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泉屋博古館東京(東京都港区・六本木一丁目駅/安宅コレクション名品展)

泉屋博古館東京では特別展として安宅コレクション名品展を開催している。総合商社であった安宅産業で財を成していた安宅英一の収集したコレクションで、会社の破綻により散逸の危機に瀕したものを、大阪市に購入してもらうために住友グループが資金を寄附するという形で引き取り、大阪市立東洋陶磁美術館として収蔵することとなったという経緯がある。

展示室は全部で4つ。今回は写真撮影も可能ということもあってか、通常よりも多めの見学者で溢れている。今までの経験から言って陶磁器の展示の場合はどの美術館でも年配の方の比率が比較的おおいのだけれど、今回は若年層の見学者も目立つ。貴重な陶磁器の数々が多く、中でも国宝が2点、重要文化財が11点と非常に見応えのある展示内容となっていることが特徴。そのほかにも重要美術品などいろいろなエピソードを交えながら紹介している。

結構な人だかりだったので空いている箇所から覗く

エピソードの中でも面白かったのが古美術商とのやりとり。三種の神器と称された陶器を求めた安宅英一。日本橋の画廊である壺中居の所有していたこれらは店主である廣田不孤斎の思い入れも強く、何度も手紙を送るなど所望してきたがその度に断られてきた。その矢先、今度は逆に店主を家へ招待することに。店主を招き入れると、床の間にそれまでの断りの手紙を全て装幀して飾り付け、その前で頭を下げて再度の所望をしたという。この演出に店主もついに折れて譲ることが決まったという。ほかにも民藝の中で「伝説」と呼ばれる壺を探し求めた話などエピソードには事欠かない。それらの名品が実際に観られるので楽しみ方に幅が広がる。

「伝説」の壺

個人的に今回の目玉は第3展示室の中央に控えている2つの茶碗である。まず国宝である油滴天目茶碗。天目茶碗の名品である曜変天目茶碗と肩を並べるこちらの茶碗は、特徴的である茶碗の中に広がる斑点が、曜変天目茶碗に比べてみっちりと並んでおり泡のようにも見える。黒い茶碗に広がる金色の斑点は非常に美しい。

油滴天目茶碗 この斑点の浮かび具合が美しい

重要文化財である木葉天目茶碗もまた注目したい名品。虫喰いの痕が残る木葉が茶碗の中に舞い降りたかのような精巧な造りをしている。今回は泉屋博古館の収蔵品はほとんどなく、大阪市立東洋陶磁美術館の安宅コレクションで占められている。なかなか大阪へ出向く機会がない中で観ることのできる貴重な機会と言える。トイレはウォシュレット式。

これもまた国宝の花生

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