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展覧会レポ:新潟市新津美術館「生誕140年 ユトリロ展 "白の時代"を中心に」

【約3,700文字、写真約45枚】
新潟市に行く機会があったので、新潟市新津にいつ美術館(以下:NAM)でユトリロの展覧会に行きました。その感想を書きます。

結論から言うと、写実的で暗いユトリロの絵は私好みではなかったものの、20世紀前半に活躍したユトリロの作品を一挙に見られたのは勉強になりました。また、新津美術館は子供に優しい素敵な美術館だったので、子供連れにはおすすめです(ただし、アクセスが悪い)。

展覧会名:生誕140年 ユトリロ展 「白の時代」を中心に
場所:新潟市新津美術館
おすすめ度:★★★☆☆
会話できる度:★★★☆☆
ベビーカー:-
会期:令和5年7月1日(土曜)から8月27日(日曜)
休館日:月曜日(7月17日・24日、8月14日は開館)、7月18日(火曜)
住所:〒956-0846 新潟県新潟市秋葉区蒲ケ沢109−1
アクセス:新津駅からバスで約25分
入場料(一般):1,200円
事前予約:不要
展覧所要時間:約1時間
混み具合:ストレスなし
展覧撮影:一部(2割くらい)を除き可能
URL:https://www.city.niigata.lg.jp/nam/exhibitions/fy2023exh/2023utrillo.html


▶︎ きっかけ

新潟駅近くにあるモニュメント。ロピアのロゴみたい

新潟市に行く用事があったので、その近くにある美術館に行こうと思いました。Google Mapで検索したところ、口コミ数が多く、企画展のユトリロのことを知らなかったため、新潟市新津美術館(NAM)へ行くことにしました。

▶︎ アクセス

新津駅発の小さなバス。10〜15人くらいが乗れる

NAMへ行くまでの難易度が高かったです。必ず事前に調べましょう。

1)新津にいつ駅が分かりづらい
私は新津にいつ駅からバスで行きました。新津駅にはバスロータリーが2つ(西口と東口)あります。私はバスが来る直前まで西口でバスを待っていましたが、NAMへ行くには、東口が正解でした。NAMの公式サイトにある交通案内にも詳細が乗っていますが、バス停が新津駅の何口にあるかまで書いてくれるとありがたいです。私は、バスが5mくらい発車したところで何とか再停車していただき、バスに乗ることができました。

2)バスの本数が少ない
バスの種類は「秋葉区バス 」と「新潟交通バス」の2つがあります。新潟交通バスは、平日のみの運行です。秋葉区バスは一日3便のみと少ないため、バスでNAMへ行く場合は、必ずバスの行き帰りの時刻を事前に調べましょう。バスに揺られること約25分でNAMに到着します。

新津駅→NAM
NAM→新津駅

▶︎ 新潟市新津美術館の周辺

新潟市新津美術館(NAM)は「花と遺跡のふるさと公園」内に立地し、新潟県立植物園や古津八幡山古墳などと隣接しています。植物園は歩くと丸一日潰れそうなくらい広大で、お出かけにはぴったりな場所です。

公園の全体像
トトロの「サツキとメイの家」みたいな家

▶︎ 新潟市新津美術館について

バス停みたいなサインがかわいい

バス停から降りたらすぐにNAM(Niitsu Art Museum)があります。NAMは、1997年に開館。美術館の特徴的な外観は、ラッセル車(線路を除雪する機関車車両)をイメージしているらしいです(確かに似ています)。

NAMの全景(ラッセル車がモチーフ)
展覧会ボード
NAMの入り口
美術館の前にアート(残念ながら休止中)
館内は音が響くためスリッパが準備(任意)
色々やっており、地域と共生していることが分かります
特徴的な階段。ゼルダの伝説に出てきそう
天井にステンドグラスが張られています
ステンドグラスによって、天井やフロアに模様が映し出されます
階段の途中にはフォトスポットもあります
2階にある絵本スペース

NAMは、子供に優しいことが印象的でした。絵本スペースは、展覧会に飽きた子供と、その親にとって大変助かります。そのほか、毎週木曜日は「こどもタイム」と称し、展覧会内に音楽を流して子供と会話を楽しむ時間を設けたり、託児サービス、子供スタンプカードもやっているらしいです。それらの施策から「子供大歓迎」という姿勢が伝わってきます。

▶︎ 生誕140年 ユトリロ展 「白の時代」を中心に

チケット
階段の途中にあるユトリロのメッセージ
彼が絵を描いている時は常に誰かが覗き込んでいたようです。集中できるのかな
展覧会の様子

私はユトリロにことは名前も知らなかったため、この展覧会に来られたのは良い機会でした。ユトリロ(いまだにユリトロと間違います…)は、1883年生まれ、1955年没。偶然、画家が親族にいたものの、ユトリロは絵画を専門的に学んだことはなく、すべて独学だそうです。

ユトリロの親戚たち

彼の作品を見た時の第一印象は「洋館に住んでいる祖父母の家にありそう」という印象でした(私の架空の想像)。

「モンマニーの3本の通り (ヴァル=ドワーズ県)」
「モンマルトルのサン=ピエール広場」。神奈川県立近代美術館(葉山)から海に向かう道を思い出します

彼の特徴は、入退院を繰り返す「アル中」だったこと。刃物で母親を脅したことから精神疾患の診断を受け、母親が絵を描かせたことが画家になったきっかけのようです。

アル中だったら気持ちがハイになって楽しい絵を描くのかな?と思いますが、哀愁、寂しさ、荒廃といった印象を受けました。まるで ジョルジュ・デ・キリコの「通りの神秘と憂鬱」のような印象を受けました。

ジョルジュ・デ・キリコの「通りの神秘と憂鬱」(1914年)

彼が描くフランスの絵は、写真で撮ったようなシンプルな構図で、絵の中に人物はほとんどいません。また、建物や街並みばかりで、どれも代わり映えがしない絵画が多いです。私はフランスに行ったことがありませんが、行ったことがある人がユトリロの絵画を見れば、印象も違うのかな?全体的に、私の好みには合わず、あまり惹かれませんでした。

「ベルト王妃のらせん階段の館、シャルトル(ユール=エ=ロワール県)」

ユトリロは、「白の時代」といって、白を基調とした作品が特に評価されています。白には石膏やセメントが混ぜられていたそうです。

アップ。かなり厚塗りなマチエール
「《可愛い聖体拝受者》、トルシー= アン=ヴァロワの教会(エヌ県)」。展覧会のメインビジュアルにも使われています

ピカソのメランコリックな「青の時代」は友人の自殺が影響していますが、ユトリロの場合は、アル中が影響しているのでしょうか…?

(…アル中は関係ないらしい)
「ラパンアジル モンマルトルの サン=ヴァンサン通り」
モーリス・ユトリロの関連地図①
モーリス・ユトリロの関連地図②

ピカソやルノワールも描いたダンスホールである「ムーランギャレット」を、ユトリロも描いています。この時代の著名人が集まる流行の場所だったんですね。一昔前、ヒルズ族がいた六本木ヒルズみたいなものでしょうか。

「サン=ジャン=オ=ボワの教会 (オワーズ県)」

1920年ごろからユトリロは「色彩の時代」となります。「白の時代」に比べて「色彩の時代」の絵は、平凡で個性のない絵に見えました。まるでグランマ・モーゼスのような印象を受けました。

「ラパンアジル、サン=ヴァンサン通り、モンマルトル」
「ボワシエール・エコールの教会と通り ( イヴリヌ県)」
「サン=ディディエの教会、ネイロン(アン県)」

最後に、ユトリロに関する約15分の動画が流されていました。何十年前に制作されたものだからか、音が割れているため70%くらい聞こえませんでした。展覧会に設置するのであれば、音声を再度吹き込むとか、(アクセシビリティの観点からも)字幕を付けるなど対応すべきだと思いました。

シュザンヌ・ヴァラドン「鏡の前に置かれた花瓶の花」。唐突にユトリロ以外の作品が置いてあって「誰だ?」となります
「西山美術館」「八木ファインアート・コレクション」の紹介。実際に行けるかどうか判断するため、住所を書いてほしい

展示されている作品の約7割が「八木ファインアート・コレクション」「西山美術館」の所蔵です。なお、西山美術館所蔵の作品は撮影不可でした。

「八木ファインアート・コレクション」というのは、神奈川県に住んでいる八木英司さんという個人のコレクションです。西山美術館は、東京都町田にある美術館です。私は、それぞれ初めて知りました。

展覧会の様子
企画展は2部屋に分かれており、その間にNAMのコレクション展が開催(約10点)
買ったポストカード。「《可愛い聖体拝受者》、トルシー= アン=ヴァロワの教会(エヌ県)」
右のポスターは、NAMの次の企画展(韓国と日本の絵本)。面白いアイデア

NAMの場所が辺鄙だからか、お客さんで若い人はほぼいませんでした。NAMはそれを意識しているのか、次の展覧会は、韓国と日本の絵本を題材にしているため、若い人もたくさん来るかもしれません。

▶︎ まとめ

いかがだったでしょうか?個人的にユトリロの世界観は好みではありませんでしたが、20世紀前半に活躍したユトリロの変遷と、彼の多くの作品を見て勉強になりました。また、新津美術館は子供に優しい良い美術館でした。

▶︎ 今日の美術館飯

cafe 2F 新津美術館 (新潟県/古津駅) - ユトリロ展限定 トリコロールのクリームソーダ (¥650)

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