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ポップス、ジェンダー、自閉スペクトラム

6月の終わりにウィーンに行った。ケルンの大学のセミナーで合宿的に一週間ほどウィーンの郊外に滞在してミュージック・ビデオを見ながら考察するという趣旨で10人ほどの学生が集まった。企画をした教授、 Ubermorgen (Luzius Bernhard & Lizvlx) は今学期で大学を離れてウィーン応用美術大学に移ることが決まっている(もともと二人ともウィーンを拠点にしている)ので今回の合宿が最後のセミナーになった。

ウィーン空港で出口に向かう

他の学生は寝台列車でケルンからウィーンまで移動したのだが、私は在籍年数の関係で旅費が大学から出なかったので格安航空で向かうことにした(実際に電車よりも安く、そのためにヨーロッパでは環境問題の話で「飛行機ではなく電車を使うべき」といわれる。ちなみにライアンエアーにしたところチェックインをし忘れて割と高い手数料を取られたので結局電車で移動するのと値段は変わらなかったのではないかと思う)。

プールを背に食事

今回滞在したのは Liz の別荘で、ウィーンの中心部から電車とバスを乗り継いで45分ほどのところにある。広い庭にはプールもあった。

テーブルを囲んで食事
フムス
失敗したライス・ペーパーを切っている
レモンのアイス

ドイツ人の学生が多かったので初めの何日かは食事はパンで済ませてしまうような雰囲気があったので、韓国人と台湾人の学生と率先して料理をした。丼ぶり的なもの、あんかけ炒飯、手作りのフムス、無難なトマト・パスタ、 レモンのアイスクリーム、生春巻きを作ろうとしてライス・ペーパーを水で戻すのに失敗したものを揚げて餅のようにするなどいろいろなものを作った。

部屋でポーズをとっている

二階建ての大きな家だが寝室は二つだけであとは大部屋が一階と二階で二つなのでほとんどの学生は大部屋をシェアすることになった。教授の一人が自閉スペクトラムで共同生活のつらさをよく分かっているので、私ともう一人自閉スペクトラムの学生は寝室をあてがわれた。

結果的にはいくつかドキュメンタリーを見る程度で、ミュージック・ビデオを見たのは最初の三日程度だった。学生で発表したのは私ともう一人、デニスだけだった。

デニスは上のような曲を三曲ほど紹介してそれについて話し合う形式にしていた。対して私は1時間半通して DJ ならぬ YouTube ジョッキーをした(アドブロックが入っていなかったので一つのタブで曲を流している間に別のタブで次の曲の広告をミュートにして流して待機するという作業を繰り返した)。

今回の合宿に備えてプレイリストを作っていたので(ウィーンに行くまでにに日課のようにミュージック・ビデオをディグしていた)、それを元にその場の雰囲気で曲を流した。ジャンルもバラバラなので Kesha とかいかにもポップスな曲から J-Pop にも触れようと思いきゃりーぱみゅぱみゅや DA PUMP、自分にとっての永遠のアイドルのあややなども流した。

最近ハマっているインディ・ポップの Magdalena Bay や

ここずっとループしている Charli XCX も流した。

アート系だと Alva Noto の自販機の作品や

橋本麦さんの映像もウケていた。

鉱山のトンネル

週の後半には鉱山の見学もした。中には湖があるのだが、鉱山内にある湖としてはヨーロッパで一番大きいらしい。

ゴーグルをしてパーティに参加している

そして合宿の最終日(私はそのあと更に一週間ほどウィーンに滞在していたのだが)にはウィーン応用美術大学の卒展のパーティに参加した。雨が降ったり止んだりする中、外の DJ ブースが盛り上がっていて私もしばらく踊っていた。

・・・

友達とトイレに向かって、芸術系の大学であることもあってどちらのトイレに並んでも構わないだろうと思って友達と話しながら女子トイレに並んだ。すると警備員が来て(大学の学生ではなく外部の人を雇っているようだった)男子トイレは反対側にあると言われた。ヨーロッパの芸術系のコンテキストではジェンダーに配慮していることが多いのでびっくりして、と同時に頭に来て(パーティでハイになっていたのもあるが)声を荒げて警備員に文句を言ってしまった。それで居心地が悪くなり宿に戻ることにした(結局それから友達に呼び戻されて大学の別の会場のパーティに行った)。

Chimanaco さんの影響でトイレサインは欠かさず写真を撮るようにしている。こちらは同大学の別のトイレで、 Damen (女性)のサインがあるが誰でも使っていいというようなメッセージが横に書かれている(のだと思う)

教授が聞きつけて大学に聞きただしたところ大学側は非を認めているとのことだった。パーティを抜け出してから駅に向かったりして考える時間があったので自分はどうするべきだったのかについて思いを巡らせていた。もちろん無視するとか穏便に済ませることもできたと思うし、普段はそうすることが多いと思うが(例えばコロンビアでは街中で「中国人」と言われても無視したし、むしろそれを作品でネタに昇華させていた)、日頃からジェンダーについて考えているのにそれを軽視されて(もちろん警備員は無知なだけで軽視していたわけではないが)しまったことに対して声を荒げることも重要だったのではと思う。英語などでは人称代名詞を he/she の他に中性として they を使ってもらうよう公言している人も多いし(私もそうだ)、最近では人称代名詞を使わないで毎回名前を使って欲しいという no pronouns の人も多い。私の付き合いでも特に若い人は後者のような人が多いし、最近付き合い始めた人もそうなので人と話す時は普段より余計に気をつけるようにしている(厄介なのは he/she/they/no-pronoun が関係してくるのは三人称の場合なので、面と向かって話しているのではなく、必然的に他の人とその当事者について話している場合になるので気にしないでいると他人のジェンダーを勝手に決めつける misgendering な状態が生まれてしまう)。

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ポスター

おまけ:卒展で見たこちらのポスター作品はマッチング・アプリでどうしたらマッチしやすくなるかについてのフローチャートでしっかりとしたリサーチと考察がされていた。ユーザがどのような人が好みでどのような人が好みではないかデータ収集した上で機械学習でレコメンドしているので(それが差別などの問題につながることも書いてあった)、誰彼構わず右にスワイプするのではなく好みだけ選んだほうがいいらしい。私は最近はコロンビアでもドイツでも友達を探すのに Bumble を使っているが、基本的に自閉スペクトラムの人しか選ばないようにしているおかげか、マッチした人ともやり取りが続いたり実際に会うことも度々ある(定型発達の人とはやり取り自体が面倒に感じることが多い)。

おまけ2:ジェンダー関連で水着で何を着ればいいのかわからないでいたのでビキニを試してみた。以前聞いた話で、レイヴ系のパーティで男だけ上半身裸に慣れるのが不満なので、女性がトップレスになれないのと同様に男も胸を隠すようビキニが貸し出されていたということがあったらしい。とてもクリエイティブで建設的なアイディアだと思う。

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