビブラートの美しい楽器でした。


お茶を終えると畑へ下りて、一緒に野菜を採りました。

太陽はジリジリと暑く、あっという間に汗が滝のように流れます。畑には日陰がないので直に太陽を浴びます。汗が目に入ってヒリヒリします。

手始めに、茄子、キュウリ、トマト、インゲンなどを一緒に採集しました。こうやって自分の食べるものが自分の庭で採れるって憧れます。スーパーマーケットに行く代わりに庭に下りて今日食べる分を採ってくる、なんていう生活をしたいです。

野菜をひと通り採り終えると、本日の一大イベントジャガイモ掘りの始まりです。
畑の大きさを見て、これくらいならすぐに終わるだろう、と思ったのですが大間違いでした。


ジャガイモを採るときは、シャベルを使って土をザックリと大きく掘り返します。これが結構大変で、シャベルがなかなか土に深く入らず、何度も掘り返さないとジャガイモが出てきません。でもシャベルをあんまり苗の近くに挿してしまうとジャガイモを傷つけてしまうので、気をつける必要があります。


ひとつの苗にたくさんのジャガイモが連なっていて、土を掘り返すごとにモリモリとジャガイモが出てきます。いろんな大きさの子がいます。シャベルでうまくひっくり返せないところは、軍手を着けた両手を使ってワンワン土を掘り返します。まるで宝探しのようです。


マダムはさすがに上手で、一度シャベルをざっくりひっくり返すだけで、すっかりジャガイモが顔を出してしまいます。わたしたちが二人がかりで二つ三つ苗を掘り返している間に、ひと畝を掘り返してしまっています。わたしたちも黙々と集中して掘り返します。

畑の世話をすればダイエットなんてしなくてもスッキリしそうです。久しぶりにこんなに汗をかきました。乾くとベタつかないサラサラした汗でした。


野菜を採り終えて、お庭の楓の木の下でりんご酢ジュースをいただき涼んでから帰りました。汗をかいた後は酢が美味しいです。

トマトに茄子、キュウリにいんげん、もちろんジャガイモ、それに大量のみょうがとハーブティー用にと庭で採れたミントとレモンバームまでいただいて、ホクホクと帰路につきました。



新しい場所に住むと、新しい人とひととの繋がりが広がっていきます。その様子がデッサンのように明瞭に浮かび上がって来るのが新鮮です。


マダムと知り合えたのは、新聞記者さんがインタビューしてくれたお陰。

新聞記者さんと知り合ったのは、サンドイッチを販売するために参加していたイベントに新聞記者さんが取材に来ていたから。そこにちょうど良いタイミングでお友だちがサンドイッチを買いに来てくれていて、わたしたちのことを紹介してくれたのでした。

そのイベントに出店できたのは、仲良くなった別のお店の人が出店できそうなイベントを探してくれたから。

イベントに来てくれたお友だちは、役場の人が紹介してくれたお陰で知り合って。

と、数珠繋がりにどんどんと人間関係が細い糸で結ばれていきます。
もともと知り合いが誰もいない土地だからこそ、糸と糸の痕跡がはっきりと浮かび上がる様が鮮やかで、しっかりと目に見えるのが新鮮です。こういうのを縁と呼ぶのでしょうか。

パリに住み始めたころもそうでした。自分の足で動いた分だけ、人とひととの繋がりが目に見えて増えていくのが面白く楽しかった。あの頃の気持ちを思い出します。
人と出会うことの不思議な味わいを噛みしめて、なんだかありがたい気持ちになりました。


畑のお野菜を焼き浸しにしました。
次の日のお昼は冷やしうどんの具になって一石二鳥。
きゅうりは焼いても美味しくて万能だなあ!



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