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イギリスの食べ物って不味いの?

コッツウォルズ食と歴史の旅
イギリスへ行くと言うと、「イギリスの食事って美味しくないんでしょう?」、「イギリスって美味しいものないよね」、と良く聞かれます。
「不味い」がイギリス料理の枕詞になっているように。

そうなんでしょうか?
その答えを出す前に、自分の経験を振り返ってみます。

イギリスの料理との出会い


私とイギリスの料理との出会いは、イギリス人義理兄との出会いそのものでした。もう亡くなってしまいましたが、この義理兄は、長年、日本に住んでいながら、暮らしぶり、食事はイギリス流を貫いていました。(日本語もほとんど喋らず)

毎週末、東京から新潟へ、たくさんの食材を車に積んで帰ってくる姉夫婦。
週末は決まって、ビーフ、ポーク、チキンのローストか、シェパーズパイ、などメインはイギリス料理。
ローストの場合、決まって2日目はコールドポーク、コールドチキン、冷たいものを食べる、(これがまた味が凝縮されていて美味しいのです)と言うことを学びました。

当時の私は、「イギリス料理は美味しくない」という巷での声など知る由もなく、毎週末、義理兄が料理するイギリスの伝統的な料理、一族に代々伝わる料理を「へーっ、わーっ」と言いながら堪能していました。

とにかく、週末が来るのを3人の子供達共々、楽しみに待っていたものです。

それからだんだん、見様見真似で自分でも、「義理兄の味」を再現し始め、
いつしか、ローストなどのフルコースを料理できるようになりました。
我が家の子供たちは、一から野菜と鶏ガラ、肉汁などで作るグレイビーソースで育ったようなものです。

今でも、グレイビーを作る時は大量に作って冷凍しておきます。

ローストターキーディナー

イギリス人は頑固


私たち(日本人)は義理兄の美味しいローストとグレイビー、マッシュドポテトと共に、白米と、お浸しやきんぴらなど和食も合わせていただくのが我が家風。ご飯にグレイビーソースをたっぷりかけて、は最高に美味しいのです。
イギリス人の義理兄は、和のものは一切口にしません。調理方法も、食べ方も、英国人。英国人気質の頑固さがそんなところにも表れていました。その頑固さのおかげで、私は、イギリス料理の基本食材、基本のフレーバー(味、風味)、調理の工程、調理時間配分をしっかり会得することができたのかな、と思います。

食生活は文化

出来上がった「料理」そのものを味わうだけではなく、イギリス人が古くから食べ継がれてきたものに対する心のあり方や長い歴史の中で培われた伝統を重んじる国民性を垣間見ることができました。

私は、長年英語教育に携わってきたので、良く「言葉は文化を表す」言ったものですが、それよりも、「食生活は文化そのもの」、と感じます。

そして、2023年夏 料理講座


今回、アメリカ、日本から集まった6名とコッツウォルズに住む友人夫婦で料理好き、歴史好きな先生夫婦の家で、伝統的なアフターヌーンティーとサンデーブランチをファミリーに伝わるレシピとそれにまつわる話を聴きながら実際に作り、楽しみました。
ティールームでいただくアフターヌーンティではなく、レストランで大量に用意された日曜日のサンデーブランチでもなく、一般的なイギリス人家庭のしつらえやおもてなし、そしてお料理を味いました♪

おばあちゃんから譲り受けたというティーセット

Many Victorian meals were served at home as a family, prepared by cooks and servants who had studied French and Italian cookbooks. Middle and upper class breakfasts typically consisted of porridge, eggs, fish and bacon. They were eaten together as a family. Sunday lunches included meat, potatoes, vegetables and gravy.


Victorian Cuisine より

階級社会の名残り

イギリスと言えば、階級社会。大まかに分けるとUpper, middle, workingと三つ(上流、中流、労働者) に分けられ、厳密には7つに分けられると聞きました。
そして、さまざまな場面で、ミドルクラスだから、ワーキングクラスだからと言う表現を聞きました。
ワーキングクラスではティーはマグでティーバッグ。カップ&ソーサーでは飲まないとか、アフターヌーンティーではなく、ハイティーと言って、夕方、もう少しお腹にたまるようなものを合わせて、食べる。

確かに、アフターヌーンティーは、昔は家にサーブしてくれる人、専門の料理人や執事、給仕がいて成り立っていたわけです。自分で用意して楽しむと言うことではなく。(ここは日本のお茶席とは違いますね)
一般庶民の習慣ではないということですね。

確かに、そう言えば、スーパーに行って気がついたのは、茶葉があまりないと言うこと。
ティーバッグが9割を占めていました。私はお茶っ葉を急須に入れてお茶を入れる習慣があるので、つい茶葉を探しましたが、意外になく驚きました。


伝統を重んじる

今回のお料理講座では、友人の家に伝わるレシピを使いアフターヌーンティーのスコーンなどを焼いたり、ローストビーフの付け合わせのヨークシャープディングをやきましたが、5年前、この家で食べたサンデーローストと今回はほとんど同じメニューでした。

日本だったらどう?
5年前のテーブルと同じものが出てくるでしょうか?

代々伝わる家庭の味、家庭料理を大事にするイギリス人。
それはある意味、周りの人の価値観に惑わされないということにも繋がるかも。頑固さの表れ?

みんなで調理したサンデーロースト (ビーフ)

昔からの味とは

サンデーローストの基本
ローストされた肉 (塩胡椒バター、少しハーブ)
肉汁でつくるグレイビーソース (塩胡椒バター)
マッシュポテト (塩胡椒バター)
ヨークシャープディング (塩、バター)
ローストポテト(塩胡椒バター)
温野菜(塩胡椒バター)

なんとシンプルなのでしょうか。
基本は塩胡椒とバター! 
そして、うす味。
「As you Like お好きなように」、と、塩胡椒、バターは
自分で足して、好みの塩加減にする、ということが当たり前。

そのために必ず、食器と合った、ソルト&ペッパーシェイカーもテーブルに並びます。

買い出し!

まとめてみると

巷で言われているイギリス料理は
昔から家庭料理(アッパークラスでは昔はお抱え料理人が作った)

ローストなどはみんなで切り分けて食べる 
イギリス人は伝統を重んじる
昔からの味を保つ
味はうす味、スパイスはあまり使わない
自分の価値観を大切にする(周りがどうあれ)

****

観光地のレストランで美味しいものが出てこないのは、こんな理由が少しはあるかもしれません。

イギリス料理、決して美味しくないわけではなく、観光客が行くようなところでは、厳選しないとハズレ!が多くなるのかな?

これはあくまで、私の見解です。

イギリス、肉、ハム、ソーセージ、チーズ、クリーム系が美味しく、小麦などの種類も豊富。

現地の材料での調理は、現地の食文化そのものに触れる機会となり
貴重な経験でした。

また、やりたいな「食と歴史の旅」次はどこにしましょうか?




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