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農薬を減らすということ

私は使わなくて済むならできるだけ農薬を使いたくありません。
(ここでいう農薬とは化学農薬のことを指します。)
環境への影響、農薬散布の際の暴露による自分への影響、それを食べることへの抵抗感があるからです。もちろん農薬の使用基準を守った農産物を食べることは何ら健康上問題はありません。単なる気分の問題です。

青森県特別栽培ピーマン


自分はピーマン栽培において青森県の特別栽培認証を取得しております。
青森県の特別栽培の節減対象農薬使用回数は4回です。うちのピーマン苗は育成段階で2回農薬が使われた状態で苗業者から納品されます。その苗を定植後、生育期間中は農薬を2回しか使えないことになります。この2回は私の場合、難しいアブラムシ防除のために使います。ちなみに隣県の岩手県の露地栽培ピーマン特別栽培の農薬使用回数は13回です。どれだけ青森県の農薬使用レベルが厳しいかお分かりいただけるかと思います。全国に特別栽培のピーマンは多々あれど、青森県ほど厳しい基準の特別栽培はないでしょう(笑)
基準が厳しいから誰もやらないのか、それとも誰もやろうとしないからこの基準のままなのかは分かりませんが、とりあえず八戸市内でピーマンを専門に扱っている農家で青森県認証特別栽培をとっているのは私共NanburGrapplesのみです。

農薬を減らすということ



農薬を減らすということは、単に使いたくないから使わない選択をするということではありません。

・農薬を使わないことによる病害虫による減収リスクを織り込んで生産計画を立てる。
例)慣行栽培の収量の2−3割減で生産計画を立てる。しかし場合によっては全滅の可能性もある。
・農薬を使わずに病害虫対策を行う
例)手で害虫駆除を行うなど手耕的に病害虫対策を行う。防虫ネットを張るなど物理的な病害虫対策を行う。害虫が嫌いな色や光を使った農業資材を使う。有機農薬や害虫の嫌いな成分もしくは匂いなどの有機資材を使う。

農薬使わなければコスト浮くじゃん!とかいううまい話はありません。農薬を使わなければ、代替手段として人件費、資材費がかかり、収量が減る=収入が減るリスクを負うわけです。

私のピーマン栽培の場合は農薬を出来るだけ使わずに病害虫対策を行いながら、慣行栽培レベルの収量を目指しています。

農薬の代わりに使うもの


特別栽培にあたり基本的な防除体系は有機農薬を使用します。
具体的には殺菌剤として有機銅製剤ボルドー液のクプロシールドかZボルドーを、殺虫剤としてBT剤(バチルス・チューリンゲンシス菌)という自然界の毒素を利用した蛾の幼虫に有効なものを使います。その上で必要があればスピノエース(土壌放線菌由来の農薬)を用います。特別栽培では殺菌剤として有機農薬ではありませんがカスミンボルドーと呼ばれる農薬も使って良いことになっています。唯一有機農薬で対処できないのがアブラムシです。アブラムシは一度増え出すと手に負えません。植物の成長点を吸汁するので、植物が成長できなくなります。だから私は2回だけ使える化学農薬をこのアブラムシ対策に使います。初夏の6月と初秋の9月にモベントフロアブルという殺虫剤を使います。

ただ、このアブラムシ対策の化学農薬もどうにかして減らすことができないか模索しています。その対策を挙げていきます。

テントウムシ



1つ目はアブラムシの天敵であるテントウムシにいかに活躍してもらうかを考えます。

テントウムシが生きやすい環境をいかに作れるかですが、適度に雑草を生やすことが大事だと思っています。そして唯一使う殺虫剤のモベントフロアブルは作物を食害する害虫のみに効果を発揮するためテントウムシに影響がありません。あと意外と大事なのがアリ対策です(アリはアブラムシと共生関係にあるのでアブラムシを食べるテントウムシを攻撃します)。

アブラムシが寄りづらい環境を作る


2つ目にアブラムシが大量発生する前に、そもそもそこに居付きづらくするための資材を活用します。

今年からシルバーマルチを試しに使い始めました。アブラムシは光の反射が苦手なのでシルバーマルチは防虫効果が期待されます。値段は普通のマルチの3−5倍です。

シルバーマルチ

最近資材屋さんから教えてもらいましたが、ウインドスターという肥料にはピネンという松の芳香成分が含まれていて、これが虫の忌避効果を期待できるということです。

ウインドスター

早速苗作りの際から使い始めました。少しづつ生育期にも使用していこうと考えています。松の良い香りが漂います。

ウインドスターを使用したピーマンのポット苗

あとはもしアブラムシが発生したのを見つけた初期段階での対処法として
酢を50倍〜100倍で散布します。これがどれほど効果あるかは分かりません。やらないよりは良いと言ったところでしょうか。あとはひたすら手でアブラムシを駆除していきます。


病原菌が定着しづらい環境を作る



ちなみに病原菌対策としてグルタンという製品を使っています。
グルタンはアミノ酸系の液肥で、そもそも病原菌対策を目的にした資材ではありませんが、納豆菌を使った資材です。

菌はその環境の中で陣取り合戦をしています。病原菌が増える前にその環境下を非病原菌で占領してしまえば、病原菌がそこに居付きづらくなるわけです。そんな副次的効果を期待してこのグルタンを使っています。もちろん液肥としての効果にも大変期待しています。香りが香ばしい納豆の匂いがするので大好きです。

納豆菌のグルタン



単純に農薬を減らすということの裏側には、このようなさまざまな戦略というかなんというか、工夫だったり、苦労が隠れていることを一般消費者の方々には知っていただきたいと思います。

オーガニックとかナチュラルとか、そんな簡単な話では無いのですよ。

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